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第513回:ホワイトスペースとは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


使われていない周波数

 電波を使うために、各国で、用途別に周波数が割り当てられています。ただ、使える周波数は有限です。

 電波は、光や紫外線などと同じ電磁波で、なかでも3000GHz(3THz)程度までの電磁波のことです。電波を使う機器は年々急増している上、電波には周波数が高くなればなるほど、物にぶつかると影ができる、つまり電波の届かない箇所ができやすくなるという性質があります。そのため用途によっては、適さない周波数もあります。利用できる範囲が限られる、ということで電波は有限なのです。

 その一方で、特定の用途に割り当てているにもかかわらず、使用されていない周波数帯が存在しています。それが今回紹介する、「ホワイトスペース」と呼ばれる周波数帯です。最近ニュースでもとりあげられていますが、限られた電波ですから、利用したいと考える人は多く、ホワイトスペースが注目されるのは当然と言えるでしょう。

干渉予防用の周波数を「空きスペース」とみなす

 なぜ、このようなホワイトスペースができたのか、それは現在の電波利用技術の進歩が背景にあります。

 たとえば、テレビ放送はどうでしょうか。首都圏のアナログテレビ放送で利用されているチャンネルは「1」「3」「4」「6」「8」「10」です。隣り合っているのは「3」と「4」だけで、「2」「5」「7」「9」といったチャンネルは空いています。「3」と「4」については、1〜3と4〜12で割り当てている周波数帯が大きく離れた、別ブロックになっています。

 このように間を空けて割り当てた理由は割り当てたチャンネル同士の干渉を防ぐための配慮だったのですが、現在、主流となったデジタル通信機器では、周波数をここまで空けておかなくても干渉しにくくなっています。

 そこで、この間隔のうち、現在の技術で利用できる周波数については、空き地、つまり「ホワイトスペース」とみなして使ってしまおうという発想が出てきたわけです。

 この発想は当初、やはりテレビ放送がデジタル化が予定されていた米国で、Googleやマイクロソフトを中心としたハイテク企業などで行われました。

 米国では2009年にテレビ放送のデジタル化が行われました。米国で周波数割当などを行う機関であるFCC(Federal Communications Commission・連邦通信委員会)は、検討を重ねた後、2008年になってホワイトスペース対応機器の利用を許可しました。

 ホワイトスペース通信機器は、英語では、WSDs(White-space Devices)と呼ばれ、無線LANなどで利用されます。テレビ放送で使っている周波数帯は、従来の無線LANで使われている2.4GHz帯や5GHz帯よりも周波数が低く、家の壁に遮られにくく、ユーザーにとってはより利用しやすい機器にすることができます。

 なお、米国の場合、WSDsは使用するには特に免許などは必要ないとされましたが、テレビ放送などと干渉しないことが利用の条件となっていますので、既にテレビ放送などが周波数帯を使っていないことを確認しつつ通信する仕組みが必要となっています。そのため、機器には、この仕組みを搭載しているというFCCによる認証がされている必要があります。

日本国内ではまず「ホワイトスペース特区」が

 日本国内でも、かねてよりホワイトスペースの活用が検討されてきましたが、2011年4月、「ホワイトスペース特区」を設けて、地域ごとに実証実験が行われることになりました。

 総務省によって特定の地域が「ホワイトスペース特区」とされ、全国25団体によって、エリアワンセグ方式を利用した地域限定放送や、無線ネットワークなどの研究開発、実証実験、震災など非常時における緊急情報の配信実証が行われる予定です。

 たとえば、エフエム京都と京セラコミュニケーションシステム(KCCS)では、京都市の四条烏丸〜烏丸御池間の烏丸通、その近隣の商業施設・地下街にデジタル放送1チャンネル分の周波数帯を使って、ワンセグ対応端末向けに、地域限定放送の“エリアワンセグ放送”を提供したり、Wi-Fi対応スマートフォンやデジタルサイネージ向けにIPデータキャストを提供したりする予定です。

 全国25の団体によって行われた研究開発、実証実験の成果は、今後のホワイトスペース活用サービスやシステムについての制度化、ビジネス展開の促進に活用される予定です。

 



(大和 哲)

2011/4/26 11:53