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第508回:ANT/ANT+ とは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 「ANT」は、GPS端末装置メーカーのGarmin傘下である、カナダのDynastream Innovationsが開発した、超低消費電力を特徴とするワイヤレス通信ソリューションとプロトコルです。

 PAN(Personal Area Network)、つまり、個人が使用する機器同士を接続するネットワーク機器向けの規格で、接続範囲は身の回り数m程度と非常に近距離の通信に限られますが、超低消費電力のデバイスを開発でき、なおかつ柔軟なネットワークが構成できる点が特長です。

 そして「ANT+」は、ANTを採用したデバイスが相互に通信できるようにした共通の仕様です。ANTを普及するアライアンス「ANT+ Alliance」には2011年3月現在、365社以上の企業が参加し、多くのメーカーから対応デバイスが販売されています。たとえばA社の心拍系付腕時計と、B社のサイクルコンピュータ(自転車に搭載し、走行距離や速度などを記録するコンピュータ)をリンクする、というようなことも可能です。

 ANT+規格は、特に海外製品で、スポーツやフィットネス、家庭医療といった分野で多く使われています。携帯電話・スマートフォンでは、ソニー・エリクソン製の「Xperia arc」でも採用されています。

低電力な無線通信プロトコル

 ANTは、先に述べたように超低消費電力を志向した、PAN向け無線通信プロトコルです。

 最初にANT機器として開発された機械は、ランナーが走行距離や走行速度などを測定するために身につける機器と、腕時計との間で通信するためのものでした。この機器の開発では、送受信両方の機器でバッテリーが必要であり、充電も頻繁にできず、価格を抑えると言った点に挑戦する必要がありました。

 その結果として生まれたプロトコルが「ANT」です。2.4GHz帯という、無線免許が不要な周波数帯の電波を使います。原理としてはシンプルなTDD方式で、“アイソクロナスデータ転送”と呼ばれる仕組みを採用しています。わずかなデータをやり取りしますが、当初から送受信側とも、ボタン電池(CR2032)で1年間利用することが可能となっていました。この特長は、現在のANT機器にも生かされており、多くのANT機器がボタン電池1つで1年〜数年以上利用できるとされています。

 また、ANTは非常にネットワーク構を柔軟に構成できることも特長の1つです。通信は、主従関係が設定されて二者間通信が行われますが、一方の機器は主従両方の機能を備え、さらに複数の“主(マスター)”の機器が、1つの“従(スレーブ)”に対して通信できます。その結果として、複数の機械を使って、P2Pやスター型、ツリー型などさまざまなネットワーク形態を組むこともできます。

運用互換を保証するANT+

 ANT+は、先に述べたように、ANTを採用したデバイスが相互に通信できるようにした共通の仕様です。

 ANT対応の機器では、通信の仕方としてどんなANT機器とも繋ごうとするオープン接続、あるいは、メーカー指定の特定機器とだけ接続できるクローズド接続などが用意されています。ANT+では、ANT+に対応した、どんなメーカーの機器でも接続でき、かつ、ユーザーが繋ごうとする機械のみ指定できるようになっています。

 ANTを普及するアライアンス「ANT+ Alliance」に加盟した各社は、販売するデバイスの互換性テストなどを実施し、多くの会社の販売するデバイスで互換性が保たれているのです。

 ANT+では、いくつかプロファイルが制定されており、主なプロファイルとしてはたとえば心拍数・歩数など(HRM、SPD、STP)、自転車用各種プロファイル(CAD、SPD、PWR)、フィットネス機器用プロファイル(FIT)、体重などの健康機器向けプロファイル(WGT、BP、BG)などが用意されています。このプロファイルを使って、特定の目的のデータを指定した機器同士でやり取りします。

 ANT+対応機器としては、これまで海外向けの製品が多く、心拍数計機能のある腕時計、スポーツシューズ用センサー、体重計、フィットネスジムで使われるエアロバイク、サイクルコンピュータなどで採用されています。パソコン向けのUSB対応ANT+インターフェイス機器も販売されており、対応機器で図った数値をパソコンやインターネット上で集計することも可能になっています。

 携帯電話では、2011年2月、ソニー・エリクソンがミドルウェア「ANT API for Android」をリリースし、ANT+をAndroidで使えるようになりました。ソニー・エリクソンでは、海外向けのスマートフォン「Xperia X8」「Xperia X10 mini」「Xperia X10 mini pro」でアップデートを行って対応する方針を示しています。新機種の1つである「Xperia arc」のほか、「Xperia neo」「Nperia Pro」は今後対応予定となっています。日本で発売される「Xperia arc」でもサポートされています。

 今後は、ANT+対応のAndroidスマートフォンと、ANT+対応のヘルスケア機器を連携させるサービス、アプリなどの登場も期待できます。

 



(関口 聖)

2011/3/22 13:04