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第550回:漏洩同軸ケーブル とは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 漏洩同軸ケーブルは「LCX」とも呼ばれる、ケーブルの一種です。LCXは、漏洩同軸ケーブルを意味する英語“Leaky CoaXial cable”の略語です。

 同軸ケーブルとは、電気信号を伝達するための電線の一種で、線の中心部に棒状の導体、その周りを絶縁体、そして網状に編まれるか薄い箔状になった導体、さらに外部に保護被覆という構造で作られているケーブルです。

 こういった説明ではピンとこないかもしれませんが、同軸ケーブルは、さまざまな場所で使われていて、家庭内でも利用されています。たとえば、アンテナ〜テレビまで繋げて、電波をテレビに受信させるために使っていたりする、といえば身近なものに感じられるでしょうか。他にも、オーディオ機器用のケーブル、業務用機器ケーブルなどにも使われます。

 さて、今回紹介する漏洩同軸ケーブルとは、通信に使われる同軸ケーブルのバリエーションの1つです。信号を伝達しながら、同時に周りに信号を“漏らす”ことのできるタイプのケーブルです。

 構造的には、先ほど紹介した同軸ケーブルの作りに加えて、「スロット」と呼ばれる細長い穴が一定間隔で設けられています。つまり、ケーブルのところどころに穴があり、そこから電波が漏れ出すのです。漏洩同軸ケーブルを設置すると、そのケーブル沿いに電波を発信したり、受信したりできるのです。

 漏洩同軸ケーブルは、その特徴である「ケーブル沿いにだけ電波を発信することができる」という点を生かして、外部から電波に届きにくい空間に電波を中継する目的で、実際にさまざまな場所で使われています。

 そうした電波が届きにくい場所と言えば、たとえば、トンネルです。ここにはテレビやラジオの電波は届きません。しかし、走りながらカーラジオで放送を聴くことができる高速道路のトンネルなどに出会ったことはないでしょうか。これは、トンネル内に漏洩同軸ケーブルを引き、そこにラジオの放送波を流すことで、トンネル内を放送エリアにしているのです。そこで走る自動車も外と同じように放送を聴けるようにしているのです。

 また鉄道でも漏洩同軸ケーブルは利用されています。新幹線では、運転手が列車を運転する際、中央司令室から列車に指示を出すことがあります。そのために必要な列車無線に漏洩同軸ケーブルが用いられています。漏洩同軸ケーブルから400MHz帯を漏洩させ、線路の周りだけ無線エリアを造り、高速走行している列車、またトンネルを走る列車でも安定して通信ができるようにしているのです。

 この特徴を生かしているのが、地下鉄内の携帯電話エリア化です。

 東京の都営地下鉄では、トンネル内でも通信サービスが利用できるよう設備の準備が進められていて、走っている列車内でも携帯電話に電波が届くようになるよう、漏洩同軸ケーブルを使って整備を進めています。

 2012年3月には都営新宿線の新宿駅〜九段下駅間が、2011年度末から東京メトロ南北線の本駒込〜赤羽岩淵駅間にて地下鉄トンネル内で携帯電話の利用が可能になり、電車の走行中でもメールの送受信やインターネットへの接続が使えるようになる予定です。なお、UQコミュニケーションズのWiMAXサービスでは、駅のホームにアンテナを設置して、トンネルに向かって電波を発射するという手法を採用しています。




(大和 哲)

2012/1/31 12:14