法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

新設計で生まれ変わったハイスペックスマホ「ARROWS NX F-06E」

「ARROWS NX F-06E」

 ケータイ時代から他社をリードする機能と使いやすさで支持されてきた富士通製端末。スマートフォンでは各社向けに「ARROWS」シリーズを展開してきたが、なかでもハイスペックを追求したモデルは、多くのユーザーからのアツい支持を得てきたことで知られる。今回、NTTドコモの夏モデルとして発表された「ARROWS NX F-06E」は、これまでの「ARROWS X」シリーズとは違い、まったくの新設計で生まれ変わったモデルだ。発売前のモデルをひと足早く試用することができたので、早速、その印象をレポートしよう。

「ARROWS」と言えば?

 スマートフォンやケータイに限ったことではないが、一般消費者が使う製品には製造するメーカーごとの個性があると言われる。たとえば、クルマはその個性やキャラクターが最も顕著に表われたジャンルと言えるが、ケータイやスマートフォンの世界はどうだろうか。ユーザーが持つイメージとしては、キャリアに対するものもあるし、メーカーごとにイメージもある。スマートフォンで言えば、プラットフォームごとの個性、サービスプロバイダーごとのキャラクターもありそうだ。こうした個性やキャラクターは、それぞれの企業がこれまでに提供してきた製品やサービスをユーザーが体験し、その中でも積み上げられてきたものだが、それが必ずしも企業の意図した方向に表われなかったり、妙に誤解されてしまうようなケースも往々にしてある。

 今回、紹介するNTTドコモの夏モデル「ARROWS NX F-06E」は、その型番からもわかるように、富士通が開発したスマートフォンだ。富士通と言えば、ケータイ時代から他社をリードする機能や使いやすさで支持され、中でもシニア向けの「らくらくホン」、メールや通話、電話帳などの情報を強固に守る「プライバシーモード」など、ユーザーが求める使いやすさと機能を着実に提供してきたメーカーだ。かつて、iモード端末全盛の時代、2強と言われた「N」や「P」にはないテイストを持つ端末をいくつも世に送り出す富士通を「通好みの端末を作るメーカー」と評する関係者も多かった。

 スマートフォンについては、初期にWindows Mobile搭載端末などをNTTドコモ向けに提供してきたが、2011年8月発売の「F-12C」を皮切りに、Androidスマートフォンの開発を進め、昨年にはNTTドコモと富士通を代表する「らくらくホン」シリーズ初のスマートフォンとなる「らくらくスマートフォン F-12D」を開発し、各方面から高い評価を得た。

Windows Mobile 6搭載の「F1100」(2008年3月発売)
「らくらくスマートフォン F-12D」

 しかし、その一方で、富士通が開発するAndroidスマートフォンが全てにおいて高い評価を受けていたかというと、必ずしもそうとは言えない部分がある。富士通はスマートフォンやタブレット製品に「ARROWS」というブランドネームを与え、さまざまな製品ラインアップを展開してきたが、一部のユーザーは「ARROWS」、そして、その前身でもある「REGZA Phone」という名前に対して、あまりいい印象を持ってないかもしれない。勘のいい本誌読者であれば、もうお気づきだろうが、NTTドコモ向けの「ARROWS X」、au向けの「ARROWS Z」などに代表される富士通製スマートフォン数機種は、ハードウェアのスペックこそ優れているものの、必ずしも安定した動作が得られなかったり、不具合などのトラブルが頻発してしまい、不評を買ってしまったからだ。

 筆者自身も富士通製スマートフォンを何機種か購入し、実際に使ってきたが、ホームアプリをはじめとした機能などは、富士通らしい「気が利いている」という印象があるものの、連続使用時間が長くなったり、高負荷のアプリを使い続けると、搭載するCPUが熱を持ち、動作が不安定になるケースが何度となく、見受けられた。もちろん、この2年ほどの間に登場したAndroidスマートフォンの多くは、プラットフォームやチップセットなどが急速な発展途上中にあったため、どのモデルも多かれ少なかれ、発熱やソフトウェア的な不具合という問題を抱えていたが、ARROWSのハイスペックに期待するユーザーが多かったこともあり、同製品の不評が際立ってしまった感もあった。

