法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

NTTドコモ「海外1dayパケ」で考える国際ローミングの料金

 日々の生活において、手放せない存在であるスマートフォンや携帯電話。そんな身近なアイテムは、他の国と地域に出かけたときも使いたくなるもの。そこで各社は国際ローミングサービスを提供してきたが、特にスマートフォンが普及し始めてからは、ユーザーの利用意向が一段と高まっている。今回はNTTドコモが昨年から提供を開始した海外パケット定額サービス「海外1dayパケ」を試しながら、国際ローミングの料金について、考えてみよう。

1年間に約1800万人超が海外旅行へ

 読者のみなさんがもっとも直近で海外に出かけたのは、いつだろうか。日本は四方を海に囲まれた国であるため、諸外国などに比べると、他国と地域との接点が少ないという指摘もあるが、日本旅行業協会の統計によれば、2012年には、1年間に約1800万人以上が海外旅行に出かけている。老若男女を問わずに単純計算すると、国民の6人に1人が1年に1回程度、海外に出かけていることになる。

海外でスマートフォンを利用するうえで、もっとも便利なもののひとつが地図アプリ。現在地がわかるだけでなく、ルートもすぐに検索できる

 かつて携帯電話業界にとって、海外での利用はどちらかと言えば、面倒な使い方のひとつと認識されていた。2000年代はじめに第3世代携帯電話のサービスが提供され始めた頃から、少しずつ国際ローミングが意識されるようになり、日本に居るときと同じように、電波の届く範囲であれば、いつでもどこでも通話やメールが使えるという利便性が注目された。しかし、その一方で、国内で利用するときと違い、通話料が高く、着信時に国際転送料がかかるうえ、国内で契約している家族割引やパケット定額サービスなどの適用が受けられないため、よく情報を調べないまま利用しまい、高額請求を受けてしまうケースが数多く報じられた。

 しかし、ここ数年、国内市場でスマートフォンが普及したこともあり、国際ローミングに対する認識も少しずつ変化してきている。ケータイ時代は主に緊急時などの連絡手段として利用されるスタイルが一般的だったが、スマートフォンではメールやWebページの閲覧をはじめ、地図の確認、翻訳アプリや辞書の活用、SNSによるコミュニケーションなど、新しい使い方がグッと拡がってきている。

 また、料金面については、2010年7月にソフトバンクが1日1480円(2011年6月30日まで)で海外渡航中もパケット通信を定額で利用できる「海外パケットし放題」を開始し、海外渡航時のパケット定額サービスの口火を切った。同年9月からはNTTドコモが「海外パケ・ホーダイ」、同年10月からはauが「海外ダブル定額」で追随している。海外パケット定額サービスは、国内でパケット定額サービスを契約しているユーザーを対象に、海外渡航先の特定の事業者に接続した場合に限り、パケット通信料を約24.4MB(ソフトバンクは25MBと表記)までは1日当たり1980円、それを超えても1日当たり最大2980円で使い放題にするという二段階定額の割引サービスとなっている。ただ、スマートフォンでの利用を考えると、ひとつのアプリのアップデートで数十MBを消費してしまうこともあり、実質的には1日当たり2980円の定額プランとなっている印象だ。また、各社とも海外パケット定額サービスの提供開始後、料金やサービス内容に少しずつ変更があり、現在はNTTドコモとauが渡航先で、基本的にはどの事業者に接続してもパケット定額が適用されるのに対し、ソフトバンクは特定の事業者に接続する仕様となっている。

NTTドコモが2013年12月から「海外1dayパケ」を開始

 国内で利用している料金の感覚から考えれば、必ずしも安いとは言えないが、海外渡航時のパケット通信で青天井の高額請求を受ける心配がなくなったことで、ここ数年、海外でのスマートフォンの利用は少しずつ拡大しつつある。取材などで海外に出かけたとき、スマートフォンを使い、Webページをチェックしたり、SNSなどでコミュニケーションを楽しむ日本人の旅行者を見かけるようになった。

