みんなのケータイ

 4月中旬から「AQUOS PHONE Xx 203SH」を使い始めたところ、端末としての特徴はさることながら、結構さくさく通信できることに正直、ちょっとした驚きがあった。ここ最近のソフトバンクモバイルは発表会のたびにネットワークの改善ぶりをアピールしているが、それはつまりユーザーからは厳しく評価されていた、ということ。そんな評価を受けていたソフトバンクだが、首都圏で「203SH」を使っていると、案外そうでもないぞ? と感じることが少なくない。

 たとえば編集部がある市ヶ谷のJR駅プラットフォームで、4月中旬のお昼頃、「SPEEDTEST.NET」というアプリを使って複数回計測したところ、下り速度で27Mbps、12Mbps、14Mbps、26Mbps、16Mbpsとなかなかのスピードを記録した。5月に入って、編集部近くの路上で計測してみると下り30Mbpsを越える速度を記録して、またまた驚いた。エリアについても、連休を迎え、都内を移動してみたが、屋外では4Gエリアで通信できることが多い、と思える場面が多かった。

 とはいえ、この数字はあくまで“たまたま”であって、場所や時間によって刻々と変化するのがモバイル通信、一概にこのサービスは速いと言えないのではないか――というツッコミを入れたくなる人はいるはず。その疑問は正しい。電波は水物で一般的なモバイルサービスについては確かにその通りだ。しかしソフトバンクの4G対応のAndroid端末、そして2013年春という今の時期に限れば、他よりも高速なデータ通信を利用しやすい、と言っても差し支えないと思う。なぜならば、ソフトバンクのAndroid端末が使う4Gは、同じソフトバンクであっても「iPhone 5」と利用する電波(周波数、通信方式)が違うからであり、なおかつ、ユーザー数が他のサービスよりも少ないから、だ。

 本誌読者の皆さんであれば、そのあたりをご存知の方も少なくないだろうが、4G(第4世代)の通信サービスとも呼ばれる「LTE」方式には大きく分けてFDD(周波数分割)タイプとTDD(時分割)タイプがある。「iPhone 5」は2GHz帯という電波で、FDDタイプのLTEをサポートしている。一方、ソフトバンクの4G対応Androidは、2.5GHz帯でAXGP方式という通信技術に対応。このAXGPはTDDタイプのLTEと互換性がある、という。繰り返しになるが「iPhone 5」と「203SH」が繋がる電波は異なるのだ。

 一方、ユーザー数については、業界団体が毎月発表する契約者数を見ると、「203SH」がサポートするAXGP方式の契約者数は、4月末時点で約132万人だ。ソフトバンク版「iPhone 5」ユーザー数はわからないが、たとえばドコモのLTEユーザー数(4月末時点で約1223万人)と比べれば格段に少ない規模であるのは明らか。ユーザーが少ないほど電波を独り占めしやすくなる、ということで今の「SoftBank 4G」(ソフトバンクのAndroid向け4Gサービス)は他のサービスより快適に使いやすいのでは、と推測できるわけだ。

 とはいえ、それは「繋がれば」という大前提があってこその話。たとえば都内でも地下鉄はまだ3Gエリアばかり。4月1日に都内地下鉄でLTEが整備された、とソフトバンクから発表されたが、これはiPhone向けネットワークの話で、ソフトバンクのAndroidは蚊帳の外だった。また4月下旬に発表された調査データ(日経BPコンサルティング)によると、LTEエリアの広さ(LTEエリア化率)、「SoftBank 4G」のエリアは5位、エリア化率73.5%で、他のサービスより狭い、という結果になっている。

 ちなみに同調査で平均速度も示されていて、SoftBank 4Gは2位と好成績を示し、先述した個人的な印象とマッチする結果。ソフトバンクモバイルでは先の夏モデル発表会で「世界最強のネットワーク」とアピールしたが、“繋がれば”だけではなく“いつでもどこでも”というエリア整備を今後も続けて欲しいし、ユーザー数がさらに増えても現在の快適な使い心地が続くことを期待したい。