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モバイル、モービル、モブ……
KDDI総研 山本雄次
 KDDI総研 調査1部 制度・政策グループ。情報通信分野の制度・政策に関する調査、分析を担当。主に公正競争ルールに関する問題に取り組んできたが、実は最も関心の強い分野は、野球と恐竜(?!)。いずれも情報通信との接点がなかなか見つからないのが悩み。


 街中がクリスマスの装いに染まる12月、といっても南半球は夏。そんな陽射しの明るい年末のニュージーランドを訪問した折、携帯電話の最新情報を扱う雑誌を求めてウェリントンの書店に立ち寄ってみた。

 日本と同様、ファッションやスポーツ、園芸や映画等、さまざまなジャンルの雑誌が書棚に並ぶ。その中から自然に目に止まった一冊の雑誌。それがお目当ての雑誌だとわかるまでに少しばかり時間を要した。表紙を飾っていたのは、売れ筋の端末や最先端テクノロジーをイメージしたものではなく、カメラ目線で魅惑的な笑みを浮かべる美しい女性。大胆な水着(夏ですから)で、ポーズをとっている。どちらかというとコンテンツ系の雑誌か? 私の隣で立ち読み中の女性の目を意識しつつその雑誌を手にとり、ページをめくれば、内容は極めて堅物で一安心(ほんの少しの落胆も)。通信業界の制度・政策から、モバイルTVなどのサービスの動向、最新機種のラインナップに至るまで、旬のトピックや特集記事を含めてしっかりした記事が並んでいる。「MyMobile」は、ニュージーランドのモバイル事情を扱う雑誌としては、最もポピュラーな雑誌といえるだろう。

 この雑誌(月刊誌)は、四半期に一度程度、表紙を飾るカバーガールを募集しているようで、私が手にした年末年始号は、たまたまそのタイミングだった訳だ。モデルへの登竜門……かどうかはわからないが、なかなか狭き門のようだ。読者はネットでお気に入りの候補を投票できる(本稿執筆時には3月号の表紙を飾るカバーガールを選考中)。


 雑誌の表紙に女性が登場するのは、車も同じ。ケータイ(mobile)と車(automobile)は似ていると言われるが、車は“移動手段”だから、共通点があるのもうなずける。車もケータイも、性能や操作性といった機能面はもちろん、デザインやブランドも大事。ハイエンドからローエンドまで、さまざまなユーザー層をターゲットにした機種があり、頻繁にモデルチェンジが行われる。最近の大学生が車を買わなくなったのは、ケータイにお金を使うためとか。「彼女を助手席に乗せる」よりも「メールでつながり合う」ほうがプライオリティが高い時代なのだ。そういえば、幕張メッセなどで開催されるモバイル関連の総合展示会で、綺麗な女性が商品説明する姿も、モーターショーとそっくりだ。

 森、湖、フィヨルド――美しい大自然が魅力のニュージーランド。人口は約420万人で日本(約1億3000万人)のわずか1/30程度だ。車もケータイも、小さな市場で熾烈な戦いを繰り広げていることだろう。しかし、モバイル市場の裾野をもっと広げてみればどうか。

 ニュージーランドは、人間を遥かに超える数の羊がいることで有名だ(約3400万頭)。人間1人に羊8頭。人口をベースにした通信や車の市場規模は小さくても、家畜の数は世界有数。実際のところ、牧畜(羊毛、肉牛、酪農等)が主要産業となっているニュージーランドでは、食肉の安全・品質管理(トレーサビリティー確保)のため、牛や鹿にICタグ(RFID)をつけ、一頭一頭管理するスキームを進めている。将来的には羊にも広げる動きがあり、無線技術が牧畜産業を支える下地もできあがりつつある。

 家電製品から自動車、動物(家畜)に至るまで、あらゆる物、特に移動するものに通信機能を持たせる時代が来れば、ニュージーランドの市場も違った姿に見えてくる。ちなみに、羊や牛などの家畜の“群れ”も“mob”と呼ぶそうだ。



URL
  MyMobile(英文)
  http://www.mymobile.co.nz/Magazine/default.aspx
  NAIT (National Animal Identification and Tracing)
  http://www.nait.co.nz/main.cfm


KDDI総研 山本雄次)
2009/03/25 14:23

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