 さて、前置きが長くなったが、NTTドコモの夏モデルとして発表された「ARROWS NX F-06E」は、富士通としても今夏のフラッグシップモデルに位置付けられているが、そのネーミングは「ARROWS X」から「ARROWS NX」に変更されている。このネーミングの変化は、単なる仕切り直しというわけではなく、もう一度、基本に立ち戻り、「New」「Next」という意味合いを込めた「新生ARROWS」として、スタートすることを表わしている。

 では、具体的にどこが変わったのかという話になるが、やはり、最も大きいのはCPUがNVIDIA製Tegra 3(当初はテキサス・インスツルメンツ製OMAP)からクアルコム製Snapdragon 600に変更されたことだろう。富士通としては、これまでもミッドレンジのモデルや他事業者向けのモデルなどで、クアルコム製Snapdragonを搭載してきたが、フラッグシップモデルとしての搭載は初めてであり、今回はモデムチップについてもクアルコム製を採用している。チップセットのみですべてが決まるわけではないが、実際の利用シーンでもユーザーからの不安がもっとも多く寄せられていたCPUが他社と同様のものに変更されたことで、まずはひと安心できる環境のベースができたという印象だ。

 この他にもボディデザインをはじめ、さまざまなところが変更され、全体的なイメージも大きく変わった印象だが、ARROWSシリーズならではの「全部入り」のハイスペックは、しっかりと受け継がれている。約5.2インチのフルHD液晶ディスプレイをはじめ、3020mAh大容量バッテリー、64GBの大容量メモリ、1630万画素カメラ、フルセグ対応テレビ、急速充電など、各社の夏モデルの中でも群を抜いたハイスペックを実現し、ユーザーが思う存分、スマートフォンを楽しめる環境を整えている。もちろん、富士通製端末ならではの「ヒューマンセントリックエンジン」を中心とした使いやすさもしっかりと磨き込まれており、スマートフォンを買い替えるユーザーだけでなく、はじめてのユーザーにも安心して購入できるモデルとして、仕上げられている。

質感の高いボディに約5.2インチのフルHD液晶ディスプレイを搭載

「ARROWS NX F-06E」背面

 基本に立ち戻り、新たな設計で生まれ変わった富士通製スマートフォンのフラッグシップモデル「ARROWS NX F-06E」だが、実機の印象はどうだろうか。

 まず、ボディはワイドでスクウェアなデザインを採用し、側面にリアルメタルのパーツを備え、パーツに型番を刻印するなど、全体的に精悍なイメージに仕上げられている。ディスプレイサイズが大きいため、ボディ幅が大きそうに感じられるが、3.0mmの狭額縁を実現したこともあり、ボディ幅は70mmに抑えられている。ボディの厚みも9.9mmに抑えられているため、手に持ったときの印象はそれほど大きさを感じさせない。背面はマットに仕上げられ、指紋などが付きにくく仕上げられているが、本来の背面塗装に本物のダイヤモンド粒子を加え、さらにウルトラタフコートplusと呼ばれるコーティングを併用することにより、通常の塗装に比べ、約3.5倍の耐久性を実現しているという。長く使うことを考えると、こうした塗装面での工夫はユーザーとしても安心できる。

 本体左側面には音量キーと電源キー、背面にはカメラと指紋センサー、赤外線通信ポート、底面にはキャップを備えたmicroUSB外部接続端子、上面には3.5φのステレオイヤホン端子、microSDメモリーカードとmicroSIMカード(ドコモminiUIMカード)のスロットを備える。本体はIPX5/IPX8の防水、IP5Xの防じんに対応しており、充電は付属の卓上ホルダか、上面のmicroUSB外部接続端子を利用する。卓上ホルダ用の接点は背面下部にあり、卓上ホルダには横向きにセットする。3020mAhの大容量バッテリーは本体に固定する形で搭載されているが、急速充電に対応しているため、ちょっとした空き時間にもすぐに充電することができる。

