第502回:フルHDとは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 「HD」というアルファベット2文字が略称となっている言葉は多くありますが、オーディオ/ビジュアル用語としては、「HD」は高精細なデジタル動画を示す言葉として使われます。ここで言う“HD”は、高精細度を意味する“High Definition”から来ており、派生した言葉として「フルHD」という用語があります。

 今回紹介する「フルHD」は、長方形サイズの動画で、短い辺が1080ピクセル以上となる動画を指す言葉です。家庭用デジタルムービーや、デジタルカメラでは、この1080ピクセル以上の撮影モードを搭載した機種が販売されています。

 携帯電話でも、フルHD動画に対応した端末がいくつか既に販売されています。先日NTTドコモから発表された、バカラとのコラボモデル「SH-09C」やその元になったモデル「SH-01C」のほか、「F-01C」「F-02C」などいくつかの機種が、既にフルHDでの動画撮影に対応した端末になっています。

 携帯電話に組み込む部品としても、ルネサス エレクトロニクスは、スマートフォンやハイエンド携帯電話向けに、1600万画素、1920×1080ピクセルでのフルHD動画撮影に対応したカメラ用システムLSI「CE150」を発表、サンプル出荷を開始したとしています。このデバイスは、内部処理方式を改善し、高速連写をサポートできるようにしたCMOSモジュールです。

 こうしたデバイスが続々と登場することで、各メーカーの携帯電話やスマートフォンでは、フルHD動画撮影が可能な機種がますます増加することでしょう。

HDTV放送を欠落なくできる「フルHD対応」

 今のところ、携帯電話では、動画撮影時の機能の1つとして使われがちな「フルHD」ですがもちろん再生側の機能としても使われる用語です。ただし、携帯電話やスマートフォン、タブレットといった機器では、短い辺が1080ピクセル以上となるディスプレイを持つ機器はないと言える状況です。

 もともと「フルHD」や「HD」、「ハイビジョン」という言葉は、テレビの性能を示す用語として知られてきました。テレビ放送がデジタル化されるようになって、従来のアナログ放送よりも高精細な映像が放送されるようになると、“受像機“であるテレビや撮影機材、動画データのサイズも高精細になっていき、そうした用語が使われるようになってきたのです。

 従来は、短辺が525ピクセル(アメリカや日本でのNTSC方式)、あるいは625ピクセル(PAL方式)程度の放送を「標準」とみなして、SDTV(Standard Definition Television)と呼ばれます。この倍程度(インターレース方式では1125ピクセル、プログレッシブ方式では750ピクセル)以上となるものも「HDTV」と表現するようになりました。

 HDTVの映像をディスプレイ装置に表示させようとすると、ある程度の大きさが必要です。日本の電子部品・材料、IT分野の業界団体であり、電気製品の規格なども策定している電子情報技術産業協会(JEITA)では、ハイビジョンテレビについて「フラットパネルを使用した受信機では、走査線数1125インターレースおよび750プログレッシブをフルデコードして、それらを垂直画素数650以上で表示できる」と定義しています。かつては、「HD」サイズのテレビが販売されていましたが、より高精細な表示が可能なった製品が開発され、現在ではフルHD対応のテレビが中心となっています。モバイル機器でも、フルHD化の影響が出ていると言えるでしょう。



(大和 哲)

2011/2/8 12:43