第463回:JILとは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 「JIL」は、チャイナモバイルやソフトバンク、ベライゾン・ワイヤレス、ボーダフォングループが設立する合弁会社、および、この会社が公開している携帯電話用ウィジェットプラットフォームの名称です。

 「ウィジェット」とは、待受画面で実行できる、比較的シンプルなプログラムのことです。JILウィジェットは、対応する携帯電話上でゲームや、時計、カレンダーといったプログラムを利用できます。

 企業としてのJILは、2008年4月に設立され、ウィジェットを実行できるプラットフォームの提供、および、採用する企業の拡充のための活動としてモバイルウィジェット開発のためのツール類提供や、APIの公開といった活動を行っています。

 最新のJIL規格は、バージョン1.2で、従来版でサポートを表明していたLGエレクトロニクス、Research In Motion(RIM)、サムスン、シャープに加えて、HTC、Huawei Device、レノボ、ZTEなども対応することを発表しています。2010年3月現在、JIL対応の携帯電話はまだ発売されていません。

 JILでは、ウィジェットのAPIをWorld Wide Web Consortium(W3C)に対して提供することにしています。W3Cは、Webで使用される仕様の標準化を推進する標準化団体で、HTML、XMLなどもこの団体によって標準化されています。これにより、JILは、オープンな規格となり、誰でもがこの標準を参照することで、ウィジェットを作成することが可能となります。

 また、JILは、Wholesale Applications Community(ホールセール アプリケーション コミュニティ、WAC)へ加入することも表明しています。WACは、オープンな携帯電話向けアプリケーションの開発環境の構築や端末に依存しないアプリの提供を行うことを目指す非営利団体です。

 なお、JILにはソフトバンクも設立に加わっていますが、同社の携帯電話ウィジェット環境「モバイルウィジェット」のベースとなっているACCESSの「NetFront Browser Widgets」と、JILとは別の技術です。

JILウィジェットの概要

 JILでは、ウィジェットを開発することは誰にでも可能です。Webサイトで会員登録すれば、技術仕様書やソフトウェア開発キット(SDK)を入手でき、誰でもウィジェットを開発できます。

 作成したウィジェットは、JILサイトを通して配布することもできます。なお、JILウィジェット規格は、無料でのウィジェット配布にのみ対応していますが、将来的には開発者や携帯電話事業者が利益を得られるような有償配布にも対応した仕組みを提供する方針が示されています。

JIL公式サイト。無料の会員登録を行えば、ウィジェット開発に必要な資料やツールなどの入手、ウィジェットの配布も可能となる

 JILウィジェットプラットフォームは、Symbian 9、Windows Mobile 6、AndroidなどLinuxプラットフォーム、QVGA以上のディスプレイサイズ、GPRS/EDGE以上の通信速度、HTTP1.1/WAP2.0互換の環境で動作します。ウィジェットはHTML、CSS、Javaスクリプトの仕組みを利用して作成します。ウィジェットのサイズは、500KB以内となります。

 携帯電話には、ウィジェットのプログラム(ウィジェットランタイムと呼ばれます)を動作させる仕組みとして、「ウィジェットマネージャ」が動いており、これが、ウィジェット本体をダウンロードやアップデートを行います。

 携帯電話から専用サイトへアクセスすればダウンロードできるほか、メール添付のファイルや、ウィジェットカタログプレイヤーとよばれる携帯電話内蔵のソフトウェアを使って、パケット通信でダウンロードすることもできます。USBやBluetoothといった通信手段や、外部メモリからもインストールできます。

SDKに含まれるJILエミュレータを使って、JILウィジェットを実行したところ。JILウィジェットでは、ゲームなど最大500KBの小さなプログラムを携帯電話上で実行することができる。

 



(関口 聖)

2010/4/13 14:02