山根康宏の「言っチャイナよ」

カメラが飛び出す端末や世界最薄の再更新

そして低価格高スペックなスマートフォンが登場

 世界シェアで着々と順位を上げる中国のスマートフォンメーカー。本誌「みんなのケータイ」でもおなじみの香港在住のモバイル・ジャーナリスト山根康宏氏が最新の中国スマホ事情を解説します。2014年12月はカメラが飛び出て動くギミック端末や世界最薄を更新した端末、また低価格高性能なスマートフォンが続々登場しました。

Doov、背面カメラが前面に飛び出すセルフィースマホ「V1」を発売

 Doov(深セン市朶唯志遠科技有限公司)は背面のカメラを前方へ190度引き出し、自由な角度で写真が撮影できる「V1」を発売した。本体上部のカメラユニットが前後に回転する端末は今までにいくつか販売されてきたが、N1のようにカメラが飛び出るように前側に動くギミックのスマートフォンは世界初である。カメラは1300万画素で、フロント側へ引き出せばセルフィー用としても十分高画質だ。なお同社は女性向けのスマートフォン製造を専業としている。

 ディスプレイは5インチHD(1280×720ピクセル)、チップセットはMT6752(1.5GHz、クアッドコア)。通信方式はTD-LTE/TD-SCDMA/GSMに対応。メモリは16GB版と32GB版の2モデルが用意される。Hi-Fiサウンド再生にも対応し高音質な音楽も楽しめる。またDoovから8TBのクラウドサービスも提供される。本体はパステルカラー2色とゴールドの、合計3色のカラーバリエーションがある。価格は16GB版が1999元(約3万8530円)。

Doov V1

BBK、世界最薄を更新する4.75mmの「Vivo X5 Max」発表

 Vivoブランドでスマートフォンを展開しているBBK(広東歩歩高電子工業有限公司)は、世界最薄スマートフォン「Vivo X5 Max」を発表した。世界最薄製品は2014年10月にOPPOから4.85mmの「R5」が発表されたばかりだが、わずか2カ月でその壁は打ち破られた。Vivo X5 Maxは厚さ4.75mm。その薄さはOPPO R5を0.1mm下回った。この薄さで強度を持たせるために、本体の内部は航空機の羽のような中空構造となっている。また基盤は1層構造としその上に9割の部品を搭載することで省スペースと薄型化を実現した。

 チップセットはSnapdragon 615(1.5GHz、オクタコア)を搭載。薄型ながらも5.5インチフルHD(1920×1080ピクセル)の有機ELディスプレイに1300万カメラを内蔵する。通信方式はTD-LTE/TD-SCDMA/GSM対応だが、追ってFDD-LTE/W-CDMA版の投入も予定されている。本体は金属製で、背面にはオーステナイト系ステンレス鋼材を採用、指紋がつきにくいナノコーティング仕上げとしている。そして専用のDACチップを搭載し、Hi-Fi 2.0と同社が謳う高い音楽再生も可能。ヤマハのカラオケチップによりボーカルを消した音楽再生もできる。価格は2999元(約5万7810円)。

世界最薄を更新したVivo X5 Max

あのMeizuが低価格スマホに本格参入開始

 ハイスペックかつ高コストパフォーマンスなモデル「MX4」「MX4 Pro」の2機種をラインナップに備えるMeizu(珠海市魅族科技有限公司)から、今度は1000元を切る低価格かつ高スペックなスマートフォン「m1 Note」が発表された。ライバルのXiaomi(小米科技、シャオミ)の低価格ライン「RedMi」(紅米)に対抗する製品で、他社も含めた1000元切り端末の中でもスペックは抜きんでている。

 チップセットはMT7652(1.7GHz、オクタコア)を採用。ディスプレイは5.5インチのフルHD(1920×1080ピクセル)、メモリはRAM2GB、メインカメラは1300万画素と他社の上位モデルに迫るスペック。モデルはTD-LTE版とTD-LTE/FDD-LTE版の2種類となる。本体カラーはiPhone 5cをほうふつさせるカラフルな5色。iPhone 5cは中国向けの低価格モデルという位置づけもあったようだが、価格が高すぎ中国での売れ行きはいまひとつだったとも言われている。Meizu m1 Noteは「こうすれば5cは売れたはず」とでも言わんばかりの低価格と高性能を両立している。価格はメモリ16GB版が1000元を切る999元(約1万9260円)、32GB版が1199元(約2万3120円)。

低価格高スペックなMeizu m1 Note

ZTE、音声操作が可能な「Star2」発売

 ZTEは端末に触れずに音声で様々な操作が可能なハイスペックスマートフォン「Star2」の販売を開始した。電話の発着信、カメラ操作、ナビゲーション、検索、ロック解除、アプリ起動などの操作を本体に話しかけるだけで行える。ZTEによると騒音環境の下でも音声の認識率は90%と高く、約1.2秒で反応するとのこと。なおStar2には1000以上もの特許が使われているが、そのうち約160は音声認識に関するものという。なお音声認識専用のDSPチップを搭載している。

 また、通信方式はTD-LTE、FDD-LTE、TD-SCDMA、W-CDMA、CDMA2000、GSMと6モードに対応。Snapdragon 801(2.3GHz、クアッドコア)のチップセットを採用し、ディスプレイは5インチフルHD(1920×1080ピクセル)を搭載する。本体はアルミ合金製で軽量化を図っている。カメラは1300万画素、本体サイズは140.5×69.2×6.9mm。価格は2499元(約4万8500円)。

