第562回:コンプガチャ とは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 「ガチャ」とは、アバターやゲームのアイテムを出現させる仕組みの1つです。実際に店頭などに置かれているカプセルトイ販売機の「ガチャガチャ」「ガチャポン」などと呼ばれる販売機をイメージした仕組みで、ランダムにアイテムが出現します。そして、ガチャガチャと同じく、ユーザーが欲しがるようなレア(希少)なアイテムが入手できる確率は低く抑えられている、とされ、その設定がユーザーの関心を煽ります。

 今回紹介する「コンプガチャ」も、アバターやゲームでアイテムを出現させる方法の1つを示す言葉で、「ガチャ」に、ある手法を組み合わせたものです。その手法とは、ユーザーがあるルールやテーマに従ったアイテムを全て集める、つまりコンプリートすると、レアアイテムを手に入れることができる、という構成です。

 携帯電話やスマートフォンで遊べるソーシャルゲームでは、この仕組みを使っているゲームが多く提供されています。たとえば、グリーの「探検ドリランド」「聖戦ケルベロス」「AKBステージファイター」「ドラゴンコレクション」、mobageの「アイドルマスターシンデレラガールズ」「キン肉マン超人タッグオールスターズ」「ワンピースグランドコレクション」など数多くのゲームで、この仕組みが導入されています。

「ガチャ」に「コンプリート」の概念を加え、より高額課金に

 アバターや、ソーシャルゲームでは、他のユーザーよりもレアなアイテムを装備することで、ユーザー同士の戦闘に勝利しやすくなったり、優越感を得られるようになっています。ゲーム中のアイテムには「レアアイテム」「スーパーレアアイテム」「期間限定レアアイテム」など、希少価値をさらに高めたアイテムが定期的に追加されていますが、これはユーザーのガチャへの関心を高める効果があると言えます。

 ゲームによっては「ガチャ1日1回無料」というものもありますが、それ以上利用したい場合、あるいはレアアイテムを入手したい場合は、1回300円程度、あるいは1000円単位、10回3000円相当のゲーム内通貨など、課金することで、より多く利用できるようになっています。

 先に述べた通り、レアアイテムは低い確率でしか登場しない、とされており、プレイヤーが、より希少価値の高いアイテムを手に入れるためには、課金して何度もガチャをすることになります。この仕組みは、「未成年がガチャを使い高額を請求された」「無料のはずのゲームで、高額のアイテム課金が必要になった」ということが発生し、問題となっています。また、レアアイテムが現金で売り買いされていることも問題の1つになっています。

 コンプガチャは、このレアアイテムの上にさらにスーパーレアなど、より希少性の高い上位アイテムを作り出す方法を加えたもので、さらにユーザーの支出を煽る手法となっています。

 たとえば、あるアニメのキャラクターが登場するケータイカードゲームがあるとしましょう。スーパーレアなカードを入手するには、「制服姿」のキャラ「A」「B」「C」「D」「E」を揃える、という条件がついています。このゲームは10回3000円のガチャがあり、これで10枚の電子的なカードがもらえます。しかし、出てくるカードがみな私服で、制服姿のキャラは出なかったり、あるいは出ても10枚に1枚程度だったり、さらにはせっかく出たレアカードが既に持っているカードと同じだったりします。こうして、なかなか「A」~「E」までの全種類を揃えることはできないのです。

 このように高額課金になりがちな「コンプガチャ」に対し、プレイヤーの心理としては、「コンプリートするためには、想像以上にお金がかかる」と気づいたときには、いくつかレアを持っていて、引くに引けなくなっていた、というようなものであるようです。

 なお、リアルの商品では、このコンプガチャのような「ランダムに出てくる特定のアイテムを組み合わせることで、他の景品を入手できるくじ」というような商品は、「絵合わせ」「カード合わせ」といって景品表示法で禁止されています。なお、消費者庁では、2012年5月7日時点では、「コンプガチャ」に関して検討が始まった段階であり、中止要請や措置命令などは何も決定していない、としています。




(大和 哲)

2012/5/8 06:00