 そんな中、昨年12月、NTTドコモは、新たに「海外1dayパケ」という海外パケット定額サービスを開始した。これまで提供されてきた前述の海外パケット定額サービスは、海外渡航時にパケット通信を定額で利用できるものの、1日単位で課金されるため、1週間といったスパンで旅行をすることを考えると、かなり負担が大きくなってしまうのが難点だった。同時に、1日の単位が日本時間の午前0時からカウントされるため、渡航先に到着した時間帯によっては、短時間の利用であるにもかかわらず、1日分を請求されたり、渡航先での活動と日本時間のタイミングが合わず、余分な課金が増えるなどの不満もあった。

 これに対し、新たに提供された海外1dayパケは、同じく1日単位の課金であるものの、利用開始から24時間単位という区切りになった。いつでも好きなタイミングで使い始められ、24時間経過後はユーザーが再び操作をしない限り、課金されないので、安心して使うことができる。料金は利用する国と地域によって、980円、1280円、1580円のいずれかが課金される。

料金
(24時間)
エリア
980円香港、台湾、韓国、グアム、サイパン、シンガポール、タイ、マレーシアなど
1280円カナダ、中国、オーストラリア、イギリス、イタリア、オランダ、ドイツ、フランスなど
1580円アメリカ、ハワイ、フィリピン、ニュージーランド、スイス、スウェーデン、ロシア、ブラジル、メキシコ、エジプトなど

 「海外1dayパケ」の利用条件としては、Xi/FOMAの総合プランを契約し、WORLD WINGの契約をしていること、事前に海外1dayパケに申し込んでおくことなどが挙げられる。利用できるデータ通信量については、利用開始から24時間、30MBまでで、これを超えたときは送受信時の速度が16kbpsに制限される。30MBを超えたあと、もう一度、利用開始の操作をすれば、その時点から24時間、もしくは30MB分のデータ通信の利用をスタートできる。ただし、海外パケ・ホーダイの料金が1日当たり最大2980円であることを考慮すると、海外1dayパケを日本時間の1日のうちに、980円や1280円の対象地域で3回以上、1580円の対象地域で2回以上、くり返し利用開始の操作をすると割高になってしまう。

シンガポールで海外1dayパケを試してみた

 「海外1dayパケ」はデータ通信量の制限が30MBと少ない印象があるものの、24時間単位の課金で使いすぎの心配がないことが魅力だ。実際にどんな使い勝手なのかを確認するため、現地での滞在時間が約24時間の渡航を計画し、試してみることにした。

海外1dayパケは事前に申し込んでおく必要がある

 目的地はシンガポールで、スケジュールとしては日本を土曜日の夕方に出発し、現地には土曜日の23時過ぎに到着。帰国便は日曜日の深夜0時過ぎに現地を発ち、月曜日の早朝に成田空港に到着する計画だ。シンガポールではホテルに宿泊するため、スマートフォンを利用する実際の利用時間は最大でも16時間程度になることが予想される。ただし、海外1dayパケを利用するスマートフォンだけでは仕事にならないので、他のスマートフォンなどもいっしょに持ち込み、海外1dayパケを利用するスマートフォンについては用途を限定して、使うことにした。

 まず、海外1dayパケを利用するには、前述の通り、事前に申し込みが必要になる。申し込みはドコモショップなどでも手続きができるが、もっとも簡単なのは利用したい端末からdメニューにアクセスし、「お客さまサポート」で手続きをする方法だろう。「dメニュー」→[お客さまサポート]→[各種お申込・お手続き]の順に選び、ネットワーク暗証番号を入力後、表示された一覧から「国際サービス」の「海外1dayパケ」を選んで、申し込む。このとき、いっしょにNTTドコモの国際ローミングサービス「WORLD WING」の利用ガイドの送付も申し込める。ちなみに、この「お客さまサービス」などでの海外1dayパケの申し込みは、あくまでも申し込みであって、利用開始ではないところに注意したい。つまり、この段階から課金が始まるわけではなく、海外渡航時に「海外1dayパケ」のサービスを利用できる状態にしただけということになる。

