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CESから見える2011年のケータイ&スマートフォン市場

法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows 7」「できるポケット Xperiaをスマートに使いこなす 基本&活用ワザ150」「できるポケット+ GALAXY S」「できるポケット iPhone 4をスマートに使いこなす基本&活用ワザ200」(インプレスジャパン)など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。Impress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。


 1月6日〜9日にかけて、米ネバダ州ラスベガスにおいて、世界最大のコンシューマエレクトロニクスの展示会「2011 International CES」が開催された。Audio & Visualなどの家電製品を対象にした展示会だが、パソコンをはじめ、スマートフォンやタブレット端末など、IT及びモバイル関連製品も数多く出品される展示会でもある。すでに本誌には展示会のレポート記事が掲載されているが、ここでは日本市場との関わりを中心に、筆者の目から見たレポートと今後の展望について、お伝えしよう。

グローバル市場との関わりが増える日本のモバイル市場

 この10年近く、日本のユーザーにとって、海外のケータイやモバイル製品の市場は、近くて遠い存在だった。独自性の強いと言われる日本市場にとって、海外で発表、発売される製品は、必ずしも我々が体験できる製品やサービスではないかもしれなかったからだ。

 しかし、ここ数年、iPhoneをはじめとしたスマートフォンが欧米市場においてヒットを記録し、それを受ける形で、日本でも昨年あたりから本格的にスマートフォンやタブレット端末の市場が起ち上がりつつあり、昨年はソニー・エリクソンの「Xperia」やサムスンの「GALAXY S」「GALAXY Tab」など、グローバル市場で展開される製品が日本市場においても一時的に品切れを起こすほどのヒットを記録している。

 一方、国内向けを中心としてきた端末メーカーや関連企業が海外市場へ展開する動きも増えてきている。日本市場が飽和したという見方もあるが、各社とも今後の成長を期待するために、日本市場で培ったさまざまなノウハウを活かしながら、米国や欧州、中国、インドなどにも製品やサービスを展開しようという構えだ。

 少し前振りが長くなってしまったが、こうした状況を踏まえたうえで、今回の2011 International CESの様子を見ながら、今後の日本市場への影響や展望などについて、紹介しよう。ちなみに、展示会そのもののレポート記事については、本誌をはじめ、僚誌「PC Watch」「AV Watch」などにも多数、掲載されているので、ぜひ、そちらも合わせて、ご覧いただきたい。

 

数カ月以内の国内登場が期待されるXperia arc

プレスカンファレンスのプレゼンテーションでは、3D対応製品に次ぐ扱い。プレス関係者の反響もかなり良かった
Xperia arcはMidnight BlueとMisty Silverの2色をラインアップ。どちらも他製品にはない存在感と美しさがある

 今回の2011 International CESで発表された数々の製品の中で、日本のユーザーにとって、もっとも注目すべき製品は、やはり、ソニー・エリクソンの「Xperia arc」をおいて、他にないだろう。Xperiaはグローバル市場において、2009年に「Xperia X10」が発表され、国内ではNTTドコモが2010年4月から「Xperia SO-01B」として販売を開始し、国内市場においても2010年を代表するヒット商品のひとつに成長したのは、読者のみなさんもよくご存知の通りだ。

 今回発表された「Xperia arc」は、その後継モデルに位置付けられるものだ。基本的なデザインコンセプトは継承しながら、約8.7mmのスリムボディに仕上げ、狭額縁化された4.2インチの液晶ディスプレイを搭載する。手に持ったときの印象も弧を描くように仕上げられた背面、手になじむ曲面を描いた側面などと相まって、スリムながらも非常に持ちやすく、操作しやすい印象だ。このクラスのディスプレイを採用すると、ボディサイズが大きくなり、片手で持ったときに親指がディスプレイの対角位置に届きにくいようなケースもあるが、男性の手であれば、十分に操作できる形状に仕上げられている。

 ディスプレイについては、国内のケータイなどでも採用例が増えているガラス面とディスプレイ面を密着させる仕様を採用し、光の反射を抑え、視認性を向上させている。こうした仕様を採用していない他機種と並べてみると、その差は歴然とするレベルだ。この視認性と画質向上に貢献しているのがソニーの液晶テレビ「BRAVIA」で培われた高画質技術を活かした「MOBILE BRAVIA ENGINE」の搭載だ。今回の出展に合わせ、同エンジンの効果の有無を比較した映像を見ることができたが、全体的な色合いなども含め、明確にその差がわかるほどの画質向上が見られた。

