第557回:NOTTV とは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 「NOTTV」(ノッティービー)は、2012年4月1日に開局する放送局です。NTTドコモの子会社に当たるmmbiが運営しています。家庭で観るテレビではなく、スマートフォンなど移動する機器向けの放送サービス「モバキャス」の電波で提供される放送局となります。

 まず「モバキャス」とは、“V-Highマルチメディア放送”“携帯端末向けマルチメディア放送”として検討、導入されたサービスのことです。地上の鉄塔(首都圏なら東京タワー)を用いるテレビ放送がアナログからデジタルに変わり、あわせて用いる電波(VHF帯)が変更されたことを受け、アナログテレビで使ってきた周波数帯を新たな用途で使おう、ということで携帯端末向けマルチメディア放送が検討され、「モバキャス」という名称でサービスが提供されることになりました。

 これまで携帯電話・スマートフォンでは、地上テレビ放送と同じ内容の「ワンセグ」が提供されていますが、モバキャスは主にスマートフォンを対象にした、これまでなかった形態のデジタル放送で、場所や時間を選ばず、スマートフォンの特性を生かした新しいTVの楽しみ方を提供する予定です。ちなみにワンセグという言葉は、サービスや仕組みを表わし、その上でNHKなど各放送局が番組を提供していますが、そのサービスや仕組みを示す言葉が“モバキャス”で、「NOTTV」は放送局の名称、ということになります。

タイムシフト視聴が楽しめる

 「NOTTV」のチャンネル構成は、スポーツ、ドラマ、音楽、アニメ、バラエティなどのジャンルを網羅した総合編成チャンネル「NOTTV1」と「NOTTV2」、それと4月~10月は「TBSニュースバード」、11月~3月は「日テレNEWS24」が提供される24時間のニュース放送を行う「NOTTV NEWS」の3つでスタートします。これらはいずれも映像コンテンツとなりますが、それ以外では、電子書籍、電子雑誌などのデジタルコンテンツが随時配信される予定です。

 モバキャスではは、従来のテレビのような「リアルタイム視聴」のほかに、大きな違いとして「タイムシフト視聴」が楽しめることが特徴に挙げられます。またモバキャスの放送局である「NOTTV」の場合、同じ画面で、インターネット接続でTwitterやFacebookといったソーシャルサービスを利用できるとされており、番組を観ているユーザーが感想を投稿し、他のユーザーと共有することなどもできます。

 対応端末として、4月1日の放送開始時点では、NTTドコモからAndroidタブレットの「MEDIAS TAB N-06D」とAndroidスマートフォンの「AQUOS PHONE SH-06D」が発売されます。

 当初の放送エリアは、関東(東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城)、東海(愛知、三重)、関西(大阪、兵庫、京都、滋賀、奈良)、九州(福岡)、沖縄です。

 「NOTTV」は有料のサービスで、対応機種を持ち、対象エリア内にいる方は、月額サービス利用料420円(税込)で利用可能です。また、加えてプレミアム料金を追加で支払うことで利用できるコンテンツや番組もあります。

「AQUOS PHONE SH-06D」で視聴したところ(デモ映像)「MEDIAS TAB N-06D」で放送画面と番組表、ソーシャルサービスをあわせて表示

33セグメントのモバキャス、そのうち13セグメントを使用

 先述したように、2011年の地上テレビ放送の完全デジタル化(地デジ化)にともなって、これまでアナログ放送で使われていたVHF周波数帯に空きができました。

 この空き周波数帯のうち、VHF-High帯と呼ばれる帯域の一部である、207.5MHz~222MHzまでの帯域を使って、携帯電話向けなどにコンテンツや通信と放送を連携させたサービスを実現する「携帯マルチメディア放送」の実現が打ち出され、2009年、総務省がこの周波数帯での参入事業者を募集しました。

 これに応募した事業者のうち、最終的に、mmbiがISDB-Tmm方式を使って事業を行うことに決定しました。

 ISDB-Tmmとは、通常のテレビ放送(地上デジタル放送)やワンセグで使われている方式であるISDB-Tを元にした放送方式です。携帯端末向けとなる移動受信特性を備えるとともに、インターネットを含めたメディア間連携、大容量ファイルを効率的に配信する蓄積型放送、といった多様な機能の拡張が施されています。ISDB-Tmmを利用した放送の特徴としては、一斉同報性を利用した大容量コンテンツ伝送と、通信によるライセンス購入、レコメンド、コメント投稿など、パーソナルな双方向コミュニケーションを組み合わせることも可能なことが挙げられます。これは、そのままNOTTVのサービスにも生かされています。

 ISDB-Tmmの伝送方式は、地上デジタルTV放送互換の13セグメント(放送帯域を分割したうちの13個を用いる)形式、ワンセグ互換の1セグメント形式を選べるとのことで、モバキャスでは205.7~222MHzの場合、13セグメント形式2個と、1セグメント方式7個の計33セグメントで使用します。そのうちNOTTVでは、13個のセグメントを利用して放送を行っています。

 ちなみに、リアルタイム放送では、コンテンツはスクランブルがかかった状態で、番組ごとの制御情報も送られ、端末側でスクランブルが解除されます。そのため、規格としては、一番組の視聴ごとに課金するペイパービュー方式、未契約の場合にプレビューだけを見せるといった制御が可能です。

 また、蓄積型放送では、コンテンツファイルは暗号が施された状態で放送され、受信機はコンテンツの視聴・利用時に、復号鍵とコンテンツの利用条件を含むライセンスにより、コンテンツの利用を制御するのとあわせて視聴できる状態に戻す(復号化)を実現できます。

 このほかNOTTVでは、大規模災害などが発生した際に、番組(リアルタイム)とコンテンツそれぞれの強みを活かし、さまざまな情報の配信も想定しています。




(大和 哲)

2012/3/27 16:32