みんなのケータイ

 ZenFone 5はミドルレンジクラスのスマートフォンです。CPUは「ミドルレンジ用」とされているSnapdragon 400を使用していて、最大クロック数は1.2GHzで動作します。このCPU演算速度はハイエンド機と、たとえばNexus 6のSnapdragon 805(2.7GHz)と比較すると半分以下ってことになっちゃいます。スペックを並べられれば、まぁ、確かにそうですねぇ、としか言いようがないのですが、実際の使用感ではZenFone 5は負けていないのです。使われているパーツはミドル機のそれなのですが、使う上で必要な性能に不足はありません。

 ZenFone 5の液晶ディスプレイは、HD解像度つまり1280×720ピクセル。確かにハイエンド機の2560×1440や1920×1080といった解像度には劣るのだけど、解像度の違いはユーザー体験には、正直そこまで影響しません。

我が愛機、ZenFone 5。毎日dアニメストアでダウンロードした動画の再生に大活躍してくれている

 たとえば、筆者がスマートフォンで(時間的に最も長く)使っているアプリは「dアニメストア」だったりするのですが、このアプリでの配信動画はほとんどが480p。一番高い解像度で配信している「ガンダム Gのレコンギスタ」でも720p。そう、現在再生したい動画のソースの解像度が画面の解像度に比べてそもそも低いので、ハイエンド機とZenFone 5のどちらで鑑賞してもそれほど違いが出ないんですよね。

 ミドルレンジ機じゃ、動画再生はカクカクになるんじゃないか? 私も使う前はそうかもと思っていました。が、そうはなりません。なぜかというと、まっとうな動画再生ソフトは搭載しているGPUの持つハードウェアデコード支援機能を使って動画データのデコードを行うからです。ハイエンド機より性能こそ劣るものの、ZenFone 5にもAdreno 305というGPUがちゃんと搭載されています。dアニメストアや、他の動画プレイヤーたとえばMX動画プレイヤーなんかは、こいつを使って動画再生をしてくれます。ですので、これらのアプリを使っている限り、CPUパワーの差の出る幕はないのです。

 もちろんハイエンド機とZenFone 5の間にはGPUパワーの差もあるのですが、アニメの30フレーム/秒程度の再生ではその差は出てきません。

ZenFone 5での動画の再生はコマ落ちなどなくスムーズに動いている。このシーンでもキャラクターが大きく口を開ける動き、その後の視点の切り替えなど、テレビの大画面で見たときと同様スムーズに動く
MX動画プレイヤーの設定画面。ZenFone 5でもデフォルトでハードウェアデコーダーが使用される。設定でH/W+デコーダーの使用も可能だ

 ハイエンドスマートフォンなら4倍速液晶搭載、モーションフローXRでコマの間も補完してくれて、アニメのキャラクターもぬるぬる動くよ! っていうのならそりゃ違うだろうなぁ、と夢想しますし、一も二もなく降参しますが(ていうか買う)、そこまでの機能差はミドルレンジ機との間にはないのが現状です(というかスマホには搭載できないでしょう、テレビでも高級機にのみ許された機能ですから)。

 え? ハイエンド機のほうがバッテリー容量が大きくて長時間アニメが見られるよって? dアニメストアで23分アニメを再生した場合、Zenfone 5のバッテリーの減りって3%程度です。12話1クール見ても36%。一人の少女が夢をみてから宇宙に神様が誕生するまでわずか36%です。CPUパワーが低いからなのか、ZenFone 5の省電力機能がよくできているせいなのかはわかりませんが、意外とZenFone 5って消費電力が少ないんです。高速なCPUを振り回すハイエンド機の方が、むしろ大きなバッテリーが必要になるのかもしれませんね。

 もちろん筆者は、ミドルレンジ機ならなんでもハイエンド機を置き換えられる、ミドルレンジ機があればハイエンド機なんてもう要らないなんて傲岸不遜を申すつもりはありません。というか、筆者は、ミドルレンジ機なりのパーツを組み合わせて十分以上のユーザー体験をもたらすZenFone 5は卓越した存在だと思うし、ミドルレンジ機の中でもZenFone 5は特殊な存在なんだろうとも思っています。

 ただ、やっぱりたまに思ってしまうのです。ミドルレンジ機が必要十分の機能を持っているならなら、我々はハイエンド機にいったい何を求めるべきなのだろうか、と。……何なんでしょうねぇ? うーむ。