 ハードウェア面でもうひとつ特徴的なのは、カメラのセンサーにソニー製「Exmor R for mobile」を採用し、これにF値2.4という明るいレンズを組み合わせているという点だ。会場内で試した範囲なので、評価は限定的だが、暗いところへ向けた撮影でもきちんと被写体を捉えることができている。

 ところで、Xperiaと言えば、昨年4月の発売時はAndroid 1.6を採用し、昨年秋にグローバル市場の製品とともにAndroid 2.1へのバージョンアップが開始されている。このバージョンアップについては、業界内でも「かなり苦労したのではないか」という声が聞かれた。今回のXperia arcは正式にリリースされたばかりのAndroid 2.3(GingerBread)を採用しているが、従来モデルでの経験も踏まえて、搭載する機能をうまくアプリケーションで実現し、将来的なバージョンアップに備えている。もちろん、バージョンアップが担保されているわけではないが、経験に基づいた仕様構成はユーザーにとって、見えにくい部分ではあるものの、安心して購入できるポイントだろう。

 さて、気になる発売時期についてだが、ニュースリリースで「日本を含む世界のいくつかの国で、第1四半期から順次発売」と書かれていることから、順当に考えれば、今年の早いタイミングで、NTTドコモから登場すると考えていいだろう。もしかすると、昨年と同じように、4月1日発売になるかもしれないが、いずれにせよ、日本のユーザーにとって、この春、もっとも期待できるスマートフォンのひとつと言えるだろう。

ディスプレイはガラス面のエアギャップをなくすことで、色合いもかなり鮮明になった印象 すでに日本語フォント、日本語メニューを搭載。すぐにでも日本市場投入が可能な仕上がり

4G LTEへと舵を切る米Verizon

700MHz帯を利用したLTEを「4G」を銘打ち、積極的にアピールする米Verizon

 昨年12月24日、国内ではNTTドコモが「Xi(クロッシィ)」のサービス名でいち早くスタートさせたLTEだが、米国でもVerizonが12月からサービスを開始している。今回の2011 International CESでは、Verizonがサービス開始当初に提供されていたUSB接続のデータ通信アダプタに加え、スマートフォンやタブレット端末、Wi-Fiルーター、LTE内蔵ノートPCなど、全10機種を発表している。

 ところで、LTEについてだが、これは過去に本誌の記事などでも触れてきたように、W-CDMA、HSPAに続く、携帯電話の通信規格として標準化が進められてきたもので、W-CDMAやCDMA2000 1xに代表される3Gの最終進化形であるため、これまでは「3.9G」などの名称で語られてきた。これに対し、米Verizonは「LTE=4G」と位置付け、今回の2011 International CESでも積極的にアピールしている。ちなみに、同様の「4G」という表現は、HSPA+を採用する米T-Mobile、WiMAXを展開する米Sprintなども使っており、アメリカでは「高速データ通信=4G」のような認知が定着しつつあるようだ。

 さて、今回、Verizonは会期中に行われたプレスカンファレンスで、全10機種を発表したのだが、その発表はかなり華々しいものだった。製品を供給する台湾HTC CEOのピーター・チョウ氏、サムスン電子 無線事業部長 社長の申 宗均(JK Shin)氏、サービスを提供するSkype CEOのTony Bates氏など、モバイル市場のビッグネームが相次いでステージに登場し、VerizonのLTEサービスをサポートしていく旨をアピールするという内容だった。日本と米国の慣習の違いというのもあるが、これだけのビッグネームが一事業者の新サービスのために、わずか2分ずつステージ上でコメントし、その後は一切、登場しないなどという演出は、ちょっと日本では考えられないものだ。

 こうした演出もさることながら、やはり、10機種にも及ぶLTEの新製品をラインアップに加えてきたことも注目される。具体的には、スマートフォンが台湾HTCの「HTC ThunderBolt」、韓国LGエレクトロニクスの「LG Revolution」、米Motorolaの「DROID Bionic 4G」、韓国サムスンの「Samsung 4G LTE Smartphone」の4機種、タブレット端末が米Motorolaの「XOOM」と韓国サムスンの「4G LTE-enabled Samsung Galaxy Tab」の2機種、モバイルWi-Fiルーターが米Novatelの「MiFi 4510L Intelligent Mobile Hotspot」と韓国サムスンの「Samsung 4G LTE Mobile Hotspot」の2機種、そして、ノートパソコンが米HPの「Compaq CQ10-688nr」と「HP Pavilion dm1-3010nr」の2機種という構成だ。

スマートフォンやタブレットを含め、一気に10機種を発表した米VerizonのLTE対応製品ラインアップ 米VerizonのLTE対応スマートフォン4機種。左から台湾HTCの「HTC ThunderBolt」、韓国サムスンの「Samsung 4G LTE Smartphone」、米Motorolaの「DROID Bionic 4G」、韓国LGエレクトロニクスの「LG Revolution」。この内、いくつかは年内にも日本市場に登場?

