ケータイ用語の基礎知識

第626回:スーパーWi-Fiとは

 「スーパーWi-Fi」とは、米国の連邦通信委員会(FCC)によって2010年に認可された無線データ通信の方式です。2013年8月現在、米国ノースカロライナ州のWilmingtonという街でサービスが行われているほか、ウエストバージニア大学でのキャンパスネットワークなどとしても利用されています。

 スーパーWi-Fiの特徴は、これまでのWi-Fiと比較して非常に長い距離での通信が可能なことが挙げられます。これは、VHF・UHF帯の50〜700MHz帯を使い、最大数十kmの距離を無線LANで接続することが実現できます。既にサービスが行われている街、キャンパスでは、最大23Mbpsの通信速度で、最大数km程度までの距離で接続・利用が可能となっています。

 また、2.4GHzや5GHzといった高い周波数帯を使うWi-Fiと異なり、障害物があっても回り込む修正のある低い周波数帯の電波を使うこともあって、つながりやすい無線LANとなっています。

 このスーパーWi-Fiは、技術的には、Wi-Fi アライアンスの「Wi-Fi」、IEEE802.11とは直接のつながりはなく、IEEE802.22無線規格を利用するものなのですが、無線LAN接続できる技術であることからスーパーWi-Fiという名前がつけられています。

ホワイトスペースの有効活用法の一つ

 このスーパーWi-Fiは、米国での「ホワイトスペース」の有効活用方法の一つの候補として注目されています。

 50〜700MHz帯というと、米国でもテレビ放送や通信などに割り当てられている周波数帯ですが、ここには、いわゆるホワイトスペースが存在します。ホワイトスペースとは、割り当ててはいるが実際には使われていない周波数帯のことです。

 通常、無線通信というのは、無線同士がお互いに干渉を避けるために一定の間隔(ガードバンド)を空けて周波数帯が割り振られています。このため、割り当てられた周波数帯が時間的、場所的に100%利用されているわけではなく、無線システムによっては非常に低効率で配置されている場合もあります。

 一般的には、割り当てる電波周波数帯の変更には、大変な手間がかかります。たとえば、携帯電話用の割り当てられている電波の周波数帯を変えるとすると、基地局からユーザーが使っている携帯電話まで全てを新しい周波数帯用に変えなければなりません。また、テレビの場合も、先の地上テレビデジタル化の際にあったように、放送局から受信するテレビ受像機までを変えなければならず、これも時間がかかることがわかるでしょう。

 このため、技術的手段によって、既に割り当てられている周波数帯のホワイトスペースを、使っている機器への干渉を抑えつつ、より有効に使うというやり方が注目を集めているのです。

 米国内でもホワイトスペースの利用方法に関しては連邦通信委員会、GoogleやマイクロソフトといったIT業界、それに携帯電話事業者などさまざまな業界や団体がさまざまな使い方を提案していますが、このスーパーWi-Fiはそのうちの一つといえます。

 先述したようにスーパーWi-Fiは、電波のホワイトスペースを活用し、長距離である程度高速な通信速度を実現した無線LANの規格です。米国内でサービスが開始されている地域では、無線免許など無しで、この無線通信を使うことができています。

 免許なしで誰でも使えるのに、どのようにして混信を防ぐかですが、スーパーWi-Fiの場合、ジオロケーションデータベースを利用しています。ジオロケーションデータベースとは、簡単に言えば現在どの地域にいるかによって、どの周波数帯を使っているかが記載されているデータベースのことです。

 この地域では、この周波数帯が利用が可能であるというようなホワイトスペースを利用するためのデータベースがあり、これに従って電波を出すことで、元々この周波数帯に割り当てられていた機器への影響を防いでいるのです。

 なお、日本では、ホワイトスペースの活用は議論・実験が行われていますが、多くがエリアワンセグなどに使われています。また、米国のようにホワイトスペース上で、ほかの機器への混信がなければ免許なしで使えるというような制度もないため、スーパーWi-Fiがもし利用が可能になるとしても、そこまでには多くのクリアしなければならない課題があると言えます。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)