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第670回:Project Tango とは

 「Project Tango」(プロジェクト タンゴ)は、米グーグル(Google)内にある、先端テクノロジーの研究開発部門「ATAP」(Advanced Technology And Projects)が取り組んでいるプロジェクトです。モバイル端末に3Dの空間把握能力を持たせ、活用できるようにすることが目的とされています。

 グーグルでは、大手メーカーであるモトローラを買収した後、中国のLenovoグループにその事業のほとんどを売却しましたが、ATAPは、その際売却せずに手元に残したグループの1つです。

 大学や研究所、ロボット工学やコンピュータビジョンの分野など、世界9カ国にまたがる産業界のパートナーと協力し、研究が進められ、2014年2月にその実体が明らかにされました。

 Project Tangoの最大のインパクトは、モバイルデバイスが、人間の視覚のように、3次元空間を認識できることです。Project Tangoでは、モバイルデバイスに組み込まれた3Dセンサーとカメラによって、モーショントラッキングと同時にデバイスの周囲のスキャンを行って、3次元のマップをリアルタイムに生成させます。これらによりソフトウェア開発者はこれまでになかった3Dアプリケーションを作ることができるようになるでしょう。

 グーグルでは、たとえば、建物内の部屋の形状を把握する、森の中を移動する動物を周りの地形とともに記録する、購入予定の家具が自分の部屋におさまるかどうか確認する、といった応用ができるだろうとしています。

タブレット型の開発キットが今年中には提供開始

 このProject Tangoの開発キットは、いくつかのバージョンがあり、既に提供が開始されているものもあります。

 先に提供されたがスタートしていたのは、5インチサイズのスマートフォンタイプのもので約200台が、提供されました。この先行プロトタイプ開発機は、いわゆるコンペ方式で、どのような応用を考えているか、開発者がグーグルに提示し、それを審査して上位200社に対して提供されました。

 また、6月にはタブレット型開発キットの提供が発表されました。NVIDIAのTegra K1モバイルプロセッサを搭載した7インチタブレットで、4GBのメモリ、128GBのストレージ、1080pのディスプレイ、Android 4.4を搭載し、モーショントラッキングカメラと背面に奥行きを感知するセンサーを搭載しています。タブレットタイプの開発キットは、1024ドル(約10万円)で、希望する開発者に2014年中にも提供される予定です。

 この開発者向けキットでは、言語にJavaあるいはC/C++を、ライブラリとしてUnity Game Engineを使い、標準的なAndroidアプリケーションとしてTango向けアプリを開発できるようになる予定です。また、Tangoアプリに不可欠な位置、方向、深度データを処理するためのAPIも用意される予定になっています。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)