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第579回:指定電気通信設備 とは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 「指定電気通信設備」とは、通信事業者の設備のうち、他社にも開放することが義務付けられる設備のことです。

 電気通信事業法では、通信事業者が一定のシェアを保有すると、他社との接続交渉を行う際に優位な立場にあると見なされます。そのため、他社に開放すべき“指定電気通信設備”を保有する者と指定され、その設備を複数の競合他社が平等に使えるよう、規制されるようになります。

 法律上、固定電話で一定以上のシェア(50%)を持つ事業者は「第一種指定電気通信設備」の保有者に指定されます。また、携帯電話で一定以上のシェアを持つ事業者は「第二種指定電気通信設備」の保有者、ということになります。

 先日、9月4日のニュースで、総務省は、携帯電話事業者に対する規制の1つである“第二種指定電気通信設備”の基準を6月に改正したことを受け、新たにソフトバンクモバイルを第二種事業者に追加する案を示し、意見募集を開始したことが報じられました。

 これまで第二種の事業者に指定されていたのは、シェア25%以上を持つ事業者となっていました。そのため、NTTドコモやau(KDDIと沖縄セルラー)が規制対象となっていました。しかし、この基準が2012年6月に改正され、シェア10%以上の事業者が第二種指定電気通信設備の対象となることになりました。この改正を受け、ソフトバンクモバイルを第二種指定通信設備の事業者に追加する方針が示されたのです。今回の意見募集は、この「ソフトバンクモバイルを追加する」という案に対して行われることになります。

 25%から10%に基準が変更された背景には、MVNOと呼ばれる通信事業者の存在があります。ドコモやau、ソフトバンクモバイルといった事業者は、自ら日本各地に鉄塔を建てて、基地局を展開し、自前の設備を持つ事業者です。こうした自前の設備を持つ事業者は“MNO”(Mobile Network Operator)と呼ばれるのに対して、設備を他社から借り受けたり、他社のネットワークに接続したりしてサービスを提供する事業者は“MVNO”(Mobile Virtual Network Operator、仮想移動体通信事業者)と呼ばれます。

 総務省では、もともと第二種指定電気通信設備という制度が立ち上がった時点と比べ、MVNOの果たす役割の重要性が高くなっており、さらに携帯電話事業には新規参入が難しくMVNOの事業環境をさらに整備することが必要としています。つまり第二種指定電気通信設備という制度は、MNOとMVNOが交渉する際に、MNOの行動をある程度規制し、設備をオープンにする、といった方向になったのです。

 シェア25%という基準は、EUでも25%という基準を示していたこと、あるいは独占禁止法での考え方(企業合併後のシェアが25%以下だと“競争を実質的に制限するとは通常考えられない”とされている)などが理由になっていました。しかし現在の携帯電話業界の状況からすると、25%という基準では、交渉上優位になれる事業者が規制対象にできないことなどから、改正されることになったのです。

接続約款の届出など規制の対象に

 「第二種指定電気通信設備を所有する」と指定された事業者は、他社(通信事業者)が設備を利用するときの契約条件や料金が記された「接続約款」などを総務大臣に届け出て、さらに公表することが義務付けられます。

 また、接続料の算定も総務省が示したガイドラインに則ることになります。指定電気通信設備については料金の計算方法も決められ、収支状況の公開も義務付けられ、原価を大きく上回るような料金の設定はできなくなります。

 もし、これまで相互接続の際に、原価を大きく上回るような料金を設定していたとしたら、他の事業者は、その接続約款に対して、改善すべきと思われる点に関して意見書を提出することができ、接続約款によって規定された接続料が適正なものではないと総務省によって判断された場合には、その変更を命じられることもあります。

 ここまで説明してきたように、指定電気通信設備を持つと、規制がかかることになります。これは、「ドミナント規制」とも呼ばれるのですが、民間企業の所有物である電気通信設備に対して、このような厳しい規制が課せられるのは、特定の企業によって市場が支配されることで、競争が正常に行われなくなることを防ぐためです。

 携帯電話の場合、たとえば不公正な競争のひとつとして、他事業者ネットワークやサービスを利用した場合に、事業者間で支払われる料金「アクセスチャージ」(接続料)を不当に高くする、というような可能性が挙げられます。たとえば、ドコモの携帯電話からソフトバンクの携帯電話に電話をかけた場合、携帯電話のユーザーは、ドコモに通話料を支払います。しかし、通話するためには、途中からソフトバンクの回線を利用しています。そこで、NTTドコモは、ソフトバンクモバイルに接続料を支払うのです。

 なお、今回、新たな第二種指定電気通信設備の事業者に追加される見込みのソフトバンクモバイルの接続料については、直近の2年間、つまり2010年度および2011年度は、第二種指定電気通信設備の事業者と同じく、総務省が示したガイドラインに沿った算出方法となっています。




(大和 哲)

2012/9/11 12:28