みんなのケータイ

 昨年あたりから急速に盛り上がってきたSIMフリー。これまではどちらかと言えば、MVNO事業者の話題が多かったけど、最近はSIMロックフリーのスマートフォンを発表するメーカーが増え、注目を集めている。

 そんな中、ちょっと話題になっているのが「UPQ(アップ・キュー)」というメーカー。本誌でも発表会のレポートやインタビュー記事が掲載されたし、テレビなどにも社長の中澤優子氏が随分、取り上げられたから、ご存知の人も多いはず。ちなみに、中澤氏はカシオ計算機、カシオ日立、NECカシオで商品企画を担当してきた人で、ボク自身も取材などで何度も話を聞かせていただき、NECカシオを退職後も直接、お会いする機会を得ている。

 そんなUPQがリリースしたSIMロックフリーのLTE対応スマートフォンが「UPQ Phone A01」。詳しいスペックは本誌の記事を参照して欲しいけど、ご存知のように、この数週間、この製品についてのニュースが何度も伝えられてきた。

4.5インチFWVGA液晶ディスプレイを搭載。ボディ幅は66mmとコンパクト。重量も118gとライト級
個人的に購入したのは「ブルー・バイ・グリーン」。背面の右下に同社のロゴが入る
バッテリー装着部の内側に表記されている技適マーク。回収されて、正しい表記になったシールが貼られている

 UPQは9月半ばに完成したUPQ Phone A01の出荷を開始したものの、初期出荷分に技術基準適合認定の表記に誤りがあることがわかり、9月25日に回収を発表。同日、総務省から「電気通信事業法及び電波法に関する認証が未発行である」という指摘を受け、認証取得代行会社に確認したところ、正式な認証を受ける前に工場が出荷してしまったことが判明してしまった。簡単に言ってしまえば、代行会社を通じて、技適を申請していたけど、認証を受ける前に工場が間違った番号のシールを貼り、出荷してしまったというわけだ。

 通信機器に携わってきた人が代表を務めるメーカーとしては、「甘い!」としか言いようがトラブルなんだけど、ここからのリカバリーで中澤氏のフットワークの軽さが活かされている。すぐに中国に渡り、代行会社や工場などで必要な書類を回収し、すぐに届け出て、9月30日付けで「電気通信事業法及び電波法に関する設計認証および工事設計認証」と取得したそうだ。通常、認証には数週間がかかることもあるそうだけど、すでに書類も揃っていたこともあり、早いタイミングでの取得に至ったようだ。

 初期出荷分のお客さんに対しては、9月25日の回収発表直後に、返送用封筒と返送用着払伝票が入った返送キットが送られていて、早く返送した人には10月第1週の週末あたりには返送されていた模様。ちなみに、ボクは個人的にUPQ Phone A01を購入していたんだけど、返送キットもちゃんと届いたし、回収した端末も早く返送されてきた。返送された人がネットでも書いていたけど、宛名書きが手書きだったのは、ちょっとボクも驚きました。

 とまあ、そんなこんなで手元に戻ってきたUPQ Phone A01ですが、コンパクトなボディで機能もいたってシンプル。アプリもAndroid標準のGoogleアプリが中心なので、あまり目立った特徴はない。正直なところを書いてしまうと、ハイスペックな端末に慣らされてしまったボクにとっては物足りなく、これをメインで使うのはちょっと厳しいという感じ。とは言うものの、デザインやカラーはかわいいし、ボディの質感や仕上げもきれいなので、「2台持ちしたいから、軽いSIMフリーのスマートフォンが欲しい」「海外に行くので、SIMフリー端末が買いたい」といったニーズにはぴったりと言えるかもしれません。この価格帯のスマートフォンとしては、十分すぎる仕上がりと言えるんじゃないでしょうか。

 少し気になった点を書いておくと、出荷時に設定されているAPNが少なく、UPQが直販に利用しているDMMが運営するDMM mobileすら、登録されていなかった。APNを設定後、音声通話は着信できるのに、モバイルデータ通信がまったく利用できず、困っていたら、意外なことにステータスパネル内の[データ接続]をタップして、有効にしなければならなかった。本来なら、[設定]-[もっと見る]-[モバイルネットワーク]あたりにデータ通信の項目がありそうだけど、それがステータスパネル内のみというのは、ちょっとトリッキー。この他にも日本語化されていない項目もあったりするので、今後のソフトウェア更新などで修正して欲しいところ。

ステータスパネルを開き、中央部分の[データ接続]をタップして、有効にすると、データ通信ができる。[設定]メニュー内には項目がない
出荷時に設定されているAPNがあまりにも少ない。最下段の「DMM mobile」は筆者が自分で登録したもの。NTTドコモ以外に、なぜ「b-mobile」だけが追加されている?

 販売開始から出荷、技適未取得、回収、返送と、スタートでつまづいてしまったUPQ Phone A01だけど、同社の周辺機器も含め、ちょっと面白そうな展開が始まっているのは注目したいところ。今後の同社の動きを気にしつつ、UPQ Phone A01をもうちょっといろんなところで試してみたいと思います。