クラウドとの同期ミスに泣く

2012年6月18日 06:00
(白根雅彦)
メモ執筆スタイル。iPhoneをキーボードの手前に置くことが多い

 筆者は取材や打ち合わせのメモ取りに、iPhoneアプリの「ATOK Pad」とBluetoothキーボードの組み合わせを使うことが多い。取ったメモはEvernoteと同期させ、Evernote上で管理する。わりと簡単かつ便利な使い方だと思うが、気をつけないといけないこともある。

 たとえば取材の前にパソコンで「A」という事前メモを書いたとする。それをEvernote経由でiPhoneに同期させ、取材先ではiPhoneで「A」に加筆し、「B」という取材メモに書き換える。これをEvernoteと同期させ、パソコン上に「B」を転送して、そこで原稿を書く。こんな使い方をすることが多い。

 ところがiPhoneの「B」を同期する前に、パソコンで「A」に変更を加えて「A'」にしてしまうと、「B」を同期させたとき、「A'」と「B」とで衝突が起きてしまう。こうした同期の衝突が起きると、たいていの場合、両方のデータが残るようになっているが、アプリによっては片方のデータが上書きされてしまうこともある。せっかく書いた文章が消えてしまうなんて、ライターにとっては悪夢以外のなんでもない。

 あとはパソコンでメモ執筆後に同期するのを忘れて、せっかく書いたメモ「A」を最新の状態で持ち出せなかったりすることも少なくない。iPhone上のATOK Padで「A」の同期を完了する前に編集を開始してしまい、やはり同期衝突を起こしてしまうこともある。

 アプリによっては自動同期もしてくれるが、しかしタイミングが悪いと、こうした同期ミスは起きてしまう。GoogleドキュメントのようなWebアプリだと、同期ミスは起きにくいが、パフォーマンスなどの面から、長文入力用途ではちょっと使いづらい。

 結局のところ、必要なタイミングで必ず手動で同期することを心がけるしかないようだ。

 こういった同期ミスの問題は、改善に向かっているようにも見える。先ごろ米国で開催されたアップルの開発者向けイベント「WWDC 2012」では、同期ミスの防止につながりそうないくつか新機能が発表された。

一定間隔で自動同期できても、編集後に必ず手動同期しているiCloudのドキュメント同期の設定項目があるのだが、対応アプリがまだまだ少ない

 たとえばiCloudのドキュメント同期では、各アプリのデータをプッシュで同期できるので、受信する方向での同期を忘れる心配は減る。この機能はすでに一部アプリで実装済みだが、Macの次期OS Xではさらに強化されるようで、WWDC基調講演では、ある書類をMacで開いているとき、iPhone側で書類を更新すると、Macのウィンドウ内の表示がiCloud経由ですぐに更新される様子も披露されている。

 Macの次期OS Xでは、スリープ中にもiCloudと同期できる「Power Nap」という機能も搭載される。パソコンからの送信方向の同期忘れは、自動同期が行われる前にパソコンにスリープをかけて外出してしまう、というパターンがほとんどなのだが、Power Napが働けば、スリープ後も同期できる。もっとも、Power Napに対応するのはフラッシュストレージが標準搭載されるMacBookのみのようなので、筆者のメインマシンであるMac miniでは使えないのだが。残念。

 また、こうした新機能も、対応アプリが登場してくれないと意味がない。しかしプラットフォーム縛りのあるiCloudがどのくらい普及するかは、正直言って微妙なところである。ATOK Padみたいなテキスト入力特化のアプリが、iOSとMacの両方でiCloud同期をサポートしてくれると、利便性が上がって助かるのだけど……。