ケータイ用語の基礎知識

第619回:OTT とは

 OTTとは、インターネット上で提供されるWebサイト、動画や音声などのコンテンツやサービス、あるいはそれらを提供する事業者を指す言葉で、そうした事業者の中でも、通信事業者やインターネットサービスプロバイダとは関わりのない企業が「OTT」と呼ばれます。

 この言葉は、英語で“目標や上限を超える”という意味の「Over The Top」の略語からきています。さまざまなコンテンツやサービスを、通信事業者が提供する回線などを経由して“最も上の階層で提供されるもの”とみなしているわけです。

 OTTとされるサービスには、たとえば、映像配信サイトのYouTube、ボイスチャット・メッセンジャーのSkypeやLINEなどが挙げられます。

 OTTという言葉は、もともとパソコン向けのインターネットサービスの形態を指す言葉として生まれましたが、スマートフォンが普及した現在、モバイル向けのOTTも多くあります。先述したYouTube、Skypeはスマートフォン向けサービスにもOTTサービスを提供しています。またLINEは最初からモバイル向けサービスとして提供されています。

 OTTによるサービスは、さまざまなデバイスで利用できるという点が特徴で、パソコンやスマートフォンなどから利用できるという、マルチプラットフォームで展開するケースが多いことが挙げられるでしょう。YouTubeはスマートフォン、パソコンだけではなく、ネット対応のテレビでも視聴できますし、Skypeもスマートフォン、パソコンのほか、専用機器などを使ってテレビで利用することもできます。

OTTと土管化

 OTTという言葉は、2012年頃から急速に通信関連のニュースで利用されることが増えてきたようです。そうした中で、OTTと対をなすのがいわゆる「土管化」という言葉です。英語では「Dumb pipe」(ダムパイプ)と言われます。

 NTTドコモのiモードのように、これまでは基盤やインフラ〜コンテンツまで、全体が通信事業者のコントロール下にありました。しかし、パソコン向けサービス、あるいはスマートフォンでは上層部分、つまりコンテンツ部分はOTT事業者が占めており、通信事業者はインフラの部分のみを扱う存在になってしまう――これが「土管化」という言葉が意味するところです。

 こうした“OTTの隆盛”に至ったのは、なぜでしょうか。その1つの要因はIP、つまりインターネットプロトコルで、さまざまなサービスを提供できるようになったことが挙げられます。IP型のコンテンツ発信・受信は、プロトコルにさえ則れば自由に展開できますから、マルチプラットフォーム化することも容易です。通信速度の高速化とインターネットの普及で、さまざまなサービスが開発され、パソコンで利用できるようになっていき、それをモバイルでも使いたいというニーズの高まりも、スマートフォンでのOTTサービスの普及に繋がっていったと言えます。

事業者自身によるOTTサービスも……

 一方、土管化が進むと、携帯電話事業者をはじめとする通信事業者にとっては収入が減るという大きな問題があります。

 たとえばコンテンツ(アプリ)の販売という側面で見てみると、これまでのフィーチャーフォンでは、サービスに対して月ごとの課金がかかるという形が一般的でした。つまり着メロサイトを利用するには月額315円かかり、そのうち一部が手数料として携帯電話事業者の収入になっていました。アプリを提供する場所は、今や、OTT事業者(アップルやグーグル)のマーケットが大きな存在になっています。

 こうした状況に対して、通信事業者自体もマルチプラットフォーム対応のサービスなどをを始める例も出てきています。その一例としてはドコモの「dビデオ」が挙げられるでしょう。「dビデオ」は、エイベックス通信放送が運営している、ドコモのスマートフォン向けオンデマンドビデオ配信で、マルチデバイスに対応しています。ドコモのスマートフォンやタブレット端末だけでなく、パソコンや、スティック型端末「dstick」を挿したテレビと、さまざまなデバイスで映像を視聴できます。

 こうした通信事業者のサービスでは、現在、その回線を使うユーザーだけが利用できる形になっています。たとえばdビデオも、ドコモの携帯電話に紐付けられている「docomo ID」が必要です。他社では、auでも「au ID」でログインして利用するサービスを用意しています。

 将来的に、「docomo ID」「au ID」といったIDがあれば、他社ユーザーでもサービスが利用できる、という環境が広まるかもしれません。たとえばドコモの「dゲーム」はauやソフトバンクのユーザーでも利用できます。現状はまだ、他社との差別化のためか、自社ユーザーでのみ利用できるという形が多い、通信事業者によるOTT的サービスですが、今後は、もっとオープンになっていくかもしれません。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)