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世界のケータイ事情タイトルGIF
頼みの綱
KDDI総研 藤原正弘
 KDDI総研 第二市場分析室。専門は情報通信全般の社会・経済分析ということになっているが、まだネットワーク経済を勉強中の学生の身でもある。最近は、コンテンツ産業の調査にも手を出しており、「アキハバラ」にも馴染みたいのだが、なかなか踏み込めない二人娘の父親でもある。最近のレポートは、KDDI総研R&A誌「ヘドニック価格分析による携帯電話の機能評価」(2005年11月号)、「プラットフォームビジネスにおける企業連携」(2006年3月号)など。


 仕事がら、ケータイ関連のブログやニュースを眺める時間が少なくないが、華々しいベンチャー企業の記事の狭間に、発展途上国におけるケータイの話題もちらほら目につく。今日は、そんな話題を紹介しよう。

 2006年には世界のケータイ普及率は40%を超えているが、アフリカでも、すでに20%を超えている。平均20%といえば、決して少ない数ではない。アフリカ大陸9億人をおしなべて5人に1人が持っているということだ。日本のケータイ普及率が20%を超えたのは、ちょうど10年前の1997年。今となっては、10年前の日本が今とどう違うかは思い出せないが、我々が、普段テレビで見るような、未開の地を印象づけられているアフリカは、ICTという座標軸でみると10年前の日本の姿なのだ。

 もちろん、この座標軸はかなりデフォルメされていて、このまま社会全体にあてはめるわけにはいかない。が、しかし、われわれが「世界に冠たるブロードバンド大国」という言葉を使うときも、同じ座標軸なのだから、ブロードバンド大国という言葉の意味も、その程度に割り引いて使う必要があるだろう。

 さて、20%の普及率を超えたアフリカでは、ケータイを持っているかどうかは、日本に比べて一層切実なことだ。よく目にする記事には、やはり、仕事をみつけるツールとしての有用度が高い、ということだ。日本でも、ケータイでのバイト探しは盛んだし、位置情報まで考慮してマッチングするなど、この分野は急速に伸びているようだが、彼らの場合は仕事にありつけるかどうか、そして、他人よりも条件のいい仕事にありつけるかどうか、という熾烈な競争に勝ち抜く武器なのだ。

 次に、よく見るのが、モバイル・バンキングだろうか。日本のように街中のいたるところに現金自動預払機や銀行の支店があるわけではない。銀行に行くにも一日がかりは当たり前。それがケータイだといつでも送金や支払いができる。特に自分で商売をやっている人には必須アイテムと言えよう。


 これまでは、このような経済面でのメリットが強調されてきたが、最近では、ケータイが生活全体に影響をもたらすという記事もちょくちょく見る。急病時の連絡などライフラインとしてのケータイということが象徴的だ。飢餓や内戦など生命の危険に隣り合わせの地域もあり、ライフラインとしてのケータイの重要さは、わが国での想像をはるかに超えるものだろう。

 実際に、ケニアのある難民キャンプで、そこに住む難民のひとりが、直接ロンドンの国連事務所に次のようなメールを送った。

「私の名前はムハマド・ソコル。ダダーブの難民キャンプから書いています。担当官の方、危険な状況です。食べ物がほとんどありません。助けが必要なのです」

 このメールのおかげでなんとか救援が間に合ったのだとか。

 また、こんなケータイの使われ方は決してうれしいことではないが、国連のアフガニスタンの自爆テロに関する報告書によると、自爆テロの見返り(報酬)としてオートバイやケータイが支給されることもあるという。平和な日本に住んでいる私の理解は遠く及ばないが、ケータイがあれば残された家族の生活がぐっとよくなるということなのだ。それだけ、生活におけるケータイの役割が大きい。

 こうした悲劇を少しでも減らすためには、できるだけ速くケータイを普及させ、ケータイを持っていても、それだけでは特別な利益に結びつかない社会にすることだ。もはや、私たちは日常生活でケータイを特別意識することなどなくなったが、こうした世界が同じ地球上に少なくないことも知っていて欲しい。



KDDI総研 藤原正弘)
2007/09/20 18:15

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