 CPUが従来のTegra 3からSnapdragon 600 APQ8064T/1.7GHz クアッドコアに変更されたことで、同じクアッドコアでもかなりの省電力化が期待できるが、従来モデルで苦労してきた省電力が今回のモデルの省電力化にも活かされている。省電力のための「NX!エコ」は「やんわり」「しっかり」「オリジナル」の3つのレベルで設定することができ、電池残量や時刻などに応じて、動作モードを変更することができる。電池残量については、ステータスバーなどでも確認できるが、リアルタイムで消費電力を確認できる「バッテリーモニターセンサー」、バックグランドで動作するアプリの電池消費を知らせる「アプリ電池診断」などにより、省電力性能の可視化を実現している。電力消費が多いと言われるWi-FiについてもWi-Fiエリアから外へ移動したことを検知し、自動的にWi-FiをOFFに切り替える「Wi-FiオートON/OFF」にも対応する。3020mAhという今夏のスマートフォン最大クラスの大容量バッテリーを搭載している強みもあるが、今回試用した範囲では今夏に登場する各社のスマートフォンと比較してもトップクラスのロングライフを実現している印象だ。

機種名 実使用時間(ドコモ調べ)
ARROWS NX F-06E 約69.4時間
AQUOS PHONE ZETA SH-06E 約62.5時間
Xperia A SO-04E 約51.2時間
GALAXY S4 SC-04E 約45.1時間

 また、CPUと並んで、本体の操作感に大きく影響すると言われるRAMについては、2GBを搭載し、本体メモリ(ROM)についても64GB、メモリーカードは最大64GBのmicroSDXCメモリーカードに対応する。タッチパネルのレスポンスを含めたサクサク感は、まったくストレスを感じさせないレベルに仕上げられている。

 通信環境については、モバイルデータ通信がdocomo LTE「Xi」の受信時最大100Mbps、送信時37.5Mbpsサービスに対応し、Wi-Fiは2.4GHz/5GHzで利用できるIEEE802.11a/b/g/nに対応する。Wi-Fiの簡易設定はBUFFALOの「AOSS」、業界標準の「WPS」に対応し、Wi-Fiテザリングは最大8台まで利用することができる。BluetoothはVer.4.0対応だが、高音質なオーディオプロファイルが利用できる「aptX」にも対応しており、対応するBluetoothヘッドホンで高品質なサウンドを楽しむことができる。

 本体前面には冒頭でも触れたように、5.2インチのフルHD対応液晶ディスプレイを搭載する。昨年の冬モデルまでの主流だったHD表示のディスプレイに比べ、解像度は約2.3倍になり、後述するフルセグチューナーの映像もくっきりと映し出すことができる。ちなみに、この5.2インチという対角サイズは、今夏に登場した各社のスマートフォンとしてはもっとも大きく、「ハイスペックのARROWS」の面目躍如といった印象だ。ディスプレイ前面には特殊強化ガラスが採用されており、キズなどをつきにくくするほか、「サラサラコートディスプレイplus」と呼ばれる独自のコーティングにより、従来モデルよりも一段と指滑りをよくしている。スマートフォンを購入すると、液晶保護シートを貼るユーザーが多いが、ARROWS NX F-06Eについてはこの指先のサラサラ感を活かすのであれば、敢えて、液晶保護シートを貼らないのも手だ。

フルHDを活かすフルセグチューナー搭載

フルセグ対応チューナーを搭載

 ここ数年、ハイエンドのスマートフォンでは、1280×720ドットのHD表示が可能なディスプレイが主流とされてきた。これに対し、昨年末あたりから少しずつ増えてきつつあるのが1920×1080ドットのフルHD表示が可能なディスプレイで、ARROWS NX F-06Eも前述のように、5.2インチのフルHD対応液晶ディスプレイを搭載する。