 「海外1dayパケ」の申し込みが完了すると、手続きをした電話番号に確認のSMSが送られてくる。お客さまサポートでの手続き時、受付確認メールの送信を選んでいれば、ドコモメール/spモードメールアドレスにも確認のメールが届く。

dメニューからお客さまサポートにアクセスすると、申し込みができる。
申し込みが受け付けられるとSMSが届く。画面はiPhoneだが、Androidスマートフォンでもまったく同じ内容のものが届く

Androidの場合

 また、今回はAndroidスマートフォンとiPhoneの両方で試すことにしたが、Androidスマートフォンについては海外1dayパケを利用するための「海外1day開始」というアプリが提供されているので、Google Playからダウンロードし、インストールしておく。ただし、この「海外1day開始」アプリをインストールするには、海外パケ・ホーダイで利用している「ドコモ海外利用」アプリをアンインストールしなければならない。

海外1dayパケを簡単に使うためのアプリ「海外1day開始」が配布されている
「海外1day開始」を利用するには「ドコモ海外利用」アプリをアンインストールすることを求められる
海外1dayパケ対象の国と地域に到着すると、SMSが送られてくる。

 渡航先に到着して、スマートフォンに電源を入れると、NTTドコモから「海外1dayパケ」対象エリアであることを知らせるSMS(メッセージ)が届く。ちなみに「海外1dayパケ」を申し込んでいないときは、従来同様、「海外パケ・ホーダイ」対象エリアである内容のメッセージが届く。Androidスマートフォンを利用しているときは、この段階ではまだ設定画面のモバイルネットワーク設定は変更しない。

 続いて、「海外1day開始」のアプリを起動すると、現在、どの事業者に接続されているか、パケット通信のデータローミングが有効かどうかが示される。[利用開始]をタップすると、アプリから「*135*1#」に発信され、海外1dayパケの利用が開始される。この段階でモバイルネットワーク設定を表示し、「データ通信を有効にする」「データローミング」にチェックを付け、データ通信ができるようにする。海外1dayパケの利用を開始する前に、これらの設定を変更してしまうと、「海外1dayパケ」の対象にならない状態で通信が開始されてしまうので、注意が必要だ。

海外1day開始アプリを起動する。この段階ではまだデータローミングはOFFのまま
利用開始ボタンをタップすると、確認画面が表示される
利用開始のSMSを受信したら、Androidスマートフォンの設定画面の「モバイルネットワーク設定」のデータローミングにチェックを付ける。すでに付いているときは、一度、チェックを外してから、もう一度、付ける

iPhoneの場合

 一方、iPhoneについてはアプリが提供されていないため、iPhoneの「電話」アプリを利用して、海外1dayパケの利用を開始する。電話アプリを起動し、ダイヤルボタンの画面で「*135*1#」を入力して、[発信]ボタンをタップすれば、海外1dayパケの利用が開始される。Androidスマートフォン同様、この操作をしたあと、[設定]→[モバイルデータ通信]の画面を表示し、[データローミング]をONに切り替える。先に切り替えてしまうと、海外1dayパケの対象外となるデータ通信が発生してしまい、ムダな通信料が発生してしまう。ちなみに、Androidスマートフォンについても海外1day開始のアプリを使わず、電話アプリから「*135*1#」に発信すれば、同じように海外1dayパケの利用を開始できるが、パケット通信が可能かどうかを画面上で確認できるので、慣れていないユーザーは海外1day開始アプリを利用するのがおすすめだ。

iPhoneの場合は電話アプリを利用して、コマンドを入力し、発信をタップする
海外1dayパケの利用開始が受け付けられると、SMSが送られてくる。画面はiPhoneだが、Androidスマートフォンも同じSMSが送られてくる
iPhoneのときは設定メニューの「モバイルデータ通信」の画面を表示し、[データローミング]をONに切り替える。すでにONのときは、一度、OFFにしてからONに切り替える。国と地域によっては「LTE回線を利用」がONになっていると、正しく動作しないこともあるそうだ

