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第478回:裏面照射型CMOSセンサー とは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 「裏面照射型CMOSセンサー」とは、BSI型CMOSとも呼ばれるイメージセンサーの一種です。デジタルカメラなどの撮像素子(レンズから入ってきた光を信号に変換する部品)として利用されています。BSIは“裏面”“照射”を意味する英単語「Back Side Illumination」の頭文字から来ています。

 この裏面照射型センサーは、従来の表面照射型のCMOSセンサーと比較して、高効率で光を取り込めるという特性があり、これまでのデジタルカメラより高感度にすることができます。つまり、暗い場所でも鮮明な画像を撮影したり、撮影の際の手ブレなども防いだりすることができるわけです。

 裏面照射型CMOSセンサーの製造元としては、日本のソニーと、米国のOmniVisionが有名です。携帯電話では、アップルの「iPhone 4」が裏面照射型CMOSセンサーをカメラ用デバイスとして採用しています。

シリコン基板を削り裏面を入射側に

 裏面照射型CMOSセンサーの原理を見てみましょう。基本的には、その名前の通りで、従来の表面照射と比べ、光の入ってくる方向が“逆になっている”というものです。

裏面照射型CMOSイメージセンサーの概念図。回路などのある表面ではなく、裏面から入射光を取り入れることで高感度なイメージセンサーにしている

 撮影素子として使われるCMOSセンサーは、半導体集積回路の一種です。光を受け、光を電気に変換する受光素子・フォトダイオード、読み出しトランジスタなどの回路、それらの部品の間でやり取りするための配線などから構成されています。

 従来のCMOSセンサーでは、これらの配置は、光を受けて電気エネルギーに変換する受光素子が、複数の層で構成された配線の裏に置かれています。というのも、CMOSのような半導体集積回路は、「半導体基板の上に、配線を光学写真技術によって写しこむ」という方法で製造されるため、ダイオードの上に配線を作るという構造になるのが自然で製造しやすい形なのです。

 そこで、これまでは表面照射型という構造はそのまま、透明度の高い配線などで受光素子までの光を届きやすくする、といった工夫が取られてきました。しかし、これらの工夫をこらしても、センサーの高画素化が進み、画素が微細になるに従い、画素配線や転送ゲート電極部によって入射してきた光が遮られてしまうことが顕著になってきたのです。そこで、登場したのが、裏面照射型CMOSセンサーです。

 裏面照射型CMOSセンサーでは、先述した通り、基板や配線をフォトダイオードの裏に置き、入射側にフォトダイオードがあるという、これまでのCMOSイメージセンサーとは逆の配置になっています。これにより、入射光は、回路などに邪魔されず、フォトダイオードで直接受光でき、結果として高感度なイメージセンサーを作ることができるのです。

 「裏面照射型の方が高感度にできる」という考え方自体は20年以上前からありましたが、量産されることはありませんでした。その理由としては、技術的に裏面照射CMOSセンサーの製造自体が困難だったためです。集積半導体の製造は、シリコン基板上にさまざまな回路を写しこんでいく方法で作るため、そこから基板上にあるフォトダイオードとその上に作った回路の位置を逆転させるのが難しいのです。また、商用化したソニーでは、裏面照射型CMOSセンサー開発時にノイズや混色などの課題があったとしています。そのソニーが公表した資料によると、さまざまな工夫で商用化にこぎ着けたとしています。その1つが基板を削るという工程です。シリコン基板上にフォトダイオード、回路を作成して裏側のシリコン基板を削ります。この基板を約8μmまで削ることで、裏からの光をフォトダイオードが検知できるようになり、ここを入射側にすることを可能にしているのです。

 



(大和 哲)

2010/8/3 13:08