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第544回:ETWS とは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 NTTドコモのXi(クロッシィ)対応スマートフォンでは、緊急地震警報などに使われる「エリアメール」で、「ETWS」という新方式が採用されています。FOMAなどと同じく、地震や津波などの災害が発生した際に、ユーザーに大きな音と画面上のメッセージで、緊急地震速報や避難情報が送られます。

 ETWSは、LTEの標準で定められている規格の1つです。その名称は、英語で「地震津波警報システム」を意味する「Earthquake and Tsunami Warning System」から来ています。ETWS自体は、LTEのほか、海外で利用されているGSM方式、あるいは日本や海外の3Gサービスで利用されているW-CDMA方式でも標準的な技術となっています。たとえばドコモでは、2010年冬モデルのiモード端末でも、ETWS方式によるエリアメールに対応しています。

 当初、LTEでは緊急情報配信のための仕組みは検討されていなかったのですが、地震や台風が多い日本のNTTドコモが、地震などの緊急情報をより多くのユーザーへ、より早く、より効率よく配信する技術や仕組みが必要、として提案し、それが採用されたのです。

海外ローミング先でも、現地の緊急速報を受信

 地震が多く発生する国、日本は、世界的に見ても、緊急地震速報を始めとする災害対策インフラが最も整備されている国です。2007年に実用化し、提供が開始されたドコモの「エリアメール」もその1つといえます。同等のサービスはauが2008年3月に導入・拡大させてきたほか、ソフトバンクモバイルでは2011年春より本格的に導入しています。

 2011年3月におきた東日本大震災以降の地震などで、緊急地震速報を携帯電話で受信し、そうした仕組みを実感した方も多いことでしょう。緊急地震速報は気象庁から発されるものですが、それを携帯電話会社が受け取って、ユーザーの手元にある携帯電話にいち早く配信するため、通常のパケット通信とは異なる技術が用いられています。

 これまで携帯各社の緊急地震速報の配信では、NTTドコモやソフトバンクモバイルは「CBS(Cell Broadcast Service)」方式を、au(KDDI)は「BroadcastSMS」を用いて緊急メッセージの配信が行われています。今回紹介する「ETWS」は、その後に登場した技術で、従来よりも高度化したものです。

 特徴としては、従来方式よりも、スピーディに端末へ届くことが挙げられます。たとえば、従来型の仕組みであるCBS方式を利用したFOMAのエリアメールでは、警報が発信されると、警報の内容とメッセージが、約9秒かかって端末に届いていました。

 新しいETWSでは、(ドコモの場合)最初の警報は約4秒で端末に到達します。ただし、ETWS方式では警報の内容とメッセージは一度には送られません。

 まず第一報として警報の内容だけが送られます。たとえば、警報の内容は「地震」である、ということだけが送られるのです。そして、数秒後に第二報として「地震の震度は○。震源地は××地方 沖合△△km」と、これまで一回で送信されていたメッセージが二回に分けて送られるよう、変更されています。

ETWSでは、まず警報の内容だけ第一報として送り、詳細は第二報とするよう仕様を変更。これにより、鳴動までの時間を従来より大幅に短縮

 また、LTEのETWSでは、仕組み上、ローミング先でも緊急メッセージを受け取れることは、従来との大きな違いの1つでしょう。これまでのエリアメールでは、国外に出てしまうと、その地域で地震が起きた際などにはメッセージを受け取ることはできませんでした。

 LTEのETWSでは、ローミングで国外にいる場合でも、その地域において地震速報などの仕組みが整備され、ETWSに対応していれば、現地での地震発生時、国内と同じように緊急メッセージが配信されます。

 こうした機能を実現するために、ネットワーク側の配信の仕組みも変更されています。簡単に言えば、配信するための負荷を抑えるようにしたのです。やや技術的な用語を使うと、3Gでは緊急配信をつかさどるサーバー(CBC、Cell Broadcast Center)から、基地局を管理する無線ネットワーク管理装置(RNC)へメッセージが送信されています。しかしLTEでは、基地局を管理するRNCが存在しませんので、CBS方式のままですと、配信サーバーに直接全国の基地局が繋がってしまいます。そこで携帯電話の移動などを管理する装置(MME、Mobility Management Entity)を経由して送信します。配信すべきエリアをスピーディに分析して配信するようになっているのです。

 仕組み上、海外渡航時でも利用できるLTEでのETWSですが、この仕組みが実用化されている地域は多くないものの、ETWSに米国などが求める条件を加え、より幅広い用途に活用できる警報システム「Public Warning System」への発展が見込まれています。ITU(国際電気通信連合)などでも、そうした活動が行われており、今後の世界的な普及が期待されています。




(大和 哲)

2011/12/13 12:54