ケータイ用語の基礎知識

第627回:トラフィック とは

 通信関連における「トラフィック」とは、回線上を流れる通信、通信要求といったデータ、あるいは、流れるデータの“量”を指す言葉です。人や車、船などの交通・往来を意味する英単語“Traffic”から来ています。

 2台の携帯電話が通話をして、そのときのデータをトラフィックと呼ぶことはあまりありません。トラフィックという言葉は、ネットワーク(網)全体、または一部において、さまざまな通信が行き交う状態での通信の状態や通信量というニュアンスで使われるのが普通です。

 「量」を示す言葉として、トラフィックは“多い”“少ない”という言いまわしになります。たとえば「時間当たりのアクセス数が大きい」「転送情報量が多い/少ない」といった意味で使われます。

スマートフォンで爆発的に増大

 最近は、通信をよく利用するスマートフォンの普及により、携帯電話のネットワークにおけるトラフィックが急激に増大し続けています。このため、“スマートフォンによるトラフィック爆発”などと言われることがあります。

 トラフィックが増大すると、通信が滞りやすくなります。自動車の交通にたとえると、車が爆発的に増えるとさまざまな場所で渋滞が発生して流れが悪くなります。スマートフォンの場合も、通信しようとしてもデータが流れていかない、流れてこないという状態に陥ることがあります。

 iモード時代から、通信量は徐々に増加していましたが、スマートフォンは、さまざまなアプリが同時に動作して通信します。ユーザーが操作していなくても通信することがあります。そのため、iモード端末などフィーチャーフォンと比べて、格段に通信する量が多いのです。スマートフォンが急激に増えて、さまざまなアプリが利用されることになって、トラフィックが爆発的に増加し、通信が滞りやすくなってきています。

 たとえば、大都市の繁華街にある駅で、通勤通学の時間帯にスマートフォンでTwitterを利用しようとしても、なかなか表示されない、というような状況に出会うことがあります。

 そのため、携帯電話各社では、基地局を増やす、あるいは携帯電話用の電波(周波数帯域)を増やしたりして、スムーズに通信携帯電話・スマートフォンからのトラフィックが輻輳しないように工夫しています。

 都市部で基地局を増やすには、基地局1カ所あたりがカバーするエリアの面積を狭くして、小規模な基地局を多く設置する、といった手法が採用されています。都心の街中などでは、ピコセルと呼ばれる、カバーエリアの小さい基地局を設置することがあります。

 増え続けるトラフィックを処理するため、各社が進める対策の1つは、“トラフィックのオフロード”です。以前、本コーナーでも紹介しましたが、オフロードとは、トラフィックという負荷を分散することです。スマートフォンの場合、一般的には、携帯電話のネットワークだけではなく、街中の公衆無線LANや、自宅の固定回線などを利用して通信することで、分散しています。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)