 ディスプレイが高解像度化することはより多くの情報を表示できるため、ユーザビリティの向上にもつながるはずだが、ケータイ時代からのディスプレイの進化を振り返ってみると、そこには必ず高解像度を活かすサービスや機能が存在した。スマートフォンでも同じで、HD表示が主流になった背景にはブラウザや地図といったコンテンツが利用できるだけでなく、HDサイズで提供される映像配信サービスなどが利用できたことも大きい。フルHD表示が可能なディスプレイを搭載したスマートフォンは昨年末から数機種が登場しているが、これまでは既存のコンテンツに高解像度表示のみをアドバンテージとしてきたのに対し、ARROWS NX F-06EはフルHDを最大限に活かせる「フルセグ」対応テレビチューナーを搭載する。

 これまで、スマートフォンやケータイのテレビ視聴としては、ワンセグが広く普及してきた。昨今のテレビ離れの影響もあり、一時は「テレビはいらないよ」という声も聞かれたが、2011年の東日本大震災では広い情報伝達手段として再認識され、現在、国内で販売されるスマートフォンではほぼ標準機能となりつつある。ただ、ワンセグは地上デジタル放送で利用する電波の12セグメントの内、1セグメントのみを利用し、解像度も320×180ドット(320×240ドットとも表記)と低いため、ディスプレイサイズの大型化や高解像度化に伴い、スペック不足が指摘されてきた。これに対し、フルセグはその名の通り、地上デジタル放送の12セグメントを利用するもので、家庭で視聴している地上デジタル放送とまったく同じものが視聴できる。

 実際にいくつかの場所で視聴してみたところ、ビル内や地下街といった場所は厳しいものの、屋外や木造家屋、歩行中などでは十分に視聴できた。ワンセグの仕様が低すぎるため、そもそも比較すること自体に無理があるが、やはり、一度、フルセグで番組を視聴してしまうと、もはやワンセグは見られたものではないと感じてしまうほどの差がある。ただ、移動中などはテレビ放送波の電波状況が刻々と変化するため、カーナビのテレビ機能などと同じように、電波状況に応じて、ワンセグとフルセグを自動的に切り替えることができる。フルセグの録画には対応していないが、DTCP-IP/DTCP+に対応しているため、家庭内のブルーレイディスクレコーダーと連携させ、外出先で録画番組を視聴するといった使い方ができる。ちなみに、AndroidスマートフォンではDTCP-IP対応が標準になりつつあるが、スマートフォンのDTCP+対応はARROWS NX F-06Eがはじめてで、ソフトバンク向けに発売されるARROWS A 202Fが2機種目ということになりそうだ。

 前述のように、ARROWS NX F-06Eは防水防じんに対応しているため、卓上ホルダが付属するが、本体を卓上ホルダにセットすると、フルセグやワンセグ、NOTTV、YouTubeの動画、本体に保存された写真などを全画面で表示するシアターモードが利用できる。卓上ホルダにもひと工夫が加えられ、本体をセットしたとき、背面のスピーカーから出る音を反響させ、前面及び周囲に拡大する構造を採用している。ちなみに、音響面ではDolby Digital Plusに対応し、専用アプリケーションにより、各コンテンツや自分の好みに合わせた設定のサウンドを楽しむことができる。

カメラは1630万画素の「EXMOR RS for mobile」を搭載

 カメラについては、1630万画素の裏面照射型CMOSセンサー「EXMOR RS for mobile」に、富士通製の画像処理エンジン「Milbeaut Mobile」を組み合わせたものを搭載する。このカメラのスペックも今夏のモデルではトップクラスになるが、シャッター押下時のタイムラグをなくする「ゼロシャッターラグ」、マルチ測光による「マルチAE」、シーンに合わせた撮影ができる「自動シーン認識」などの機能も搭載する。ただ、少し他の製品と方向性を変えてきたのがユーザーインターフェイスで、スマートフォンのユーザー特性を考慮し、非常にシンプルで使いやすくまとめている。たとえば、選べる撮影モードは「静止画」「連写」「動画」「パノラマ」「QRコード」のみで、実際の利用シーンにおいて、このほかに変更する項目があるとすれば、HDR撮影やセルフタイマーくらいに絞り込まれている。