音声でのフル操作が可能なZTE Star2

レモンをイメージしたLenovoの「レモンK3」発売

 Lenovo(聯想集団)はボディーカラーが大きく目を惹く新製品「K3」の販売を開始した。愛称は「楽檬」。これは英語のレモンをそのまま中国語の読みにしたもので、黄色いカラーはそのままレモンをイメージしている。

 2014年は各メーカーが1000元を切る戦略モデルを別ブランドで展開、Lenovoも低価格高性能製品には「黄金斗士」という愛称をつけて販売している。今回発売されたレモンことK3は学生や20代をターゲットにした新しいラインの製品で、従来の黄金斗士シリーズよりも価格を引き下げスペックを維持した製品。

 チップセットはSnapdragon 410(1.5GHz、クアッドコア)を採用。低価格モデルがMediaTek品を採用する中であえてQualcommのチップを搭載した。ディスプレイは5インチHD(1280×720ピクセル)で、通信方式はTD-LTE/TD-SCDMA/GSMに対応する。なおLenovoのスマートフォンはFDD-LTE/W-CDMA版も併売されるモデルが多いことから、このK3も追って追加されると予想される。価格は599元(1万1550円)。

レモンをイメージしたLenovo K3

Huawei、新ブランドHonorにハイスペックな「6 Plus」を追加

 Huawei(為華科技)は2014年にコストパフォーマンスの高い新ブランド「Honor」シリーズを投入。Honorシリーズはエントリーラインの「Honor 3」、ミドルレンジ系の「Honor 4」そしてハイスペックの「Honor 6」と3つのラインに分かれており、その最上位モデルとして「Honor 6 Plus」を発表した。高速CPUに高速LTE対応、大容量電池に高級な仕上げと同社の「Ascend」ブランドの上位モデルにも匹敵する製品となっている。

 チップセットはHiSilicon製のKirin 925(1.8GHz、オクタコア)。RAMは3GB、ROMは16GBBと32GB版の2種類。LTEは下り最大300Mbpsとなるカテゴリー6対応。カメラは背面に800万画素のツインカメラを搭載、F0.95と明るくボケの効いた写真も撮影可能だ。加えてフロントにも800万画素カメラを搭載しており流行のセルフィー需要にも応える。通信方式はTD-LTE版と、FDD-LTE/TD-LTE版が登場予定。価格はTD-LTE/ROM16GB版が1999元(約3万8530円)となっている。

シリーズ最上位モデルのHonor 6Plus

あのパイオニアの中国向けスマホ「E82L」

 日本のパイオニアが中国でスマートフォンを販売。ただし、直接パイオニアが生産しているのではなく、中国の大手家電量販店である蘇寧電器が携帯電話製造会社を設立し、ブランドを利用している。なお、蘇寧電器は日本のラオックスを買収した会社だ。製造は湖南蘇宇先鋒電子有限公司(「先鋒」はパイオニアの中国での名称)、販売は蘇寧電器で行われている。量販店が自社製造するスマートフォンに、日本のブランドを付けることで付加価値を高めているわけだ。

 最新モデルの「E82L」は990元(約1万9090円)と、1000元を切る低価格端末ながらLTEに対応する。ディスプレイは5インチHD(1280×720ピクセル)、チップセットはMT6732(1.5GHz、クアッドコア)。RAM1GB、800万画素カメラなどミッドレンジクラスの性能を有する。本体はホワイトとシャンペンゴールドの2色でそれぞれ表面の仕上がりを変えている。湾曲した断面形状で5インチモデルの中でも持ちやすい製品だという。通信方式はTD-LTE、TD-SCDMA、GSMに対応する。

パイオニアブランドのE82L

今月のメーカーピックアップ「Doov」

Doov

 Doov(深セン市朶唯志遠科技有限公司)は世界的にも珍しい女性向け端末専業メーカーである。2009年の創業以来、一貫して女性向けケータイやスマートフォンを手掛けてきた。製品はピンクやパステルカラーを使ったボディーが多く、広告には中国語圏やアジアでに人気の女優、スー・チー(舒淇)を採用。女性が毎日アクセサリのように持ち運べるファッショナブルな端末には、女性向けの機能なども搭載されていた。

 スマートフォンの参入は2012年と若干遅れたが、すぐさま他社には無い特徴で女性たちから大きな人気を得る。それが高性能なセルフィー機能だ。今でこそ中国メーカー各社のスマートフォンはフロントカメラ画質を高め、美顔モードを搭載している。Doovはソーシャルサービス上で女性たちがセルフィー画像を公開しあっていることに着目し、女性たちがスマートフォンに求めている機能の一つがセルフィーであることにいち早く着目したのだ。同社はフロントカメラ性能と美顔カメラアプリの開発に注力を行い、またセルフィー普及のため自社サイトでのセルフィー大会も自ら開催してきた。

 現在、Doovのスマートフォンには美顔カメラアプリ「魔鏡Cam」が標準搭載されている。最新の「魔鏡Cam 2.0」では美白や目元をくっきりさせるなど10の効果が自動で適応され、一切の設定や調整をせずに自分の顔を美しく撮影できるという。またウィンクやVサインでシャッターが切れたり、セレブのように雑誌の表紙に自分が写っているような効果を出すマガジンエフェクトなど楽しい機能も標準搭載している。そして今回発表した「V1」のように、ギミックに富んだ製品も出すなど「女性向け端末専業」という枠では考えられない、新しい商品開発にもチャレンジしている。Doovの製品はまだ中国国内での販売に留まっているが、今後ぜひとも国際展開を行ってほしいものだ。

山根康宏

 香港在住。中国をはじめ世界中のモバイル関連イベントを毎月のように取材し、海外の最新情報を各メディアで発信している。渡航先で買い集めた携帯電話は1000台以上、プリペイドSIMカードは500枚以上というコレクターでもある。