ケータイ用語の基礎知識

第645回:SlimPort とは

 「SlimPort」(スリムポート)とは、スマートフォンやタブレット型端末といったモバイルデバイスのオーディオ・ビデオ用インターフェイスで、これらの機器から外部ディスプレイや高解像度テレビ(HDTV)への接続を可能にします。米国のAnalogix Semiconductorの登録商標です。

 世界で最初にSlimPortを搭載した市販のデバイスは、グーグルのスマートフォン「Nexus 4」です。その後、タブレットの「Nexus 7(2013)」、スマートフォンの「Nexus 5」にも搭載されました。また、富士通のWindows 8タブレット「ARROWS Tab Wi-Fi(QH55/J)」でも採用されています。

Nexus 7(2013)のmicroUSB/Slimportはボディ下部に

 SlimPortの形状は、microUSBコネクターと同じ形です。このコネクターで映像データの転送だけでなく、AV出力、充電などを1つの端子で行うことができるため、MicroHDMIのように別途コネクターを追加する必要がなく、モバイル機器の設計上、必要なパーツの面積を小さくできることが特徴です。

 SlimPortに対応したNexus 5やNexus 7(2013)では、外部接続ポートがUSBコネクターしかありませんが、これにSlimport対応ケーブルを接続することで、テレビや外部ディスプレイに映像を出力できるのです。

 SlimPortからはHDMI、VGA、DVI、DisplayPortへの変換が可能で、対応変換ケーブルが発売されています。HDMIポートが搭載されていない古めのプロジェクターやディスプレイへ出力できることも、SlimPortの魅力であるといえるでしょう。

 ちなみに、SlimPortの最大データ伝送速度は20.16Gbpsで、HDMIの10.2Gbpsを大きく上回ることも特徴のひとつであるといえます。

DisplayPort互換のあるSlimPort

 SlimPortは、「Mobility DisplayPort」または「MyDP」と呼ばれることもあります。正確には、パソコンやワークステーションなどのビデオ周辺機器に関する標準化団体「VESA」が2012年6月に策定した携帯端末向けのデジタル映像伝送規格が「MyDP」で、これに準拠した米国のAnalogix Semiconductor製品の商標が「SlimPort」になります。

 SlimPortでは、外部ディスプレイに非圧縮で最大1080/60Hzの映像、3D映像を、音声は192kHzの7.1chのHDオーディオまでを転送できます。

 ちなみに、一般的には、SlimPortからHDMIへの変換コネクターなどには、充電用給電コネクターもあり、こちらから給電することで、接続しているスマートフォン、タブレットへの充電も可能になっています。

 HDCPによるコンテンツのプロテクトも可能です。HDCPとは、映像データを経路上で暗号化し、傍受などによってコンテンツが不正にコピーされるのを防ぐデジタル著作保護技術のひとつで、HDMIなどでも採用されている方式です。

競合はMHLやmicroHDMI

 SlimPortと同じような使い方ができる規格、つまり競合にあたるものとしては、MHLやmicroHDMIなどが挙げられます。

 MHLは、米国のSilicon Imageという企業が開発した、モバイルデバイスから映像データを高速転送するインターフェイスの規格で、SlimPortと同様に、microUSBコネクターを利用して映像データを送受信できます。

 Slimportは、MHLとは互換性がない別の規格です。ですので、コネクターの形状は同じでも、SlimPortからHDMIへの変換ケーブルはMHL対応機種では利用できませんし、逆にMHL-HDMI変換ケーブルはSlimPort搭載機種では使用できません。

 なお、MHLではバージョン1.0では画像データを送るためのアダプタに外部電源を必要としましたが、2.0以降ではSlimPort同様、外部電源は必要なく、USBコネクターから変換アダプタ、そして、HDMIやVGAへのケーブルまでを1本のケーブルでまかなうことができるようになりました。

 また、現在テレビなどの入力端子によく使われているHDMIを小型化したのがmicroHDMIです。こちらは、microUSBとは形状が異なるため、別口の端子が必要とされる規格です。microHDMIは全部で19個のピンを必要とし、マルチAVストリームに対応していません、一方、SlimPortはmicroUSBと同じ5ピンでマルチAVストリームにも対応しています。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)