 本誌のインタビュー記事でも触れられているが、これはむやみにカメラの多機能化を追求するのではなく、その労力をカメラの本質である「気持ち良く撮ること」に振り向けているという。その一方で、撮影時の操作については、アイコンをタッチするだけでシャッターが切れ、ピンチイン/ピンチアウトによるズーム操作、被写体をタッチしてのオートフォーカス、シャッターボタン長押しでの連写など、非常にわかりやすく作り込まれている。

富士通ならではのユーザビリティ

 従来のARROWS Xに代表されるように、富士通と言えば、ハイスペックを追求するメーカーだという認識があるかもしれないが、冒頭でも触れたように、ケータイ時代から見てきた印象から言えば、富士通はユーザビリティを重視する端末を開発してきたメーカーであり、それは「通好みの端末を作るメーカー」という評価につながってくる。現在の富士通製スマートフォンで言えば、さまざまなセンサーなどを活かしたヒューマンセントリックエンジンによる多彩な機能が挙げられる。

 まず、ディスプレイでは昨今、話題になることの多いブルーライトの成分を軽減する「ブルーライトカットモード」を搭載するほか、周囲の明るさや光に合わせた色合いに調整する「インテリカラー」、照度センサーで屋外に居ることを検知して輝度やコントラストを調整する「スーパークリアモード」などを搭載する。らくらくホンを手掛けてきた富士通らしく、年齢に合わせた色再現を可能にする「あわせるビュー」、移動中であることを検知して文字サイズを自動的に拡大する「あわせるズーム」などのユニークな機能も用意されている。

 通話を使いやすくする音声サポート系の機能については、らくらくホンから受け継がれた富士通製端末の真骨頂だが、ARROWS NX F-06Eには周囲が騒がしくても相手の声が聞こえやすい「スーパーはっきりボイス」、聞き取りやすい音質に調整する「あわせるボイス2」、反響音をおさえる「響(ひびき)カット」、相手の声をゆっくり聞かせる「ゆっくりボイス」、騒音を検知して自分の声をクリアに伝える「スーパーダブルマイク」、歩行中や走行中などの状態を検知し、通話音声を聞きやすく調整する「ぴったりボイス」などが搭載される。

 富士通らしい「気の利いた」機能については、これまでのモデルでも周囲の状況を検知して着信音の音量を調整する「気配り着信」、ユーザーが端末を手に持っている間は画面が消えない「持ってる間ON」、意図せずに画面が回転したときに振って元に戻す「戻ってシェイク」などが搭載されてきたが、今回は端末をひっくり返してアラームや着信音、バイブの振動などを止める「ふせたらサウンドオフ」が新たに搭載された。

「スライドディスプレイ」

 他製品にはないちょっと面白い機能としては、発表会で公開されたときから話題になっている「スライドディスプレイ」が挙げられる。5.2インチのフルHD液晶ディスプレイを搭載したことで、ボディ幅を約70mmに抑えたものの、高さ(長さ)は約139mmとかなりのトールサイズになったため、手の大きな筆者でも片手で持った状態で、画面最上段のステータスパネルを開く操作にはちょっと苦労する。しかし、画面最下段の右端にある[↓]のアイコンをタップすると、画面が全体的に下方向へスライドさせることができる。筆者の指で届くことは言うまでもないが、あまり手の大きくないユーザーでもこの機能を使えば、指の届かないエリアを大幅に減らすことができる。

 セキュリティ面については従来モデル同様、スイッチ付指紋センサーを装備し、「プライバシーモード」「NX!電話帳」「NX!メール」「アプリケーションロック」「パスワードマネージャ」「microSDパスワード」などの機能を搭載する。指紋センサーについては改めて説明するまでもないが、スイッチを押下することで、画面をONに切り替え、指紋センサーに指でなぞることでロックが解除できる。Androidスマートフォンのロックとしては、パターンやパスワードが広く利用されているが、解除しやすさと安全性のバランスを考慮すると、やはり、指紋センサーの快適さは一歩抜きん出ている。

 ただし、誤解して欲しくないのは、指紋センサーのセキュリティが強固であるのではなく、「指を通すだけで解除できる」という手軽さが優れているということだ。よく話のネタにもなるが、指紋センサーでロックをかけておいても寝てる間に奥さんがダンナの指先を指紋センサーに通し、ロックを解除したなどという笑えない事態も起こり得る。

