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 簡単な使用レポート記事で紹介したように、3月1日から開始された新放送サービス「i-dio」(アイディオ)を「i-dio Wi-Fi Tuner」と「Nexus 6」の組み合わせで使用中。件のレポート記事とは別に、「i-dio」の魅力ってなんだろう? という部分に触れてみたい。

 「i-dio」は、番組コンテンツなどの揃う状況がチャンネルごとに異なることから、3月時点では「プレ放送」と位置づけられている。東京でスタートしているチャンネルは、従来のラジオ放送の番組構成に近い音楽チャンネル「TS ONE」のほかに、選曲や情報をドライバー向けに最適化した「Amanekチャンネル」、24時間ノンストップの「i-dio Selection」(Classic、Jazz、Masterpieceの3チャンネル)、映像チャンネルの「i-dio Creators Ch.」だ。

 従来のFMのラジオ番組のようなノリで楽しめるのは「TS ONE」だ。「プレ放送」としている3月でも多くの番組がスタートしている。生放送以外の番組については、月曜日に各番組が放送され、金曜日までは番組表に従って各番組がリピート放送される。土曜日と日曜日は平日と異なり、ワイド番組を中心に構成されている。

 「Amanekチャンネル」はグランドオープンを7月としており、生放送も1日2時間からスタートするなど、3月いっぱいはまだ準備段階。ドライバーの位置情報を利用した情報配信など、技術的には放送と通信を融合した意欲的な取り組みが多い。

 これら2チャンネルは、深夜から明け方までは放送を休止する。一方、24時間ノンストップで音楽を放送する「i-dio Selection」は、有線放送や伝統的なインターネットラジオに近いイメージで、番組構成や技術的な面白さは無いものの、音楽が高音質で延々と流れるのは、ある意味で分かりやすい。「なんでもいいのでBGMとして聴きたい」といった時、意外と重宝しそうだ。

 評価が難しいのは「i-dio Creators Ch.」だろう。映像チャンネルということで、視聴を開始するまでのコンテンツの受信に時間がかかる(音声だけは先に聞こえ始める)ほか、画質は概ねワンセグのようなイメージで、ブロックノイズなどもあり、小さい文字や字幕は判別できないことが多い。映像に帯域を割くためか、音声も特に音質が高いわけではない。コンテンツ次第な部分はあるだろうが、映像の最適化も含めて、現時点では試験的なチャンネルという意味合いが強そうだ。

 放送開始日である3月1日の時点で使用しているAndroid版アプリの完成度は、まだまだこれからといったところ。筆者の環境では、アプリをバックグラウンドにしてほかの通信が始まると音がとぎれとぎれになって聴きづらいといった点もあり、「プレ放送」の間に早急に対処してほしい部分は多い。

音の良さに価値を感じられるか

 放送の中での紹介を含め、「i-dio」で積極的にアピールされているのは“地上波最高音質”と謳う音質だ。現在でも「i-dio」の音声データのビットレートはAAC形式の320kbpsで、これは音楽CDをパソコンに取り込む際の設定では「高音質」に分類される領域だ。個別に楽曲を購入する配信サービスでも、例えば「mora」ではAAC形式、320kbpsのデータで販売している(ハイレゾを除く)。

 音楽をとりまく環境は、ハイレゾ市場の勃興でスペック面では大きな飛躍の段階にあり、またサービス面では定額制音楽配信サービスが次々と登場したことで、音楽とのつきあい方、ビジネスモデルにも不可逆の変化が起きている。「i-dio」がこうした変化する市場のどこにフィットしていくのか、現時点で指摘するのは難しいが、無料を基本とした放送波のサービスでも「音質」を明確なポイントとしたことで、実際に体験した筆者には明確にそれが特徴であると感じられた。

 「i-dio」の魅力は、「音の良さを体験して、価値を感じられるかどうか」にかかっていると言えそうだ。ちょっといいイヤホンやヘッドホンを使っている、音にこだわったBluetoothスピーカーを使っている、そんなユーザーにとっては、パケット通信とは無関係の無料の放送波で配信サービスと同等の高音質な音楽が聴ける、というのは気になるところではないだろうか。作業中のBGMには十二分な音質で、かかっている曲が気になってボリュームを上げても、しっかりとした音質で楽しめる。

 非常に個人的なことを言えば、高音質→オタク→声優という勝手な論法から、「音泉」や「響」で提供されているような声優・アニメ関連の番組とか、ニコニコ動画の生放送と絡むとか、もう少しはっちゃけたチャンネルや番組も欲しいところだ。

 現在の「プレ放送」段階では、アプリの完成度、番組構成や内容にラインナップ不足の印象が残るのは仕方のないところだが、魅力の片鱗はしっかりと感じられている。