ケータイ用語の基礎知識

第665回:WiGig とは

これからの規格、家庭内のAV機器などで

 「WiGig」は、60GHz帯という非常に高い周波数帯を利用し、最大7Gbpsという高速通信を実現する無線通信規格です。IEEE802.11adという通信規格をベースにしており、家庭で使われる従来のWi-Fi(IEEE802.11b/g/n/ac)とも親和性の高い規格になります。

WiGigのロゴマーク

 パソコンやスマートフォン、オーディオ機器など、これまで有線で繋がっていたかわりに、無線、つまりWiGigを使ってデータを同期させたり、ディスプレイと繋げたりするといった使い方が想定されています。WiGigはスピードが速く遅延も少ないので、特にディスプレイとの接続については、たとえば4Kや8Kといったこれからの高解像度なディスプレイにも対応しやすいことから、期待されている活用例の1つとなっています。

通信範囲10m、最大7Gbpsの超高速通信規格

 60GHz帯は、グローバルで使用可能、かつ免許不要で、Wi-Fiなどが使っている2.4GHzや5GHz帯に比べて、非常に広い電波を使えることが特徴です。たとえば、日本国内では59〜66GHzの使用が許されています。

 そこで、1チャンネルあたり2.16GHzの周波数帯を使って通信を行うことで通信を高速に行います。この広さは、2.4GHz帯を使ったWi-Fiの約100倍、5GHz帯を使ったWi-Fiの約12.5倍という広さです。WiGigでは、この広いバンド幅を一度に使って、従来よりも高速に通信するのです。

 ただ、高い周波数の電波を使うということにはそれなりのデメリットもあります。というのも電波というのは、周波数が高くなればなるほど、信号が距離などに応じて減衰する度合いが大きくなるうえ、直進性が強く、人の体などに遮られて届きにくくなるという特性があるためです。

 そこでWiGigでは、電波を特定の方向に集中的に照射することで通信品質を向上させる技術「ビームフォーミング」を使うことで、室内などでの近距離で機器間通信を行います。ちなみに無線の通信範囲は約10mまでです。宅内の機器用、あるいは身に着けるような機器での活用を想定した規格と言えます。

 2014年6月現在、このWiGigに対応した製品はまだ出荷されていませんが、ブロードコムやインテルといったチップメーカーがWiGig対応チップセットの出荷を表明しています。近い将来、スマートフォンやタブレット、パソコン、テレビなどで対応製品が出荷されることになるでしょう。

Wi-Fi規格の標準化を行う「Wi-Fi Alliance」が認定プログラム

 以前は、Wireless Gigabit Allianceという団体が「WiGig」の標準化や認定プログラムの策定作業を行っていましたが、2013年3月、無線LAN機器の技術策定などを行う団体「Wi-Fi Alliance」に、このWireless Gigabit Allianceが吸収されました。

Wi-FiとWiGig、両方に対応することを示すロゴ

 もし、この2つの団体が別組織のままでは、Wi-Fiを名乗る機器はWi-Fi Allianceの認証を、WiGig対応製品とするためにはWireless Gigabit Allianceの認証と、それぞれの手続きが必要になり、普及をさまたげてしまうかもしれません。1つの団体になることで、そうした認証を一度に行えるようになりました。

 現在では、Wi-Fi Allianceが、技術の拡張や、認定プログラムの策定作業を引き継いでおり、WiGig機器は、IEEE802.11acなどのWi-Fiとシームレスに連携するように規格の標準化が進められています。2014年以降に登場するWi-Fi関連の無線通信機器の多くは、2.4GHz帯/5GHz帯を使う従来のWi-Fi、そして60GHz帯のWiGigの両方に対応する製品群として登場することが見込まれています。

 このようなWiGig対応製品を使った場合、電波が十分に届く近い距離では通信速度の速いWiGigを使い、もし電波が届きにくくなったら、もうすこし遠くまで届くWi-Fiへシームレスに切り替えて、セッションを切らずに通信できるようになるでしょう。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)