ケータイ用語の基礎知識

第695回:クラウドファンディング とは

 クラウドファンディングとは、実現したいアイデア・プロジェクトなどを掲げる人や団体の資金を、不特定多数の支援者から募る手法のことです。特にインターネットを通じて協力を募ることが多く、ネットが一般的になってきた2000年代以降から一般に知られるようになり、日本では小額の投資型クラウドファンディングが解禁された2014年ごろからよくニュースなどで挙げられる単語になりました。

 クラウドファンディングの“クラウド”とは、英語で群集を意味する「crowd」、そして“ファンディング”は資金調達を意味する「funding」から来ています。

 世界的には、米国で2009年にスタートした「Kickstarter」が最も有名なクラウドファンディングのプラットフォームでしょう。日本国内でも「CAMPFIRE」や「READYFOR?」といったプラットフォームが有名です。こうしたクラウドファンディングプラットフォームは、クラウドランディングで資金を集めたい人と、資金を出す人の間を橋渡す役割をします。

 クラウドファンディングで出資を募るアイデアやプロジェクトにはさまざまなものがあります。たとえばガジェットの製作や、音楽CDや映画の製作・頒布上映、Webサービスの立ち上げなどの資金を募るのが典型的なものです。その一方で科学研究費の調達、社会問題の解決といった目標を持ったものも中にはあります。

 いずれにしても、何かアイデアを実現したりあるいは、プロダクトの製造にこぎつけるまでにまとまったお金が必要であるために、資金調達の手段としてこのクラウドファンディングが利用されるわけです。

 一見するとケータイ用語ではないワードのようですが、ケータイ Watchで紹介したガジェットにも、このクラウドファンディングを利用して資金を募っているもの、あるいは資金を調達してプロダクトが発売されたというものが多くあります。

 最近では、米国で開催されたInternational CES 2015で展示されたアイテムとして、子供向けウェアラブルデバイス「HereO」、音声を認識してスマート家電を操作したりスマートフォンに通知したりできるデバイス「Listnr(リスナー)」、スマートウォッチ「Noteband」などがその例として挙げられます。

クラウドファンディングの3分類

 クラウドファンディングと呼ばれる手法で資金を集めるプラットフォームは数多くありますが、これらは「出資者へのリターンの形態」によって、以下の3つのいずれかにカテゴライズできます。

購入型クラウドファンディング

 受けた資金に応じて、製品そのものやイベント招待などのリターンが用意されるタイプです。先に挙げた「Kickstarter」「CAMPFIRE」などはこのタイプになります。あるガジェットを開発、生産することを目的とするファンディングであれば、プロジェクトが成功し、ガジェットが生産された際にそのガジェットをいち早く手に入れることができる、というようなリターンがあるわけです。

投資型クラウドファンディング

 プロジェクトが成功した場合に、金銭でのリターンがあるというタイプのファンディングです。新興国で小さな事業を始めたい人のためにお金を貸し付けるマイクロファイナンスや、中小企業の支援といったターゲットに対して投資を行い、その利息などからリターンを得ます。投資型クラウドファンディングには「貸付型」「株式型」などがあります。
 貸付型のクラウドファンディングは「ソーシャルレンディング」とも呼ばれます。出資者はプラットフォーム企業にお金を貸し付け、プラットフォーム企業は資金を受けるプロジェクトの審査を行って、お金を貸し付けますが、出資者は個別にプロジェクトに貸し付けることはありません。あくまでプラットフォームへの出資ということになります。日本では「SBIソーシャルレンディング」や「クラウドバンク」などが知られています。一方、株式型クラウドファンディングは、株式を公開していないベンチャー企業が事業を行うための資金調達のためのもので、未公開株を使ってファンディングを行います。日本では2014年に法改正が行われ、資本金1千万円以上の未公開企業が総額1億円までのファンド募集を行うことができ、投資家は一人50万円まで出資が可能となりました。

寄付型クラウドファンディング

 リターンの一切ない「寄付」を募るクラウドファンディングです。NPOなど非営利団体がよく行っているファンディングですが、寄付金額によっては出資者の名前がプロジェクトのサイトに掲載されたり、感謝状が届いたりとというようなリターンがわずかながらもある場合も含みます。たとえば、東日本大震災被災者への援助や、殺処分される予定だった動物を育てるのにお金を集めている、というようなプロジェクトが出資者を募っていたりします。

クラウドファンディングのリスク

 「購入型」「投資型」「寄付型」のいずれも、クラウドファンディングプラットフォームに、どのようなプロジェクトで資金を募集したいかを伝え、審査を受けます。出資を受ける際に何割かの手数料をファンディングプラットフォームに支払います。これがファンディングプラットフォームの運営資金や利益になるわけです。

 一般的にクラウドファンディングには「目標金額」があり、「購入型」「投資型」のクラウドファンディングでは出資額の合計が目標金額を超えた場合、ファンディングが「成立」したということになり、プロジェクトはそのお金を使うことができます。逆に募った額が目標を超えなかった場合は「不成立」となり、一般的には投資する予定だった金額がそのまま返ってきます(プラットフォームによっては、手数料を引かれる場合もあります)。

 なお、「購入型」「投資型」クラウドファンディングはあくまでも「出資」なので、プロジェクトがお金を使っても延期となりリターンを得られるのが遅くなったり、予定の利回りを下回ることや、失敗してリターンを得られないケースが非常に多くあります。出資者になる場合は、クラウドファンディングというものはそもそも「ハイリスク」である、という心構えが非常に重要です。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)