 ただ、プレスカンファレンスで見た限り、実際に操作ができたのはスマートフォンの4機種のみで、その他については電源が入らない状態だった。電波についても端末が開発中ということもあり、プレスカンファレンスではWi-Fiを使ったり、通信ができない状態のものばかりだった。会場の出展ブースに展示されていた実機は、LGエレクトロニクスの「LG Revolution」がLTEの電波をつかんでいたが、通信速度は計測することができなかった。実機の背面もほんのりと暖かく、電池残量もハイペースで減っていく印象だったが、LTE対応スマートフォンはベースバンドチップやCPUの熱対策、電力消費の抑制などがキーワードになってきそうだ。

 LTEについては、NTTドコモが今春にもLTE対応のモバイルWi-Fiルーターをリリースすることが明らかになっており、年内にもLTE対応スマートフォンが登場すると噂されているが、米国に比べ、日本の携帯電話ネットワークは高速かつ安定していると言われており、なかでもNTTドコモのネットワーク品質に対する評価は高い。そのため、現状ではそれほど通信環境に対する不満が大きくないが、そのことを鑑みると、海外でLTE対応スマートフォンが登場したからと言って、国内でもすぐに登場することを期待するのではなく、ある程度、関連チップの世代が進み、十分な実用レベルに達した段階でLTEスマートフォンに手を出すことを考えるのが賢明と言えるのかもしれない。

 

日本とは違う方向性で進化する米国のタブレット端末

 冒頭でも触れたように、International CESは「Consumer Electronics」というタイトルの通り、元々、一般消費者が使う家電製品を中心にした展示会だ。近年はパソコンやモバイル機器、カーエレクトロニクス製品なども扱われるようになり、現在では非常に多彩な製品やサービスが出展されるようになってきたわけだが、今回はこうしたさまざまなジャンルの製品が連携するような方向性が模索されているような印象もあった。その具体的な例のひとつがタブレット端末だ。

 国内で販売されるタブレット端末としては、今のところ、アップルの「iPad」、サムスンの「GALAXY Tab」、シャープのメディアタブレット「GALAPAGOS」などがよく知られている。この他に、auの「biblio Leaf」やソニーの「Reader」が登場するなど、全般的にタブレット端末は「電子書籍端末」としての方向性が強く打ち出され、我々ユーザーもそういった認識を持っている。

ソニーのプレスカンファレンスでは日本でも近日公開の映画「グリーン・ホーネット」の俳優が登場 ※Panasonicが出品した10インチのタブレット端末では、テレビとの連携によるオンラインサービス利用をデモ

 これに対し、米国市場向けのタブレット端末は、電子書籍端末やモバイルノートの置き換え的な存在だけでなく、テレビやセットトップボックス、ひいては家電製品に至るまで、さまざまな機器と連携するためのコントローラーや情報端末のような方向性が打ち出されている。米国は日本のように、テレビ番組を録画する文化があまりないが、その代わり、CATVによる多チャンネル放送が普及し、Netflixなどのストリーミング放送も人気を得ているなど、ネットワーク経由のテレビ関連サービスが数多く提供されている。こうしたサービスを利用するとき、テレビのリモコンだけで操作をするのではなく、家庭内のネットワークで接続されたタブレット端末などを利用しようという考えだ。こうしたテレビとの連携は、パナソニックの出展した「VIERA Connect」でも提案されており、そこにゲームなどのエンターテインメント機能を付加するなど、さまざまな工夫が見られる。

 また、テレビだけでなく、他の家電製品にも連携を拡げようとしているのがLGエレクトロニクスだ。会期中に行なわれたプレスカンファレンスでは、テレビだけでなく、冷蔵庫や洗濯機、掃除機とも連携し、さまざまな情報をタブレット端末やスマートフォンで参照したり、コントロールするソリューションが提案されていた。もちろん、International CESというイベントだからこそ、提案できる内容とも言えるわけだが、単純にインターネットを閲覧する端末、電子書籍を読むだけの端末といった切り口ではなく、もっと広い使い道があることを意識させようとしているのは確かだ。

