第588回:SoftBank 4G/4G LTE とは

大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我 ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連の Q&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


 今回紹介する「SoftBank 4G」「SoftBank 4G LTE」は、ソフトバンクモバイルが提供する高速データ通信の名称で、似たような名称ですが、対応機種も理論上の最高通信スピードも異なる、まったく別のサービスです。

 4Gという名称は、「第4世代(4th Generation)」のことで、携帯電話やデータ通信といった、移動体通信規格の4世代目にあたる、という意味合いです。「SoftBank 4G」の「SoftBank 4G LTE」は異なる技術が用いられており、どちらもかつては「4G」とは呼ばれていませんでした。しかし国際電気通信連合(ITU)が、「第3.5世代移動通信システム以上の技術に対しても4Gの呼称を認める」という声明を発表しており、ソフトバンクモバイルでは、サービス名称に「4G」を付けています。

 それでは、「SoftBank 4G」「SoftBank 4G LTE」の2つのサービスは、どのような違いがあるのでしょうか。今回は技術面に絞って、それぞれの特徴を紹介しましょう。

AXGP方式の「SoftBank 4G」

 「SoftBank 4G」は、ソフトバンクモバイルが提供している高速通信サービスの1つです。その中身は、ソフトバンクグループのWireless City Planning(WCP)という事業者が提供する「AXGP方式」のネットワークです。ソフトバンクモバイルがMVNO(仮想移動体通信事業者)として、WCPから回線を借り受けて、サービスを提供しています。

 「AXGP」とは、モバイルブロードバンド通信の規格の1つです。下り最大110Mbps、上り最大15Mbps(ベストエフォート)を誇り、TD-LTEと互換性がある通信方式です。特徴としては、通信が高速であること、それに低遅延通信であること、そしてマイクロセルが挙げられます。

 もともとはウィルコムが開発した次世代通信規格「XGP」の一部を変更、高度化したもので、その名称は“高度化XGP”を意味する「Advanced eXtended Global Platform」を略したものです。ウィルコムの破綻後、ソフトバンクグループのWCPがAXGP事業を継承しています。WCPは、いわゆるMNO、つまり基地局などのインフラを整える通信事業者となる一方、自社でインフラを持たないMVNO(仮想移動体通信事業者)に向けて、サービスを提供する事業者です。

来春発売の「AQUOS PHONE Xx」はAndroid 4.1搭載でSoftBank 4G搭載スマートフォン

 2012年11月現在、WCPからMVNOとして回線を借り受けているのはソフトバンクモバイルとTOKAIコミュニケーションズです。通信エリアとしては、2012年度末時点で、全国政令指定都市人口カバー率100%を目標に対応エリアを拡大しています

 ソフトバンクモバイルから発売される2012年冬~2013年春モデルのAndroidスマートフォンで、モトローラ製の「MOTOROLA RAZR M 201M」や、シャープ製の「AQUOS PHONE Xx 203SH」、富士通製の「ARROWS A 201F」、京セラ製の「HONEY BEE 201K」などが「SoftBank 4G」対応機種になります。

 また、モバイルルーターとしては同じくソフトバンクモバイルから、「SoftBank 102HW」「SoftBank102Z」などがこのSoftBank 4Gに対応しています。

 いずれも、「SoftBank 4G」と、これまで整備されてきた3Gのネットワークに対応しており、4Gエリアの外でもULTRA SPEED(DC-HSDPA、HSPA+を採用したサービス)で下り最大42Mbpsの通信を続けられます。

iPhone 5で利用できる「SoftBank 4G LTE」

SoftBank 4G LTE対応のiPhone 5

 一方の「SoftBank 4G LTE」は2012年9月からスタートした新サービスの名称です。技術的には、いわゆる「LTE方式」と呼ばれる規格が用いられています。

 先に紹介した「SoftBank 4G」は、TD-LTEと互換性のあるAXGP方式でしたが、「SoftBank 4G LTE」の“LTE”は、FDD-LTEと呼ばれる方式です。これは、上りと下りで、別々の周波数を使うタイプです。NTTドコモやauのLTEサービスも、FDDタイプになります。

 一方、「TD-LTE」は、時分割多重(Time Division Duplex)、つまり「今は上り通信、次の時間は下り通信」と1つの周波数を時間で区切って使い分けるタイプです。

 そのため、「SoftBank 4G」と「SoftBank 4G LTE」は別の仕組みということになります。なお、「SoftBank 4G LTE」は2GHz帯を使ったサービスです。

 「SoftBank 4G LTE」も高速な通信サービスで、一部地域で下り最大75Mbps、多くの地域では下り最大37.5Mbpsの通信スピードとなります。

 また、通信エリアとしては、SoftBank 4G LTEは2012年度末に全国実人口カバー率91%に向けて、対応エリアを順次拡大中である、とソフトバンクモバイルではしています。

 ちなみに対応機種は、2012年11月現在ではiPhone5だけです。近日発売と見られるiPad(第4世代)、iPad miniのLTE対応版も「SoftBank 4G LTE」に対応します。なお、第3世代の「iPad」のLTE版は、周波数の違いから、「SoftBank 4G LTE」は利用できません。




(大和 哲)

2012/11/13 12:55