 プライバシーモードについては、ブラウザのブックマークをはじめ、ギャラリーの内容、LINEなどのチャットアプリの新着通知などを非表示にできるものだ。このプライバシーモードに対応した「NX!電話帳」「NX!メール」はダウンロードする必要があるが、特定の相手の電話帳や発着信履歴、メールなどの情報を非表示にできる。残念ながら、NTTドコモのメールサービスの仕様上、spモードメールは非対応だが、Gmailやプロバイダーのメールは利用できるため、安心して利用できる。アプリケーションロックはその名の通り、アプリごとに起動時のロックをかけられるもので、ギャラリーや電話帳などのアプリをロックすることで、一時的に他人に端末を渡したときなどにも内容を見られる心配がない。こうしたアプリの起動ロックは本来、プラットフォーム標準でサポートしておいて欲しいくらいの機能だ。

NX!ホーム

 ホームアプリについては、Android標準の「ランチャー」、NTTドコモの「docomo Palette UI」、富士通オリジナルの「NX!ホーム」が搭載されているが、富士通製端末ならではの機能を活かすことを考えれば、「NX!ホーム」の利用がおすすめだ。アプリ一覧の表示順をはじめ、ホーム画面のテーマ、ループ表示、ホーム画面に表示するアイコンのデザインなどをカスタマイズできるほか、操作のレスポンスもNX!ホームの方が快適という印象だ。

 ちなみに、今夏のモデルでは画面に触れずに操作できる「ホバリング」が話題になることが多いが、ARROWS NX F-06Eも対応しており、ブラウザのスクロールやギャラリーの表示などで、画面に触れない操作を可能にしている。ただ、個人的な印象を書かせてもらうと、このホバリングよりもARROWS NX F-06Eでは画面をタッチしたときに、そのアイコンの背景部分の表示が反応する演出の方がよほど重要だと考えている。おそらく、これはユニバーサルデザイン的な観点で実装されていると推察されるが、はじめてスマートフォンを触るユーザー、あまりタッチ操作に自信がないユーザーにとっては、視覚的にもタッチしたことがわかるため、安心して利用できるはずだ。こうした細かいところの積み重ねこそが富士通ならではのユーザビリティにつながっている印象だ。

ツートップにひけを取らない完成度の高さと満足度

 国内市場において、ハイスペックモデルを中心にラインアップを展開してきた富士通。その最新モデルであり、今夏のフラッグシップモデルに位置付けられるのがARROWS NX F-06Eだ。これまでもARROWS Xシリーズや前身のREGZA Phoneではハイスペックを追求するあまり、必ずしもユーザーが満足できる環境を提供することができず、一部には非常に厳しい評価を与えられることもあった。

 今回のARROWS NX F-06Eは富士通として、もう一度、基本に立ち戻り、ユーザーが快適に利用できる環境を実現するべく開発されたスマートフォンだ。5.2インチのフルHD液晶ディスプレイをはじめ、実績のあるクアルコム製Snapdragon 600 APQ8064T/1.7GHz、3020mAhの大容量バッテリー、フルセグ対応テレビチューナー、大容量64GBメモリと2GB RAM、約1630万画素カメラなど、他製品を圧倒するスペックを実現しているが、安定した動作環境を実現すると共に、富士通ならではのユーザビリティについてもしっかりと磨きがかけられている。

 今夏はNTTドコモのツートップ戦略により、製品への注目度に偏りがあるとされるが、ARROWS NX F-06Eはツートップにもまったくひけを取らない完成度の高さと満足度を実現しており、ハイスペックを求めるユーザーに安心しておすすめできるモデルと言えるだろう。

法林岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows 8.1」「できるポケット docomo AQUOS PHONE ZETA SH-06E スマートに使いこなす基本&活用ワザ 150」「できるポケット+ GALAXY Note 3 SC-01F」「できるポケット docomo iPhone 5s/5c 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるポケット au iPhone 5s/5c 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるポケット+ G2 L-01F」(インプレスジャパン)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。