海外メディアからも高い注目を集めたシャープのメディアタブレット端末「GALAPAGOS」

 ただ、テレビ連携の方向性が打ち出されているからと言って、電子書籍端末的なアプローチがまったく意識されていないかというと、そうでもない。たとえば、シャープのプレスカンファレンスでは、70インチのAQUOSクアトロンとともに、国内でも販売されているメディアタブレット「GALAPAGOS」がお披露目されたのだが、これが海外のプレス関係者にはかなり興味を持たれたようで、プレスカンファレンス終了直後は壇上のGALAPAGOSの周囲にカメラを持った人だかりができるほどの人気ぶりだった。会場の展示でも一般来場者だけでなく、テレビなどのメディアが実機を手に取りながら、しきりに撮影をしていたのが印象的だった。米国市場で液晶テレビなどを展開するシャープが開発したタブレット端末ということで、期待を寄せているようだ。

Android 3.0(Honeycomb)搭載の米MotorolaのXOOM。ビデオによるデモが中心。通信モジュールの交換で他方式にも対応可能という

 ところで、今回の2011 International CESでは、まさに『百花繚乱』と呼べるほど、数多くのメーカーからタブレット端末が登場した。プレスカンファレンスはもちろん、展示会場でも多くの製品がデモに使われていた。こうした数多くのタブレット端末の中でも注目を集めたのは、前述の米MotorolaのXOOMだろう。XOOMはLTE対応のタブレット端末ということもあるが、それ以上に、発表されたばかりのAndroid 3.0(開発コード:Honeycomb)を初搭載したことにある。

 スマートフォンではAndroid 2.3が登場したところなのに……と考えてしまいそうだが、Android 3.0は基本的にタブレット端末専用という位置付けのバージョンで、ユーザーインターフェイスなどが従来とは大きく異なる。会場では実機によるデモンストレーションが行われていたが、このデモンストレーションはタブレット端末でAndroid 3.0のユーザーインターフェイスを紹介するムービーを再生し、その内容に合わせながら、画面に指を近づけ、操作しているように見せるという、まるでラスベガスのマジックショーのような演出だった(笑)。

 現地で会った関係者や他の記者との情報交換をした範囲では、おそらく実際に動作するAndroid 3.0が見られたのは基調講演のステージで紹介したときのみで、それ以外は「マジックショー」がくり広げられていたようだ。ただ、だからといって、Android 3.0がまったく未完成ということではなく、現時点で展示会のデモに利用できるほどのバージョンには仕上がっていないということだろう。XOOMは第1四半期にVerizonから発売されるため、2月に開催される「Mobile World Congress 2011」、3月に開催される「CTIA WIRELESS 2011」などでは、もう少し完成度を高めたモデルが見られるのではないかと推察される。

昨年発表されたBlackBerryのタブレット端末。従来のBlackBerry OSとはユーザーインターフェイスも大きく異なる

 タブレット端末については、ここで説明したように、日本と海外(主に米国)では提案されている方向性が違うため、今後、どのように日本に導入されてくるのかはわからないが、今回、出品された製品の豊富さから考えると、日本向けにもかなり多くのタブレット端末が登場することになるかもしれない。そして、それらが日本の製品やサービスとうまく連携するような形を実現できれば、国内市場では昨年の『スマートフォン元年』に続き、『タブレット端末元年』と呼べるほど、普及が進むことになるかもしれない。

 

求められる利用シーンの拡大

CASIOはスマートフォンとBluetoothで連携が可能な腕時計をデモ。時刻や着信などを通知可能。今後、同社の腕時計の標準機能にしたいそうだ

 今回の2011 International CESでは、この他にもいろいろな製品が登場した。ここでは紹介しなかったが、日本のユーザーに関係するもので言えば、昨年発表された「Windows Phone 7」の日本語対応がアナウンスされたり、前述のLGエレクトロニクスの「LG Revolution」には、PCでおなじみのNVIDIAによるデュアルコアCPUが搭載されているなど、気になる動向は非常に多い。

 ただ、全体を通して見えてくるのは、ケータイやスマートフォン、タブレット端末などが単なるひとつの製品として登場しただけでなく、さまざまな製品やサービスと連携する活用も提案されているということだ。ケータイに直接、関係がある話ではないが、昨年、国内ではソフトバンクが提案する「光の道」が話題になった。その際、光ファイバーを全世帯に導入するという提案に対し、「インフラも大切だが、それ以上に利用を拡大することの方が重要だ」という意見が多く聞かれたが、まさにそれと対比するような傾向が今回の2011 International CESでは見られたという印象だ。

 前述のように、昨年来、国内市場はスマートフォンの普及が進んでいるが、単純に製品が売れるかどうかということだけでなく、それをどのように使っていくのか、何に活かしていくのかが国内市場においてもひとつのテーマになってくるのではないだろうか。

 



(法林岳之)

2011/1/13 12:39