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「マルチコネクション」と「高速ダウンロード」がさらに強化されたARROWS NX F-04G

 その昔、「GetRight」というファイルダウンロードを効率化するWindows用フリーソフトが大活躍した時代があった。ダウンロードを中断しても後から再開できる機能や、ファイルを分割・同時ダウンロードして高速化する機能を備えていた。家庭のネット環境の主流が64kbpsのISDNから数MbpsのADSLに移り変わる前後で、ファイルを置いているサーバー側のバックボーンもまだまだ貧弱な頃だったと思う。

 今となっては何をそんなにダウンロードしたかったのか、思い出すこともできないが、ARROWS NXシリーズが搭載している「マルチコネクション」と「高速ダウンロード」の機能は、その時の記憶をうっすらよみがえらせる。とはいっても、当時と比べると事情はだいぶ変わっていて、今はローカル側もサーバー側もインフラ整備が行き届き、ある意味ソフトウェアで頑張れば頑張るほど実速度を出しやすい状況になった、と言えなくもない。

マルチコネクションと高速ダウンロードの設定画面

 ドコモ端末において、F-05Fで初めてWi-Fiと3G/LTEをスムーズに切り替える「マルチコネクション」機能を搭載したARROWS NXは、次のF-02Gでファイルのダウンロード処理を分割して高速化する「高速ダウンロード」機能を搭載し、今回の新しいF-04Gではその両方を強化。キャリアアグリゲーションで最大225Mbpsに速度アップしたモバイルネットワークや、複数のアンテナで1Gbpsに迫ろうかという最大867Mbpsにまで引き上げたWi-Fi MIMOの合わせ技で、徹底的に高速化を図っている。

 「マルチコネクション」では、例えばWi-Fi通信のスピードが遅くなってきた時に3G/LTE通信に切り替えるという点で変わるところはないのだが、F-04Gからは新しく「適用アプリケーション」という設定機能が追加された。マルチコネクションを有効にする場面をアプリ単位で設定できるもので、Webブラウジング中はWi-Fiの速度が遅くなったとしてもWi-Fiのまま閲覧し、YouTubeでの動画再生中はモバイルデータの通信量が増えてもかまわないから最大限スムーズに見られるようにしたい、といった使い分けができる。

ぜひオンにしておきたいマルチコネクション
アプリ単位でマルチコネクションの有効・無効を切り替えられるようになった

 「高速ダウンロード」機能も、Wi-Fiと3G/LTEの組み合わせ方として「シングル高速化・マルチ高速化(Wi-Fi優先)・マルチ高速化(フルスピード)」の3パターンがあるのは従来と同じ。「シングル」はWi-Fiのみか、もしくはWi-Fiがオフの時は3G/LTEでのダウンロードを高速化し、「マルチ」はWi-Fiと3G/LTEの両方を利用して高速化するもの。この高速化の仕組みに用いられているのが、(1MB以上の)ファイルダウンロードの際に、複数のセッションに分割して同時並行で処理する手法だ。まさにGetRight。

最大16セッションまで分割する高速ダウンロード

 で、前機種のF-02Gでは最大8セッションまでだったところ、F-04Gでは2倍の16セッションにまで拡張している。すなわち、理論的には2倍の効率でダウンロードできるわけで、225Mbpsのモバイル通信と、867MbpsのWi-Fi通信がベースになっていることを考えれば、F-02G(モバイル通信最大150Mbps、Wi-Fi通信最大300Mbps)とは比べものにならないほどスピードアップしていることになる(あくまでも理論上は)。

 じゃあ、そんなに高速になったところで何に使うのか、という話になるのだけれど、個人的に“ダウンロード熱”みたいなものがとっくに冷めた今となっては、取り立てて高速にダウンロードしたい何かが存在するわけではない。高速データ通信の容量制限もあるし。

 それでも、アップデートのあった複数アプリをGoogle Playから一括ダウンロードする時なんかは、感覚的に完了までにかかる時間が圧倒的に短くなった。これに限らず、通信に関係する部分の“待ち”の時間が、いつの間にか気にならなくなったというか、確実に減ったなあ、と思っている。

 クラウド化の流れで、今まで端末内で完結していた機能でも、より時間のかかる通信を必要とする機能に変わっている例もあるはず。それらも含めて考えると、端末全体ではパフォーマンスが落ちても不思議ではないのに、実際はなぜか逆で、年々快適さが増している。バックグラウンドなどユーザーが意識しないところで処理するようなソフトウェア上の工夫もあるだろうけれど。

 虹彩認証、高精細ディスプレイ、4K動画撮影など、目新しく派手な要素がありつつも、F-04Gの意外にすごいところは、これらネットワーク機能の完成度の高さなのかも、と思ったり。