ケータイ用語の基礎知識

第696回:光コラボレーションモデル とは

 光コラボレーションモデルとは、NTT東日本、NTT西日本から光アクセス回線を借り受けて、さまざまな事業者が自社サービスと組み合わせてユーザーに提供する仕組みのことです。

 これまでは、NTT東西は直接、個人や店舗・事業所向けに光アクセス回線を「フレッツ光」として提供してきました。そこへ、2015年2月1日からは、NTT東西が光アクセス回線を卸売りするようになりました。そこでNTT東西以外の企業がこの「光コラボレーションモデル」を使って、自社ブランドの光回線サービスを立ち上げ、他の自社サービスと組み合わせてユーザーに提供できるようになったのです。

 光コラボレーションモデルを利用して、サービスを提供する事業者はインターネットサービスプロバイダなど、既に多くが名乗りを上げています。そして携帯電話のサービスを提供している事業者では、NTTドコモが「ドコモ光」、ソフトバンクBBが「SoftBank 光」を提供します。ドコモのMVNO事業を行っている企業もサービスを提供する方針で、たとえばIIJは「IIJmioひかり」、NTTコミュニケーションズは「OCN 光」を、So-netは「So-net 光 コラボレーション」を、U-NEXTは「U-NEXT光」、ビッグローブは「ビッグローブ光」、ニフティは「@nifty光」をそれぞれ個人や店舗・事業所向けに提供を開始しているか、あるいは開始予定であることをアナウンスしています。

フレッツ光のサービスそのものを卸す

 光コラボレーションモデルの大きな特徴は、設備貸しではなく、フレッツ光のサービスそのものをNTT東日本・西日本が事業者に提供するこということです。そのため、フレッツ光でエンドユーザーに提供されていたサービス提供形態や、ネットワークの設備形態は変更せずに卸先事業者に提供されます。

 具体的にいうと、光コラボレーションを利用したサービスが提供されるエリアは、フレッツ光のサービス提供エリアと全く同じになります。また、ベストエフォートのインターネットアクセスサービスを提供する、という点も同じです。工事料金は光コラボレーションモデルでサービスを提供する企業がエンドユーザーに提供し、そうしたユーザーからの問い合わせなどをサポートする窓口もサービス提供事業者にあります。一方、光回線の開通工事や、フレッツ光で提供している設備、たとえば宅内のONU(光回線終端装置)やホームゲートウエイ、光ファイバーなどの保守などはNTT東西が行います。

 光回線によるインターネットアクセスのサービスを提供したい企業としては、基本的に光アクセス用の設備投資が不要になり、サービスの事業化が非常に容易になることがメリットであるといえます。

 企業にとっては、光コラボレーションモデルのメリットとして、自社の商品やサービスなどと組み合わせて、1つのパッケージにすることで、ワンストップでサービスを提供できるようになります。

 たとえば、NTTドコモの場合であれば、携帯電話やモバイルデータ通信回線と光アクセス回線のサービスである「ドコモ光」を、どちらも同じドコモショップなどで申し込むことが可能となりました。携帯電話と光アクセス両方を契約することで、割引価格でこれらを提供する「ドコモ光パック」というようなサービスメニューも開発できたわけです。

事業者の提供しないサービスは、NTT東西から

 NTT東西から各企業に提供されるサービスとしては、フレッツ光相当の光アクセス回線のほか、固定電話サービスである「ひかり電話」、付加サービスである「リモートサポートサービス」、「フレッツテレビ伝送サービス」も含まれます。

 光アクセス以外のサービスを、エンドユーザーに提供するかどうかは、企業が決めることになります。たとえば、NTTドコモの「ドコモ光」の場合、ドコモからひかり電話相当の固定電話通話サービスは、開始当初、提供されません。しかし、IIJの「IIJmioひかり」では「IIJmioひかり電話(光IP電話サービス)」として、ひかり電話相当のサービスが提供される予定です。

 既にフレッツ光を利用している場合、電話番号などはそのままで、工事の時間などもとられない「転用」という仕組みが用意されています。光コラボによるサービスを提供する企業と契約する前に、NTT東西に「転用」の申し込みをして「転用承諾番号」を受け取ってから、新しく契約するサービスの企業にその番号を伝えることになります。

 ちなみに、「転用」で乗り換えた場合、たとえばドコモ光では提供されていないひかり電話はどうなるのでしょうか。これはユーザーから廃止を申し込まないかぎり、それまでフレッツで利用していたサービスがそのまま継続されます。契約としては、光回線はドコモと契約し、ひかり電話はNTT東西との契約が継続される形になります。

 なお、転用については、総務省が注意するべき点がある、と呼び掛けています。一度転用し、その後、別のサービスへ乗り換える際に固定電話の電話番号が変わってしまうことがある、一度転用してからすぐ他社サービスに切り替えようとすると、契約解除料が発生したりすることがある、といった内容です。転用は、手軽にフレッツから光コラボ対応サービスへ乗り換えられる仕組みですが、注意すべき点を把握してから契約したほうが良いでしょう。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)