ケータイ用語の基礎知識

第613回:フルセグとは

 「フルセグ」とは、いわゆる地上デジタルテレビ放送を示す言葉で、“フルセグメント”の略です。

 ソフトバンクモバイルから5月7日に発表された新機種「AQUOS PHONE Xx 206SH」「ARROWS A 202F」の2機種がフルセグ受信に対応しており、ワンセグに比べて大幅に高画質な映像でテレビを楽しめます。

セグメントをフルに利用できる「フルセグ」対応機

 フルセグの「セグメント」とは、“区切り”を意味する英語“segment”のことです。現在のテレビ放送では、放送波を13個のセグメントに分けて、画像や音声を一定のデータ量ごとに分割しています。

 このうち12セグメントを利用して放送を行っているのが、地上デジタルテレビ放送、いわゆる地デジです。一方、携帯電話などの移動通信機器に対する方式であるワンセグは、13セグメントのうち、1セグメントのみを使って放送しています。

 つまり「フルセグ」とは、複数のセグメントに分割された放送波を“フルに利用できる”という意味で、“ワンセグとの対比”で使われる用語です。

 ちなみに「ワンセグ」は、デジタル放送推進協会が用いている言葉でもありますが、同協会のサイトでは、「フルセグ」という単語は特に用いられていません。しかし、ここ数年、自動車用の車載TVチューナーなど、これまでワンセグ対応となることが多かった機器で、「ワンセグよりも高画質なテレビ放送が視聴できる」という意味合いで用いられてきました。

 文脈によって「ワンセグではなく12セグメントの地デジが視聴できる」という意味の場合と、「ワンセグが視聴でき、加えて12セグメントの放送も視聴できる(計13セグメント受信可能)」という意味の場合があります。

対応機器で利用できるサービスの違い

 ワンセグとフルセグでは、クオリティやサービスの面において、さまざまな違いがあります。

 まず画質については、ワンセグが320×240ドット(一部で320×180ドット)のQVGA画質、15fpsという画質であるのに対し、フルセグ、つまり地デジでは1440×1080ドット(一部は1920×1080ドット)、30fpsというハイビジョン画質です。

 データ放送の画面表示にも規定が異なっていて、たとえば携帯電話でワンセグを観る場合、番組(動画)部分とデータ部分は分割して表示され、通信経由で取得したコンテンツと、放送で取得したコンテンツを同時に表示しないようになっています。一方、地デジは番組の上にコンテンツが重なる用に表示されることがあります。

 またワンセグ、フルセグでは受信するための電波の感度にも違いがあります。簡単にいうと、フルセグ対応機器で地デジを観るためには、ある程度、放送局からの電波が良いコンディションで届く必要があります。つまり、フルセグ用の電波の感度が悪ければワンセグは見られるが、地デジは見られないという状況もあり得ます。たとえばフルセグ対応のスマートフォンを屋内で使う場合では、外付けアンテナを用意する、といった対策が必要となるでしょう。

 ちなみに、ワンセグとフルセグでは、著作権管理にも違いがあります。ワンセグでは伝送上での暗号化処理は行われていませんが、フルセグではB-CAS方式または、「コンテンツ権利保護専用方式」を利用して暗号化処理が行われています。「コンテンツ権利保護専用方式」はソフトウェアでスクランブルの解除を行う方式で、従来のようなB-CASカードを使いません。これは、B-CASカードを入れるスペースのなかった携帯電話でも、フルセグの受信が可能となった要因の1つと言えるでしょう。