第506回:MHLとは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 「MHL」は、米国のSilicon Imageという企業が開発した、モバイルデバイスから映像データを高速転送するインターフェイスの規格です。

 「MHL」という名前は、“モバイルな高精細のリンク”といった意味の「Mobile High definition Link」から来ており、その名の通りモバイルデバイスと高精細(HD)テレビやモニターを接続する際に利用する規格です。

 携帯電話やスマートフォン、それにパソコン用ディスプレイやテレビなどが「MHL」に対応するようになれば、これらのデバイスを直接ケーブルで繋ぎ、より簡単にケータイの画面やスマートフォン向けのストリーミング映像コンテンツなどを、より大きな画面で表示できるようになるでしょう。

 2010年4月には、Silicon Imageのほかに、携帯電話メーカーであるノキア、サムスン、ソニー、東芝の5社によって、この規格を普及促進させるMHLコンソーシアムが設立され、規格のバージョン1.0が作成されました。2011年3月現在、具体的な携帯電話の対応機種は発表されていません。

 ちなみにSilicon Imageは、HDテレビなどで使われているインターフェイス「HDMI用送受信IC」などを手がけるメーカーでもあります。これまでに、モバイルデバイス用LSIや受信用LSI、MHLとHDMIインターフェイスの橋渡し用LSI、他社が作成するSoCで利用するためのIPコアなども発表、提供を始めており、また、採用予定メーカーもいくつかMHLコンソーシアムに名乗りを上げているため、近い将来、この規格に対応した機種が発表されるだろうとされています。

USBと共通点多く、マイクロUSBコネクタが流用可能

 MHLインターフェイスの特徴は、

  • HDMIと同じく高精細映像などを送信できる
  • ピン数が少ない
  • 既に存在しているコネクタを流用できる
  • モバイルデバイスに電力供給できる
  • コンテンツプロテクションに対応

といった点が挙げられます。

 HDMIインターフェイスは、現在主流のType Aコネクタ、超小型の規格として最近登場したType D、ともに19個のピンを使うのに対し、MHLインターフェイスが必要とするピン数は、電源や制御信号など5つです。最大2.25Gbit/secで情報を送ることで、1080pで30fpsの映像、192kHzまでの7.1チャンネルサラウンドオーディオが転送できます。

 この5ピンで電源供給しながらシリアル転送でデータを送出するという構成は、同じく最少5ピンを使って、パソコンと周辺機器を繋ぐUSBインターフェイスと似ています。実は先述した特徴のうち、「既に存在しているコネクタを流用できる」という特徴は、MHLインターフェイスが、すでにスマートフォンなどで採用されているMicroUSBコネクタを流用できる、ということなのです。

 MHLのWebサイトにあるFAQによれば、「MHL 1.0」はHDMIのVersion 1.3a規格と、MicroUSBケーブル・コネクタ規格1.0版を参照して作られており、実際の製品も携帯電話側はMicroUSBコネクタで、テレビ側はHDMIコネクタに接続するようなケーブルが提供され、接続機能が使われるようになるでしょう。

 HDMIのような多ピンのコネクタを用意するにはそれなりの面積が必要となるため機械のサイズが小さいモバイル機器には難しいところでしたが、電源供給とデータ通信用に既に採用されているコネクタをそのままテレビにつなぐためにも使うことができるとなると、携帯電話メーカーが採用を考えるようになるのも合点がいくところです。

 また、上に挙げた特徴にも含まれていますが、MicroUSBをそのまま使うので、もしMHL対応であれば、たとえば携帯電話をテレビに繋いでおけば充電できる、といったことも可能になるわけです。

 また、著作権保護技術としては、HDCPというデジタル著作権保護技術が利用可能です。これもHDMIインターフェイスと同じです。携帯電話側とディスプレイ側が鍵暗号を使い、厳密にお互いの機器を認証します。著作権が保護されたコンテンツを表示する場合は、携帯電話側とディスプレイ側の双方がHDCP対応でなければ表示しない、といった動作が可能になっています。

 



(大和 哲)

2011/3/8 12:40