ケータイ用語の基礎知識

第748回:フィンテック とは

 「フィンテック」とは、簡単にいうとITを利用した金融テクノロジーのことです。英語ではFintechと書きます。金融を意味する“Finance”と技術を意味する“Technology”を合わせて作られた造語です。フィンテック分野を手がけている企業のことを「フィンテック企業」と呼ぶこともあります。

 多くのユーザーが利用するスマートフォン向けにした、フィンテックサービスも数多くあります。

先行する米国で広がる裾野

 「フィンテック」というワードは、もともと米国で生まれました。その米国では、フィンテックに関する分野の裾野が広がり、2016年現在、多くのサービスが提供されています。大きく分けると「決済」「海外送金」「クラウドファンディング」「融資」「投資(個人向け/企業向け)」「個人向け銀行」「金融リサーチ」といったサービスがあります。

 たとえば「決済」は、フィンテックで最もサービスが発達したジャンルです。「PayPal」や「Square」といったサービスは日本でもよく知られています。PayPalは、クレジットカードと紐付けることで、カード情報を伝えることなく、相手に支払いできたり、メールアドレスしか知らない相手から自分の口座に送金してもらったりすることができます。またSquareは、個人や規模の小さな企業でも、クレジットカード払いを受けられるようにするサービスです。クレジットカードを受け付けるレジ端末の代わりにアプリの入ったスマートフォンと、イヤホンジャックに挿すだけで使えるカードリーダーで実現しています。
 また海外送金は、日本では法律の問題があるため、まだ米国発のフィンテックサービスは展開していませんが、海外ではたとえば「World Remit」などが知られています。スマートフォンを使うだけで母国へ手軽に送金できるということで、特に米国では、フィリピン、インド、ケニヤなど、出稼ぎしている人に向けて、専用ページが設けられているほど人気があります。

 またクラウドファンディングとは、インターネット上で多くの人から投資を募るサイトです。製品のアイデアなどを持った人や企業が「いくら集まったら、こんな魅力的な商品を送りますよ」と発表し、それを見て多くの人が集まれば実際に製品が作り出されます。クラウドファンディングという言葉は、群衆を意味する英単語“crowd”と、集めたお金を資金としてまとめて使う“funding”を組み合わせて作られた造語です。クラウドファンディングで最も有名なのは「Kickstarter」ですが、その他にも多くのサイトがあります。サイトによっては、たとえば芸術家、音楽関係のクラウドファンディングというようにジャンルを決めて投資を募るサイトもあります。

 他にもシンプルですべてのサービスを手数料で提供する「Simple」、同じくオンラインバンク系のサービスで、手数料不要、アプリで決済や送金が簡単に行える「Moven」といったスマートフォンを使った銀行代理店などは、比較的、ユーザーが身近に思えるフィンテックでしょう。

 米国発のフィンテックのように、ベンチャー企業がITを使った金融サービスを立ち上げて提供する……というパターンはまだ少ないのですが、日本にもさまざまなジャンルでフィンテック関連サービスが立ち上がってきています。

 最近、ニュースになったのは、au(KDDI)がフィンテックを打ち出したサービスを発表したことです。これはKDDIが出資する銀行や生命保険会社の商品を、KDDIが代理店となって販売するものでした。

 その他のフィンテックでは、近い将来、スマートフォンを使った決済が始まることが期待されています。海外では「コンタクトレス」とも呼ばれるこのサービスは、クレジットカードとスマートフォンを紐付けておくことで、スマートフォン搭載のNFCで支払いができます。iPhone 6以降の「Apple Pay」、あるいはグーグルが提供する「Android Pay」といったサービスが登場しています。日本では、異なる仕組みではありますが、同じような使い方は既に実現しており、おサイフケータイとして広く利用できる環境が整えられています。

 他のジャンルで既に成功しているIT企業が、フィンテックに乗り出してきているケースもあります。そのひとつは、Amazonの提供する「Amazonレンディング」でしょうか。Amazon.co.jpの通販では、Amazonそのものが販売する品物に加えて、他の業者や個人が販売する「マーケットプレイス」があります。Amazonレンディングは、マーケットプレイスに参加している事業者向けの融資プログラムです。3回、あるいは6回で返済する形で、10万〜5000万円の範囲で融資を受けられます。特徴は、事業者向け融資としては非常に審査や手続きが速いことです。初回の申し込みは審査も含めて最短で5営業日、二回目以降は最短で3営業日で融資額が入金されます。Amazonは、このサービスのために「アマゾン・キャピタル・サービス合同会社」という専門子会社を作り、東京都へ貸金業登録も行っています。

 このように、「金融×IT」という組み合わせで実現するサービスは、決済、海外送金、融資、家計簿など非常に幅広く、「フィンテック」が指し示す内容がはっきりしないイメージを与えることもあります。それでも、これまで実現してこなかった便利さが提供できる、あるいはコストダウンなどに繋がる……と期待されている分野です。iモード初期から利用できるようになっていたモバイルバンキングもそうしたジャンルに含めることができるかもしれませんし、途上国におけるモバイル送金サービスのように、携帯電話やスマートフォンが広がったからこそ利用されるようになったサービスもあります。フィンテックに分類されるサービスは、これからもますます拡がっていくでしょう。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)