みんなのケータイ

 久しぶりに中国・北京に行くことになった。数年前、北京に行ったときは、インプレステクノロジー北京のスタッフに助けてもらいながら、現地のSIMカードを購入し、SIMフリー版のiPhone(確かiPhone 3GSだったような……)に挿し、使ったように記憶している。ただ、中国は「Great Firewall of China」とも呼ばれるインターネットのフィルタリングシステムがあり、地図が表示されなかったりして、いろいろ面倒だったことも覚えている。最近、中国に行った人に話を聞いてもFacebookやTwitterなどが使えず、VPNなどで回避するしかないという。数日の滞在なので、必要なときだけ、VPNを使って、FacebookやTwitterをチェックしてもいいんだけど、その都度、セッションを張るのはちょっと手間だ。

Amazon.co.jpで購入した「跨境王」のパッケージ。「加強版」と書かれているものが新しいそうだ。今回はmicroSIMのパッケージだったが、1枚でnano/micro/標準SIMカードに対応するパッケージも販売されている

 ところが、香港の携帯電話事業者である中国聯通香港(チャイナユニコム香港)が販売するプリペイドSIMカードには、「跨境王(Cross Border King Dual-Number Prepaid SIM)」というパッケージがあり、これを使えば、中国滞在中もFacebookやTwitterが使えるのだと言う。このSIMカードは香港と中国本土の2つの電話番号が割り当てられていて、中国本土で利用するときは香港からのローミング扱いになり、「Great Firewall of China」の適用外になるのだという。いやはや、なかなか面白い(笑)。

SIMフリーということもあり、今回はASUS ZenFone 2を利用。しばらくはこれが海外渡航時の主力端末になりそう

 香港の携帯電話事業者ということで、最初は本コーナーでもおなじみの山根康宏氏にご協力をお願いしようかと思ったけど、日本のAmazon.co.jpでもパッケージが3000円台で販売されているので、今回はそちらで購入した。端末については、ちょうどASUSのZenFone 2が発売されたばかりで、予約していた端末が届いたので、これを使うことにした。

 開通作業は日本でもできるようで、SIMロックされていない端末にSIMカードを挿し、適当な電話番号、たとえば、日本宛なら「+81 90xxxxxxxx」などに発信するだけ。着信側は応答もしなくていいので、通話料はかからないはず。しばらくすると、SMSが送られてきて、開通したことがわかる。

 データ通信の料金プランは、パッケージに以下の2つが記載されていた。申し込みは電話アプリで「*118*448#」のように、USSDコードを送るしくみとなっている。ただ、決められた容量を超えると、日本のように通信速度が低下するのではなく、従量制で課金されるので、チャージした金額を使い切ってしまう可能性が考えられる。

料金容量有効期間
48HKドル300MB7日間
68HKドル500MB30日間

 チャージについては中国聯通香港のWebページから手続きが可能で、日本のクレジットカードやPayPalによる支払いを選ぶことができる。チャージした金額によって、有効期限が違ってくるので、電話番号を維持したい人は多めにチャージするのも手だ。もちろん、日本から手続きすることもできるので、渡航前にチャージしておくと安心だ。

SIMカードを挿し、いずれかの電話番号に発信すると、開通できる。しばらくすると、SMSが送られてくる
チャージは中国聯通香港のWebページからできる。中央付近の「手機/上網~」と書かれたところに電話番号を入力すると、手続きが可能

 実際の利用については、あらかじめ日本でセットアップしておいたこともあり、北京首都国際空港に着いて、端末に電源を入れると、すぐに使いはじめることができた。懸案のFacebookやTwitterについても表示することが可能だった。通信速度は3G/HSDPAということもあり、日本で利用しているLTEに比べれば、遅くなってしまうが、ほとんどストレスなく使うことができた。

中国本土でも無事にGoogleマップを表示することができた。もちろん、GmailやFacebook、Twitterなども普段通りに使える

 ちなみに、もうひとつ試したかったのはZenFone 2のデュアルSIMカードスロット。中国聯通香港のSIMカードは3G/LTEに対応したSIM1スロットに挿してるけど、日本で利用しているNTTドコモやau、ソフトバンクのSIMカードをSIM2スロットに挿せば、GSMネットワークを利用した国際ローミングになるため、音声通話の着信を受けられるはず。これも実際に試してみたが、無事に着信を確認することができた。ただし、現在、国内の最新機種の多くはnanoSIMカードに移行しているが、ZenFone 2のSIM2スロットはmicroSIMなので、アダプターを使うか、microSIMを用意する必要がある。アダプターについては、SIMカードが着脱できなくなるなどのトラブルが多いので、利用には十分注意が必要だ。

 ところで、国内の携帯電話事業者が提供する国際ローミングで使う場合、国と地域によってはLTE国際ローミングを使うことができるので、滞在期間によってはちょっと悩みどころ。たとえば、北京の場合、NTTドコモ、au、ソフトバンクの3社ともLTE国際ローミングを提供していて、1日最大2980円なので、1~2日程度しか滞在しないのであれば、そちらの方が割安というケースもあり得る。これに加え、今のところ、国際ローミングで接続したときは、「Great Firewall of China」の規制を受けないというのも見逃せないポイント。国と地域によって、いろいろと条件も変わってくるので、今後も情報収集をしながら、活用するしかなさそうだ。

Zenfone2のデュアルSIMスロット。上側(右)がLTE/3G対応のSIM1スロット。下側(左)のSIM2スロットはGSMのみ。microSIMサイズなので、国内端末のSIMカードがすでにnanoSIMに切り替わった人は要注意
SIM1スロットに中国聯通香港のSIMカード、SIM2スロットにNTTドコモのSIMを挿し、デュアルSIMカードスロットの設定画面を表示。この状態で、NTTドコモ宛の電話が受けられる