ケータイ用語の基礎知識

第744回:Continuum とは

スマートフォンをパソコンのように

 英語で「連続体」「連続性」を意味する「Continuum(コンティニュアム)」は、マイクロソフトの「Windows 10」から利用できるようになった新機能です。ディスプレイの大きさやユーザーの好みに応じて、ユーザーインターフェイスを適切に表示します。

 スマートフォン向けの「Windows 10 Mobile」には、“電話用”のContinuum(Continuum for Phone)が用意されています。スマートフォンをドッキングステーションやアダプターに繋げて、HDMI入力を備えたテレビ、モニターに接続すると、テレビやモニターをスマートフォンのディスプレイとして使用することができます。

 スマートフォンよりも大きな画面となるテレビやモニターに繋げると、スマートフォン用の画面ではなく、フルスクリーンに適応してパソコン用のWindowsのように、タスクバーとスタートボタンを持つユーザーインターフェイスとなります。Windows10アプリを実行した場合、テレビやモニターのサイズに合わせてアプリをスケーリングして動かすことができます。

 Windows 10 Mobileではもともと、マウスとキーボードを接続して使えます。電話用Continuumを使うと、簡易的にですが、まるでパソコンのようにWindowsスマートフォンを使えるわけです。たとえば出張などでも、スマートフォンとキーボード、マウス、それにスマートフォンとテレビを繋ぐアダプターさえ持って行けば、ホテルのテレビなどでOfficeソフトを使って仕事をこなすなどということも可能になります。

 あるいは、パソコンで作成したPowerPointのプレゼンテーションを、出先で発表する際にパソコンがなくとも、スマートフォンにプロジェクターを接続することでプレゼンテーションできます。最新の「Office」や、Windows 10スマートフォンは、標準でクラウドサービスの「OneDrive」に対応しています。わざわざパソコンからスマートフォンにファイルをコピーしなくてもすぐにスマートフォンで表示できるのは大きな魅力でしょう。

 しかも、テレビやモニターは、スマートフォンにとってはセカンドディスプレイですから、スマートフォン上はそのままスマートフォンとして利用が可能です。たとえば、テレビにはOfficeの画面を表示したまま、スマートフォンでは電話をかける、というようなことも可能です。

 海外では既にマイクロソフト製の「Lumia 950/950XL」が電話用Continuumに対応した機種として発売されていました。日本国内でもトリニティの「NuAns NEO」のように、電話用Continuumに対応する機種が登場、今春以降にはVAIOの「VAIO Phone Biz」も発売されます。

ハイスペックなハードウェアが必要

 電話用Continuumは、どのWindows 10スマートフォンでも実行できるわけではありません。パソコンのようにアプリを大きなモニターに最適化して表示する、といった負荷の高い作業を実行するため、それなりにアプリケーションプロセッサーのパワーや、メモリ容量などのリソースが必要となります。

電話用Continuumが実行できる最低要件
ハードウェア要件
プロセッサークアルコム製MSM8952(Snapdragon 617)、MSM8992(Snapdragon 808)、MSM8994(Snapdragon 810)
メモリ2GB(ディスプレイ解像度720pの場合)
内蔵ストレージ16GB以上
Bluetooth4.0以上
Wi-FiIEEE802.11nデュアルバンド以上
MiracastWindows 10 Miracast拡張をサポートすること
USBUSB 2.0以上必須。有線ドックにはデュアルロールUSB必須

 推奨環境としては、3GBのメモリー(RAM、1080p以上の画面解像度の場合)、microSDカードのサポート、IEEE802.11acデュアルバンド 2×2アンテナ、USB 3.0(有線設定の場合はUSB Type Cを強く推奨)などとなっています。

 既存の電話用Continuum対応機種で、Lumia950/950XLの場合は、プロセッサにSnapdragon 808/810が搭載されていますし、純正オプション「Display Dock」に繋げられるUSB Type Cコネクタを装備しています。また「NuAns NEO」の場合、プロセッサはSnapdragon 617を搭載し、モニターへの接続へはたとえば「ScreenBeam Mini2 Continuum」といったMiracastアダプタを別途購入し、Wi-Fi経由で画面の情報をモニターに送るようになっています。

スマートフォンがパソコンになるわけではない

 ただし、注意しなければならないのは、Continuumはあくまで“ディスプレイ表示を最適化する技術”であって、「スマートフォンをパソコンにする技術ではない」ということです。

 たとえば、スマートフォンに搭載されているWindows 10 Mobileでは、アプリケーションをひとつの画面で同時に実行したり表示したりすることはできません。つまりモニターに繋げて、パソコンのような見栄えになっても、複数のアプリを同時に開くことはできません。

 またスマートフォンに搭載されているWindows 10は「Windows 10 Mobile」なので、パソコン専用のデスクトップアプリを動かすことはできません。たとえばOfficeもパソコン用Officeではなく、スマートフォン用の「Office mobile」になります。

 なお、Windows 10 Mobileでは「Windows Phone 7/8/8.1向けアプリ」と、Windows 10向けの「UWPアプリ」どちらも動かすことができますが、電話用Continuumを使ってセカンドディスプレイ側で表示できるのは、UWPアプリのみです。UWPは、本連載の「第722回:UWPとは」で解説しています。

 電話用Continuumでは、カーソルやアプリケーションのウィンドウを、スマートフォンとセカンドディスプレイの間でまたがるように表示させたり、ドラッグさせたりといったことはできません。アプリケーションはどちらか一方のディスプレイで起動し、その中でだけでの利用になります。マウスやキーボードに関しても、電話用Continuumを使用している間はセカンドディスプレイ側のみが操作対象になります。マウスやキーボードがなくても、スマートフォンをタッチパッドのように使う、といったことはできます。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)