ケータイ用語の基礎知識

第680回:Wi-Fi Calling とは

 「Wi-Fi Calling」とは、Wi-Fiを使って通話やSMSの送受信をする機能です。携帯電話の電波が届かなくても、Wi-Fiで接続できれば、普段使っている電話番号を使って通話の発信・着信ができ、SMSもリアルタイムに送受信できます。携帯電話のエリアを、Wi-Fiの電波によってより広げる、といった考え方もできます。

 日本ではWi-Fi経由でネットを見たり、アプリを使ったりEメールを送受信したりできますが、たとえWi-Fiが繋がっていても携帯電話のエリア圏外であっては通話できません。一方、米国ではT-Mobile USがこのサービスを2007年から提供しているほか、同じく米国のSprintが提供していますし、AT&Tが2015年にも提供する方針です。米国以外でも、カナダのRogers、イギリスのEE、Orange UKなどが提供しています。

 Wi-fi Callingに対応する最近の機種ではiPhone6/6 Plus/5s/5cが、最新OSの「iOS 8」で対応しています。また、他のスマートフォンでも、Android、Windows Phoneなどでは、専用アプリを追加する形で利用できるようになっており、たとえば米T-Mobile USの場合、サムスンの「GALAXY Note 4」、LGの「G3」などにアプリをプリインストールし「Wi-Fi Calling対応の携帯電話」として販売しています。

Wi-Fiを携帯電話の電波代わりに

 日本の携帯電話の場合、地下や施設内なども相当数の小型基地局が設置されており、通話できる場合が多いのですが、海外ではこれほど携帯電話の電波に恵まれた環境はありません。

 特に米国でのT-Mobile USなどは、先行しているAT&Tなどと比較してもサービスエリア(カバレッジ)が狭いというのが現状です。しかし、日本とは逆にそのような場所でもWi-Fiのアクセスポイントは設置されていることが多いので、Wi-Fiの電波を使って通話やSMSを使おうという発想で作られたのが、このWi-Fi Callingという機能です。

 Wi-Fi Callingでは、Wi-Fiの繋がっているインターネットを経由して事業者のセキュリティゲートウェイに接続します。そして携帯電話のSIMカードにある情報を使って認証し、携帯電話会社内のシステムへ接続します。

 そのため、「Wi-Fi Calling」を使っていない、一般的な携帯電話、あるいは固定電話にも電話をかけられます。このあたりは通常の電話の使い勝手と変わりません。また、仕組み上、当然ですが、Wi-Fi Callingでの通話の際の電話番号はSIMカードに登録されているものが使われるため、SIMカードを抜いた状態では、通話できません。

 Wi-Fiが使える通話機能というと、たとえばLINEの「LINE電話」のようなサービスがありますが、このWi-Fi Callingは、電話をかけるだけではなく、いつも使っている電話番号で着信することも可能です。

 海外渡航時にも便利なサービスで、ホテルなどWi-Fiでアクセスできる環境であれば国内と同じように電話ができるとされています。技術的には、国内外どちらにいてもWi-Fi接続可能であればWi-Fi Callingでのアクセスは可能なのですが、これを有効にするかどうかは事業者によって違います。

 料金プランは事業者が設定することが可能ですが、T-Mobile USの場合、プリペイド・ポストペイドプランともWi-Fi経由での通話でも特に付加料金などは必要とされておらず、かけ放題プランの場合、国内・海外ともWi-Fi Calling経由の通話はプラン内の料金で済ませることができます。

 なお、日本国内の携帯電話事業者に関しては、Wi-Fi Callingについては、各社とも「対応は未定」となっています。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)