利用量を確認する

 前述のように、「海外1dayパケ」は、シンガポールの場合、980円で24時間、もしくは30MBまで利用できるが、どれくらいの時間が経過したか、どれくらいのデータ量を利用したか確認できる。Androidスマートフォンの場合は海外1day開始アプリで[問い合わせ]をタップ、iPhoneの場合は電話アプリから「*135*2#」とダイヤルすれば、SMSで「海外1dayパケご利用状況」というメッセージが送られてきて、利用状態、利用データ量、利用料金、利用経過時間を確認することが可能だ。

Androidスマートフォンのときは、海外1day開始のアプリで、問い合わせボタンをタップすると、利用状況がSMSで通知される
iPhoneのときは電話アプリで「*135*2#」を入力し、発信をタップする
問い合わせると、海外1dayパケの利用状態、利用データ量、利用料金、利用時間が通知される

 利用データ量については10MB/20MBを超えたとき、利用時間については23時間30分を経過したとき、それぞれを知らせるSMSが送られてくる。利用データ量が30MBを超えたときと24時間を経過したときは、利用を停止することを知らせるSMSが送られてくる。くり返しになるが、この段階で海外1day開始アプリや電話アプリを使い、利用開始の操作をすれば、その段階から海外1dayパケの利用を再スタートすることができる。ただし、新たに課金されることになるので、その点は注意が必要だ。

利用データ量が10MBや20MBを超えると、その都度、SMSで通知される
利用時間が23時間30分になると、30分後にパケット通信が停止される旨がSMSで通知される
利用開始から24時間が経過すると、自動的にパケット通信が停止される。使いすぎる心配はない。もう一度、使いはじめたいときは「*135*1#」へダイヤル発信する

やや心許ない「30MB」という容量

地図アプリは画像データを転送するため、利用データ量が増えてしまう。

 事前に申し込み、渡航先に到着したら、「*135*1#」へのダイヤル発信で利用を開始できる「海外1dayパケ」だが、少し気になるのが“30MB”という利用データ量の制限だ。実際に、どれくらい使えるのかがなかなかつかみにくいが、NTTドコモでは「海外1dayパケ」のWebページにおいて、目安として、写真付きメール3回、Googleマップでの検索が5回、Facebookでの写真投稿が5回、LINEで20文字程度のコメントのやり取り30回、天気などをチェックが20回で、合計29MB程度になるとしている。

 こう表記されると、意外にたくさん使えそうな気がするのだが、実際に使った感覚としては、もっと早くデータ量を消費してしまう印象だ。もちろん、Webページの内容やSNSの投稿数などによって、データ量は大きく違うが、Androidスマートフォンにしろ、iPhoneにしろ、待機中にある程度、バックグラウンドで通信が発生するため、アプリのアップデートが1~2本あった程度で、貴重な30MBの一部を使ってしまうリスクがある。そこで、就寝中など、自分自身が操作しないときは、データローミングをOFFに切り替えたり、できるだけWi-Fiスポットを活用するなど、30MBのデータ量をムダ使いしないように工夫する必要がある。できることなら、もう少し利用できるデータ量に余裕が欲しいところだ。

iPhone 5sとAQUOS PHONE SH-01Fで地図を表示してみた。海外で地図アプリを利用すれば、現在地と周囲の建物などがすぐに把握できる

 また、制限を超えたときの16kbpsという通信速度だが、これもかなり厳しい。Webページを閲覧するのはちょっと時間がかかりすぎ、ドコモメールをチェックしたり、Twitterにコメントを投稿するのがやっとという印象だ。

利用データ量が30MBを超えると、SMSで通知される。これ以降、通信速度は16kbpsに制限される。画面はAndroidスマートフォンだが、iPhoneも同じ内容が送られてくる。

 では、海外1dayパケが実用的ではないかというと、そうでもない。たとえば、海外渡航時にブラウザや地図、アプリなどはまったく使わないが、家族や友だち、同僚などが送ってくるメールなどはチェックしたいという程度の利用であれば、十分役立つ。あるいは、渡航先では基本的にスマートフォンのモバイルデータ通信を利用せず、ブラウザなどはホテルのWi-Fiなどに限って利用するが、どうしても移動中にWebページの閲覧や地図のチェックなど、最小限で使いたいといったニーズにも有効だろう。

