ケータイ用語の基礎知識

第733回:i-dio とは

地デジ化で空いた周波数帯を使うサービス

 「i-dio」(アイディオ)とは、2016年3月、東京、大阪、福岡でサービスが始まる予定の、モバイル向けマルチメディア放送です。スマートフォンやカーナビと言った端末での利用が想定されています。

 このマルチメディア放送は、2010年の改正放送法で新たに定義された“移動受信用地上基幹放送”です。「携帯性・移動性」「IPデータキャスト」「一斉同報性」という特性を備えています。つまり、スマートフォンやカーナビなどに、インターネットでも使われるデータパケットを放送波に載せる放送、となります。

 i-dioで使う電波は、2011年7月にアナログテレビ放送の終了で空いた周波数帯のうち、V-Lowと呼ばれる帯域です。旧アナログテレビでは1ch〜3chに相当する領域を使用する「V-lowマルチメディア放送」のサービスとなります。ちなみに、10ch〜12chの周波数帯は「V-Highマルチメディア放送」である「NOTTV」が既に提供されています。

 放送方式としては地上デジタル音声放送用のISDB-Tsbが採用されました。電波は、放送波として3セグメント形式のOFDMフレーム×2で送信されます。NOTTVや既存の地上デジタルテレビ放送、ワンセグとは異なる新方式を利用した放送のため、放送用の設備はもちろん、受信には対応機器が必要となります。

 サービス開始時には、放送波をWi-Fiに変換し従来のスマホでi-dioを受信することができる「Wi-Fiチューナー」も登場する予定です。放送を直接受信できるスマートフォンも、コヴィア製の「i-dio Phone」が、2015年内にも発売される予定です。「i-dio Phone」は、FMラジオや地デジにも対応したSIMフリースマートフォンで、専用の受信アプリケーションをインストールすることで、i-dioを利用できます。スマホに直接接続する「i-dioチューナーユニット」や、組込型の「i-dio受信モジュール」、このモジュールを利用した「i-dio対応カーナビゲーションシステム」なども開発が進んでいるとされています。

V-Lowマルチメディア放送に対応するコヴィア製「i-dio Phone」。SIMロックフリースマートフォンで、専用アプリをダウンロードすることで「i-dio」のマルチメディア放送を受信することが可能となる

 ISDB-Tsbという方式を利用することで、マルチメディア放送では、デジタルラジオ放送のほか、映像やデータだけの放送などが技術的には可能となります。たとえば音声に関して言えば「5.1チャンネルサラウンド放送」も可能ですし、「放送波を使ったデータダウンロード」などの複合的なサービスもできます。

 具体的なサービス例として、「i-dio」のチャンネルの1つである「Amanekチャンネル」(仮称)ではカーナビなどでの視聴向けの放送で、交通情報や天気といったエリア情報を音声で伝えるほか、自動音声でゲリラ豪雨などの限定された地域の情報を随時伝える予定とされています。同じく「i-dio」のチャンネルである「MUSIC SELECTチャンネル」シリーズではデジタル音声でジャズ、クラシックといったような音楽が主に放送されます。放送中に気になる曲があれば、アプリを操作すると、曲名などの情報をテキストで表示でき、そのテキストを保存して後で確認するといったことも可能になる予定です。

 各端末に異なるデータを送る「通信」と違い、一斉に同じ内容を端末に送る「放送」ですので、災害時のように一斉にアクセスが集中しても輻輳を起こさずリアルタイムに情報を提供できるという特長を生かし、防災ラジオにも利用される予定です。こうした面では、加賀ハイテック製の防災ラジオ「TAXAN MeoSound VL1」という製品が、V-Lowデジタル放送に対応しています。ただし、これは一般に市販されるものではなく、災害情報発信システム「V-Alert」を導入する自治体向けに提供されます。

NOTTVと異なり、地域ごとに異なる番組

 i-dioは、ハード(放送設備担当)とソフト(番組担当)とで運営が分割されており、ハードはVIP社、ソフトは全国各地のマルチメディア放送担当会社が運営を行います。各地域の事業全体は、地域マルチメディア放送担当会社の持株会社であるBIC(ビーアイシー)社が行います。VIPや、各地のマルチメディア放送担当会社、BICとも、TOKYO FMおよびTOKYO FM(エフエム東京)をキー局とするFM放送局が加盟するJFN(JAPAN FM NETWORK)、JFN加盟各社によって設立された会社です。FMラジオ、特にTOKYO FMいずれにしても運営にはTOKYO FMが深く関係することになります。

 V-Lowマルチメディア放送である「i-dio」に先行する、V-Highマルチメディア放送の「NOTTV」は全国一律の内容で放送しています。それに対して、i-dioは、地域ごとに異なるソフト配信会社が放送内容を担当します。つまり地域ごとに異なる番組が用意されるというわけです。交通関係では「渋滞情報」や「高速道路の休憩施設情報」はもちろん、情報配信でも地域紙の電子新聞・電子チラシなどの地域に関連のあるニュースの配信が可能になります。

 i-dioの放送エリアは、北海道・東北・関東甲信越・東海北陸・近畿・中国四国・九州沖縄の7ブロックに分割されます。このうち関東・甲信越広域圏では「Amanekチャンネル」「MUSIC SELECTチャンネル(the Classic)」「MUSIC SELECTチャンネル(the Jazz)」「MUSIC SELECTチャンネル(the Sound)」「CREATOR'sチャンネル」が放送されます。一方、九州・沖縄広域圏では、これらのチャンネルに加えて、九州地域向けの「Qリーグ・ブロックチャンネル」、近畿広域圏では「KANSAIチャンネル」と地域特化のチャンネルが加わる、というわけです(チャンネル名はいずれも仮称)。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)