第433回:可聴域とは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 音は空気の振動によって伝わりますが、“高い音”“低い音”は振動の周波数で表現できます。今回紹介する「可聴域」とは、音を“音として感じることができる周波数帯域”のことを言います。

 人間の場合、20Hzから大体14000~16000Hzくらいまでの音が「可聴域」であるとされています。ただし、年齢や個人差によって、可聴域はかなりばらつきがあります。

 ちなみに、可聴域を超える高い周波数の音を超音波と呼びますが、人は超音波を聴くことができません。

 可聴域は動物の種によって大きく異なります。たとえば犬の可聴域は40~65000Hz程度までが可聴域となっています。イルカなどでは150Hz~150000Hz程度までが可聴域で音として感じることができます。これらの動物は、人が聴けない超音波を感知でき、イルカなどでは超音波で仲間と交信していると言われています。

 逆に、低すぎて人には聞こえない音は超低周波音と呼びます。こちらも、通常、人間の聴覚では認識できません。人の可聴域の下限である20Hzと言えば、1秒間に20回の振動ですので、共鳴した窓等がガタガタと鳴るなどの現象として確認することができる場合があります。また、この帯域の音は、人によっては、耳にすると嫌悪感や恐怖などの感覚を経験することがある、とする研究もあります。

大人には聞こえない着信音とは

 一般的に、人間の可聴域は、年齢と共に上限が低下していきます。つまり、若い頃には聞こえていた高い音が年を経るごとに、だんだん聞こえなくなる、という現象が起きるわけです。

 この現象を応用しているのが、いわゆる「大人には聞こえない着信音」です。

携帯電話用可聴域測定ゲームの例。スピーカーから発せられる音で、利用者がどの周波数の音を聞き分けられるかを測定する

 モスキート・リングトーンなどとも呼ばれ、17000Hz程度の高い周波数の音を着信音として鳴らします。この辺りの周波数は、成人~中年~老人あたりの年齢で聞き取れる人は、ほとんどいないと言われていますが、その一方で、未成年の人にとっては蚊の飛ぶような音、非常に高い音として聞き取ることができます。

 当初、“大人には聞こえない音”は、英国の警備会社によって商品化されました。携帯電話の着信音ではなく、スピーカーでこの帯域の大きな音を出すことで、たむろする若者を追い払うという用途でした。

 スピーカーを店頭に設置すると、非常に高い音は大人の店員には聞こえませんが、店頭20m程度の範囲内でたむろする若者には不快に感じられるため、その場を離れさせられる、というわけです。

 それが、英国や米国の携帯電話向けに「大人には聞こえない着信音」として発売され、その後、世界中の携帯電話にもこのような着信音が発売されるようになったのです。

 携帯電話のゲームなどでは、可聴域を測定するゲームも存在します。携帯電話のスピーカーからさまざまな音を出し、利用者がそれを聞き取れたかどうか判定することで、可聴域を測定できます。

 なお、携帯電話のスピーカーは可聴域以上の周波数の音を発することができますが、通話の場合は、ローパスフィルターによって、ある程度以上の周波数の音をカットしているため、通話相手に可聴域以上の高い音を聞かせることはできません。

 



(大和 哲)

2009/8/11 13:02