ケータイ用語の基礎知識

第614回:F値 とは

 「F値」とは、“撮影レンズの明るさ”を示す数値です。主としてスチルカメラ、ムービーカメラなど画像を撮影するカメラに使われる用語です。F値の“F”は、英語で「焦点の」を意味するfocalから来ています。

 F値はレンズを通って撮像素子上に映る像の明るさを示していて、F1.4、F2、F3.5、F4、F5.6、F8、F11、F16、F22、F32のように、「F+数値」で表わされます。絞り値、Fナンバーと呼ばれることもあります。レンズを選ぶときの基準の一つにもなる数値です。

 基本的にカメラ用語ではありますが、携帯電話関係では、この5月に発表されたスマートフォンで、ソフトバンクの「AQUOS PHONE Xx 206SH」、ドコモの「AQUOS PHONE ZETA SH-06E」がF値が1.9(F1.9)という明るいレンズを搭載しており、暗いところでの撮影にも強いことがアピールされています。また、auの「HTC J ISW13HT」「HTC J butterfly」もF2.0と明るいレンズを使ったカメラを搭載しています。

カタログに描かれるのは「開放F値」

 F値には、そのレンズで絞りを目いっぱい開いた状態の明るさ、つまり、レンズの性能を表す「開放F値」と、撮影時にカメラの絞りでどれだけ光量を絞ったかを表す「絞りF値」とがあります。

 カタログスペックとして記載されている「F値」は、「開放F値」の方です。この数値が小さいほど集光できる光量が大きくなり、撮影露出に必要な時間を少なくできる「明るい」レンズです。

 F値が小さい、つまり明るいレンズだとどんな利点があるのかと言うと、暗い場所で撮影しやすくなるほか、同じ明るさであれば暗いレンズよりも高速にシャッターを切ることができます。

 暗いレンズでもシャッター速度を落とせば撮影はできます。しかし、動いている被写体を撮影しようとするとブレてしまいます。

ちなみに、F値は1.4倍されるごとに光を集める面積、つまり明るさは半分になります。一般的に、携帯電話のカメラのレンズはF2.4程度が普通で、たとえば「iPhone 5」もF2.4です。最近のコンパクトデジカメはF2.0レンズ搭載やF1.9レンズ搭載と謳われたカメラがよく登場していますが、「AQUOS PHONE」のF1.9という数値は一般的なコンパクトデジカメなどと比べても引けをとらない数字です。

 ちなみに、一眼カメラ用のレンズなどでは「18-200mm F3.5-6.3」とF値が2つ書かれている場合があります。これは、「18~200mmで焦点距離を変えられるズームレンズです。F値は3.5~6.3で可変です」という意味を表わしています。つまり、18mmという焦点距離では開放F値3.5で最も明るく、望遠して200mmになるに従って、徐々にF6.3まで暗くなる、ということになります。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)