第452回:WPS とは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 WPS(Wi-Fi Protected Setup)とは、無線LANの接続設定やセキュリティ設定を簡単に行うために作られた規格です。ユーザーは、これまで一般的だった無線LAN接続の手順、たとえば、アクセスポイントのESSIDを調べたり、WEP/WPAキーを設定したりするといったことを知らないユーザーでも、ボタンを押したり暗証番号を入力したりするだけで無線LANアクセスポイントへ接続できるようになります。それも、既に盗聴などの危険が指摘されているWEPやWPAではなく、安全なWPA2での無線LAN接続を可能にします。

 この規格は、IEEE802.11 a/b/g/nに準拠した、いわゆる「Wi-Fi」と呼ばれる無線LAN製品の普及促進や相互接続性認証試験を行っている業界団体「Wi-Fi Alliance」が、2007年に発表したもので、対応機器の認証も行っています。

 最近登場した無線LAN対応の携帯電話の多くで「WPS」が利用できます。たとえば、ソフトバンクモバイルの携帯電話ではシャープ製「940SH」「941SH」「943SH」、NEC製「931N」「940N」といった機種で、WPSが利用できるようになっています。NTTドコモの携帯電話では、NEC製「N-02B」「N-06A」「N906iL」が、auの携帯電話では東芝製「biblio」が、やはり「WPS」対応です。

 「WPS」による簡単な接続を利用するためには、接続先の機器も「WPS」に対応している必要があります。最近では、多くの無線LANアクセスポイントが「WPS」に対応しており、家庭や小規模な事務所に設置されていれば、WPS対応の携帯電話と簡単に接続できます。

繋げたい機器でボタン同時押しか暗証番号

 「WPS」を利用した機器において、もっとも簡単な方法は「プッシュボタン認証モード」でしょう。これは、接続したいアクセスポイントと端末の両方で、ボタンを同時に押せば、機器がお互いを確認し、無線LAN経由で繋がるというものです。

 もう1つ、「WPS」対応機器で利用されているのは「個人暗証番号(PIN)認証モード」です。クライアントとなる機器にPINコードが設定されているので、アクセスポイントに4~8桁の暗証番号を登録すれば接続できるようになるという方法です。

 規格としては、USB機器を利用した接続方法なども存在しています。

メーカー独自の接続規格にも対応した携帯電話も

 WPSは、Wi-Fi Allianceが公開している、標準的な無線LANの“簡単接続規格”ですが、同じように機器を簡単に接続するための規格は他にも存在します。

 たとえば、バッファローが発売している無線LAN機器などを中心に、WPS以前から「AOSS」という仕組みが搭載されていました。あるいは、NECアクセステクニカ製のアクセスポイントで採用されている「らくらく無線スタート」は、ボタン操作のみで簡単に無線LAN設定を行う機能です。

auのbiblioは、WPSのほかAOSS、らくらく無線スタート

 「AOSS」や「らくらく無線スタート」はニンテンドーDSやPSPのようなゲーム機や、パナソニック製Blu-rayディスクレコーダーまで多くの対応機器で利用できる規格ですが、2007年以前は、海外も含めると、こういった規格がさまざまなメーカーから提供されつつあり、メーカーごとに独自規格による囲い込みが始まる可能性がありました。

 Wi-Fiの普及化促進団体であるWi-Fi Allianceとしては、特定メーカーからの囲い込みではなく「どのメーカーの製品でも接続できる」ようにする必要がありました。そのために公開されたのが「WPS」であるというわけです。

 携帯電話の中には、AOSSやらくらく無線スタートにも対応した機種も存在します。たとえば、ソフトバンクモバイルの「940SH」「941SH」「940N」「931N」などがWPSとAOSS両方に対応しています。auの「biblio」では、WPS、AOSS、らくらく無線スタートの3規格をサポートしており、いずれの仕組みでも簡単に無線LAN接続が可能になっています。




(大和 哲)

2010/1/26 12:39