ケータイ用語の基礎知識

第679回:ポータブルSIM とは

 「ポータブルSIM」は、NTTドコモが開発した、小型認証デバイスです。中にSIMカード、そしてBluetooth、NFCを搭載しています。まだプロトタイプですが、ドコモでは今後の商用化を目指して開発を続けています。

 SIMカードが入っていないスマートフォンやタブレットにかざすだけで認証し、モバイルネットワークを利用できるようにして、電話やメールなどといった携帯電話の機能を利用できるようにします。

同じ電話番号をワンタッチで使い回し

 ポータブルとは「持ち運びできる」という意味ですが、このポータブルSIMは、いわば“電話番号を持ち運びできる”デバイスです。

 一般的に、携帯電話やタブレットそれぞれで同じ電話番号を使うためには、携帯電話に入っているSIMカードを抜き差しして、携帯電話からタブレットへSIMカードを移しかえす必要があります。しかし、毎回、携帯電話のスロットやカバーを開けてSIMカードを抜き差しするのは面倒です。何度も繰り返していると、何かの拍子に、破損してしまう恐れもあります。

 この「SIMカードの抜き差し」で電話番号を移動するということと同じことを、ワイヤレスでできるようにするのが、「ポータブルSIM」です。

 ポータブルSIMの場合、SIMカードの入っていないスマートフォン・タブレットにこのポータブルSIMをかざし、Bluetoothによりスマートフォン・タブレットを介して認証を行うことで、SIMカードを抜き差ししなくてもネットワーク接続が行われ、電話やメール等の携帯電話機能を利用することができるようになります。

 たとえば、「ポータブルSIM」をプライベート用のスマートフォン、職場に置いているタブレットなどにかざすことで、1つの携帯電話番号を端末間で切り替えて利用できます。ただし2台同時に、同じ番号を使うことはできません。

 また、「ポータブルSIM」には、SIMカードのセキュリティ領域を利用して、IDやパスワードを保存できるとされています。たとえばショッピングサイトなどを利用する際、ログイン用のID・パスワードを自動的に反映させる、というようなこともできます。

現在はプロトタイプ、さまざまな応用用途も

 2014年現在、このポータブルSIMはプロトタイプで、市販などはされていません。

 現在の大きさは約80×40×5.6mmと、名刺入れサイズとなっていますが、今後、さらなる小型化が進められ、ウェアラブルデバイスなどに搭載する、といったことも検討されるようです。

 対応機器もスマートフォンやタブレットだけでなく、パソコンやテレビ、自動車、音楽プレーヤーなどのさまざまな機器と連携させることで、ドコモでは、ID認証や回線認証を活用して、もっと便利なサービスや商品より便利なサービスや商品を提案したい、としています。

 使い道としてはたとえば、電話番号を個人用IDとしてパソコンにログオンする際のIDカードとして使う、自動車のキーの代わりに使うなど様々な用途が考えられています。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)