ケータイ用語の基礎知識

第658回:MOOCとは

 MOOCとは、「ムーク」と読み、「大規模な開かれたオンライン学科」を意味する英語「Massive Open Online Courses」の略から来ています。インターネットを使って受講することができる大規模な講義のことです。

 オンラインで、基本的に無料で講義を受けることができ、インターネット環境さえあれば、誰でも大学の講義を受けることができます。講義内容も、物理や化学、純粋数学といったアカデミックなものから、コンピューターや音楽、美術といった身近なものまで多岐に渡っています。

 MOOCのメリットは、講義を受けるために地理的な制約や、時間的な制約を受けないことが挙げられます。講義への参加の仕方には自由度があり、気になる講義の一部だけをつまみ食いで参加したり、途中で辞めることも可能です。

 また、インターネット環境は必須になりますが、講義は基本的に無料なので、学費を支払えない人や大きな負担と感じる人にも学習機会が広がることは、メリットといえるでしょう。ただ、無料といっても講義への参加は表面的なものではなく、オンラインで、本格的に参加者同士のディスカッションを行ったり、課題を提出して、その課題を修了できたことを確かめたりすることもできます(ただし、このような本格的な講義参加や修了証などは有料の場合も一部あります)。

 MOOCは、世界の大学で流行となっており、スタンフォード大学やハーバード大学などの超一流大学をはじめ、世界中の大学の講義が次々と公開されており、これらの講義を受けることで単位を認定するという動きも進んでいます。

 MOOCの代表的なプラットフォームとしては、スタンフォード大学の教授らが創立した「Coursera」、マサチューセッツ工科大学とハーバード大学による「edX」、スタンフォード大学の元教授らが立ち上げた「UDACITY」などが挙げられます。

 Courseraにはスタンフォード、プリンストン、コロンビアといった名門大学が参加しており、MOOCプラットフォームの中でも最も有名なものです。また、Courseraでは、インターネット上のWebサイトから参加できるほか、iPhoneやiPadなどのiOSアプリでも受講が可能です。

「Coursera」のWebサイト

日本語でも受講できる講座も現れ始める

 Coursera、edXともに講義のほぼ100%が英語での講義で、日本人にはハードルの高いものでしたが、ここにきて日本語で受講が可能なMOOCも徐々に出てきています。

 例えば、一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)は、日本初となるMOOC講義の提供を2014年4月に開始しました。

 NTTドコモとNTTナレッジ・スクエアが運営する「gacco(ガッコ)」と、放送大学が運営する「OUJ MOOC」がプラットフォームとして採用されており、受講完了後、一定の条件を満たせば修了証が交付されます。

 gaccoは、この4月からオープンし、ネットで受講しやすいよう「10分程度にまとめられた動画」、「理解度を確認するクイズ」、「他の受講生徒との交流を深めるディスカッション用掲示板」、「生徒の相互採点によるレポート」、「基準を満たした際に受け取ることができる修了証」といった特徴を持つMOOCです。

 ドコモが提供するサービスだけあって、スマートフォンやタブレット端末での受講も可能です。

 また、あらかじめMOOCで講義を受けておき、その後実際に学校などで講義を受けたり、ディスカッションなどを行えたりする「反転学習」ができるコースもあります。

 OUJ MOOCでは、NPO法人CCC-TIESが開発した「CHiLO(チロ)」というシステムを採用し、学習者のFacebookのタイムラインにビデオや練習問題を実装する電子教科書が定期的に配信されるようになっています。

「gacco」のWebサイト

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)