 特に、家族や友だちなど、グループで旅行する際、全員が海外パケット定額サービスを利用すると、費用がかさんでしまうが、主に使う人だけが海外パケ・ホーダイなどを利用し、その他の人は海外1dayパケを契約し、必要なときだけ利用するという使い方ができる。たとえば、家族旅行なら、旦那さんは海外パケ・ホーダイ、奥さんは海外1dayパケを契約しておき、奥さんの利用データ量が厳しくなったら、旦那さんのスマートフォンのテザリング経由でアクセスするわけだ。この他にも飛行機の乗り継ぎなどで、最終目的地以外の国と地域に着き、短時間利用したいときなどにも活用できそうだ。いずれにせよ、まったく使わないわけにはいかないが、できるだけ海外での通信費を抑えたいという節約派向けのサービスという印象だ。

各携帯電話会社の国際ローミング以外の選択肢

 「海外1dayパケ」はあまり海外での利用を経験したことがないユーザー、少しでも節約したいユーザーにとっては、有用なサービスと言えそうだが、普段からスマートフォンをいつでもどこでもガッツリ活用しているユーザーにとっては、まったく物足りないサービスということになってしまう。「それなら、現地でプリペイドSIMを買った方が安いじゃん」という声も聞こえてきそうだ。

 改めて説明するまでもないが、今回訪れたシンガポールをはじめ、世界のさまざまな国と地域においては、プリペイド契約のSIMカード(以下、プリペイドSIMカード)が数多く販売されている。SIMロックが施されていない端末を用意できれば、渡航先でプリペイドSIMカードを購入し、スマートフォンを利用することができる。かく言う筆者自身も旅行のたびに各国でプリペイドSIMカードを購入しているし、本誌の「みんなのケータイ」コーナーでも多くの著者陣が海外取材時に渡航先でプリペイドSIMカードを購入した話題を寄稿している。

 こうしたプリペイドSIMカードを利用するメリットは、国際ローミングに比べ、コスト的に割安であることが挙げられる。たとえば、今回訪れたシンガポールで購入した現地の通信事業者、SingTel(シングテル)のプリペイドSIMカードでは、データプランで1日当たり6シンガポールドル(約480円)で2GBまで、3日間で15シンガポールドル(約1200円)で6GBまでといったプランが提供されている。国際ローミングの料金と現地事業者の料金を比較するのは、かなり乱暴な比較だが、単純にユーザーが負担するコストだけを考えれば、その差は100倍を超えてしまう計算だ。もちろん、ネットワークの品質やエリア、国と地域の特性などが違うため、一概に比較できないが、これだけのコスト差があると、否応なしにプリペイドSIMカードを利用したくなるところだ。ちなみに、SingTelの契約者が日本に来たときの国際ローミングの料金は、1日当たり20シンガポールドル(約1600円)となっており、この部分で比較しても日本のユーザーは少し割高と言えるかもしれない。

シンガポールはチャンギ空港内にある両替所でプリペイドSIMカードを購入できる
プリペイドSIMカードを購入すると、ポータブルの旅行用電源変換アダプタセットがもらえた
購入したプリペイドSIMカードは普通サイズとmicroSIMカードの両用タイプ。今回は3G対応のプリペイドSIMカードを購入したが、すでにLTE対応プリペイドSIMカードも販売されているという

 ただ、渡航先でのプリペイドSIMカードの購入と利用は、それなりに敷居の高い使い方でもあり、料金とて必ずしも安くならないケースがあることを覚えておきたい。たとえば、現地に着いたら、プリペイドSIMカードを売っている場所を探し、それぞれの携帯電話事業者の料金プランを調べ、それに基づいた契約をしたり、アクティベーションなどの手続きが必要になる。当然、そこには言葉の問題も絡んでくる。英語圏であれば、まだ望みはあるが、渡航先によってはタイ語やアラビア語のように、判読が難しい言語で表記されているケースも十分に考えられる。もちろん、それはそれで面白いという見方もできるが……。

 ちなみに、今回訪れたシンガポールはプリペイドSIMカードが買いやすく、空港内の一般エリアの両替所で、プリペイドSIMカードを扱っており、すぐに購入し、使いはじめることができた。ただ、1枚あたり50シンガポールドル(約4000円)という値付けになっており、そこから前述の1日6シンガポールドルなどを差し引く形になるため、短期滞在には割高になってしまう。

 プリペイドSIMカードを利用するためのSIMロックされていない端末については、NTTドコモが2011年4月以降に販売した端末が一部の例外を除き、SIMロックの解除に応じていたり、Nexus 4やNexus 5、Nexus 7、アップルが直接販売するiPhone 5s/5cなど、以前よりもSIMロックフリー端末などが入手しやすくなってきている。しかし、対応する通信方式や周波数帯によっては、渡航先で利用できなかったり、GPRSなどの旧世代の通信方式でしか利用できないといったことも起こり得る。これらの情報を渡航前に調べて利用するのは、それなりに手間のかかることだ。

 また、国際ローミングでもなければ、渡航先のプリペイドSIMカードでもない選択肢として、国内でレンタルで利用できる海外向けモバイルWi-Fiルーターも海外渡航時の有用な通信手段だ。基本的にはデータ通信のみの利用になるが、1日1000円前後で利用できるサービスが提供されており、スマートフォンとタブレットなど、複数の端末での利用もしやすい。今回取り上げた海外1dayパケは、この価格帯を意識したサービスということになるが、Wi-Fiで接続するという手間が残るものの、現段階ではモバイルWi-Fiルーターのレンタルに一日の長があるという印象だ。

海外でもっと快適にスマートフォンを使いたい

 冒頭でも触れたように、現在、日本では1年間に約1800万人が海外旅行に出かけると言われている。かつて個人が海外でケータイを利用すると言えば、緊急時の連絡ツール的な位置付けが主流だったが、スマートフォン時代に入り、その使われ方は大きく変化してきてきた。メールやWebページといった基本的な使い方にはじまり、地図アプリやカメラ、辞書、翻訳アプリ、SNSなど、海外旅行らしいスマートフォンの使い方が一般的になりつつある。

 なかでも旅先からのSNSへの投稿などは、旅行中の近況を伝えられるだけでなく、日本で投稿を見ている側も羨ましく思いつつ、いっしょに旅を体験するような面白さもある。ここのところ、為替相場が円安傾向に触れたため、海外旅行のお得感は少し薄れたが、海外旅行者の数は年々増え続けている。今後、幅広い層が旅行に出かけることで、旅先でのスマートフォンやタブレットの活用もひとつの大きなテーマになりそうだ。

 これまで主要三社の海外パケット定額サービスは、内容に若干、差があるものの、実質的には1日の上限である2980円を支払うケースがほとんどで、各社横並びに近い状態だった。今回取り上げたNTTドコモの海外1dayパケは、利用できるデータ量が限られているため、ライトユーザーや節約ユーザー向けのプランという印象だが、それでも新しい選択肢が増えたことは歓迎できるだろう。特に、24時間単位の課金やダイヤルコマンドによる利用開始と停止など、国内ではあまり採用されてこなかった使い勝手を取り入れ、アプリによるコントロールができるなど、料金面以外に注目できる点は多い。これを機に、各社の海外パケット定額サービスで適切な競争が起き、より一層、ユーザーがスマートフォンの旅を楽しめる環境が整っていくことを期待したい。

法林岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows 8.1」「できるポケット docomo AQUOS PHONE ZETA SH-06E スマートに使いこなす基本&活用ワザ 150」「できるポケット+ GALAXY Note 3 SC-01F」「できるポケット docomo iPhone 5s/5c 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるポケット au iPhone 5s/5c 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるポケット+ G2 L-01F」(インプレスジャパン)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。