法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

美しく、薄く、大きく生まれ変わった「iPhone 6」「iPhone 6 Plus」

 9月9日、米クパチーノのFLINT CENTERで開催されたSpecial Eventにおいて、新たに発表された「iPhone 6」と「iPhone 6 Plus」。これまでのiPhoneからデザインを一新し、ディスプレイサイズも2機種がラインアップされるなど、次なる時代へ向けた新しいiPhoneとして、生まれ変わっている。今週19日から日本をはじめとする9つの国と地域で販売が開始されるが、ひと足早く実機を試すことができたので、そのファーストインプレッションをお送りしよう。

新しいステージに『大きく』進化を遂げたiPhone 6/6 Plus

 今日、日本はもちろん、世界中でもっとも知られ、常にその動向が注目を集めているスマートフォンと言えば、やはり、アップル(Apple)の「iPhone」をおいて、ほかにない。現在、スマートフォンの市場にはさまざまな企業が参入しているが、端末本体だけでなく、アプリ、アクセサリー、サービス、それを取り巻く人々や文化、社会などを含めたトータルの存在感と影響力を考えると、おそらく「iPhone」以上のものは存在しないだろう。

 2007年に初めてGSM方式対応の初代「iPhone」が発表されたばかりのときは、多くの人にとって、まだ見ぬ未知のデバイスという印象だったが、2008年には日本でもソフトバンクから「iPhone 3G」が発売され、翌2009年の「iPhone 3GS」によって、それまでのケータイとは一線を画したスマートフォンの新しい潮流を生み出した。2010年にはメタルフレームを採用したソリッドなデザインの「iPhone 4」、翌2011年には後継となる「iPhone 4S」が発売され、iPhoneがスマートフォンのトレンドを定着させることになった。このとき、国内ではソフトバンクに加え、auでも販売がスタート。2012年の「iPhone 5」はLTEネットワークに対応。2013年には「iPhone 5s」「iPhone 5c」の発表を機に、ついに国内最大キャリアであるNTTドコモが扱うことが発表され、国内主要3社からiPhoneが発売されることになった。こうして着実にiPhoneが支持を拡げてきた背景には、iPhoneが代を追うごとに完成度を高め、新しいユーザー体験を提案しながら、着実に進化を遂げてきたことが挙げられる。この数年で、市場には数多くのライバル機種が登場し、各社と激しい競争をくり広げているが、iPhoneにはiPhoneならではの洗練された世界観や美しいデザインがあり、ハードウェアとソフトウェアが一体化されているからこそ、実現できるユーザー体験が使う人、持つ人をひきつけて離さないわけだ。

 国内はもちろん、世界的にも安定した人気を持つiPhoneだが、今回、アップルはデザインを一新した「iPhone 6」「iPhone 6 Plus」という2つのモデルを発表した。昨年も「iPhone 5s」と「iPhone 5c」という2つのモデルをリリースしたが、昨年は“iPhone 5sという後継機種”に、“iPhone 5cというカジュアル路線のモデル”を追加したという印象だった。今回の「iPhone 6」と「iPhone 6 Plus」は、基本的なデザインのテイストやハードウェアの仕様をほぼ共通化しながら、ディスプレイサイズとボディサイズが異なる2つのモデルがラインアップされる形となっている。これはiPhoneをはじめとするスマートフォンが世界に普及していく中、単純に市場での価格などを追求するのではなく、アップルがもっとも重視する、ユーザー体験に対するニーズについて、きちんと答えを提案してきたという意味を持つ。2つのモデルに細かい部分の仕様の違いはあるが、これまでのiPhoneから買い替えるユーザー、他のスマートフォンから乗り換えるユーザー、はじめてスマートフォンを持つユーザーなど、それぞれが求めるもの、期待するものに応えられるようにラインアップされているわけだ。

iPhone 6
iPhone 6 Plus

 「iPhone 6」「iPhone 6 Plus」は9月9日の米国での発表後、9月12日から予約の受付がスタートしている。最初に販売される9つの国と地域の予約数は、受付開始からの24時間で過去最高の400万を突破したと発表されており、従来モデル以上の世界中のユーザーの関心の高さをうかがわせる。そして、いよいよ9月19日には国内でも販売が開始されるわけだが、ひと足早く、実機を試用する機会を得たので、ここではファーストインプレッションをお伝えしよう。なお、本稿では最終版の製品を使用したが、実際に出荷されるものとは一部、差異が残されている可能性もある。同時に、各携帯電話事業者ごとの独自アプリなどについてはインストールされていない状態なので、これらの点はご留意いただきたい。また、「iPhone 6」「iPhone 6 Plus」に搭載される「iOS 8」については、従来のiPhone 5sでアップデートした環境について、本誌に詳細なレポートが掲載されるので、そちらも合わせて、ご覧いただきたい。

側面が柔らかな曲線で仕上げられたスリムボディ

 さて、外見からチェックしてみよう。今回のiPhone 6とiPhone 6 Plusは、ディスプレイサイズの違いにより、ボディサイズも異なるが、基本的なデザインのコンセプトは共通化されており、外見が持つ印象はほぼ似通っている。ボディは酸化皮膜処理されたアルミニウムで作られ、ステンレススチールによるパーツを組み合わせて構成される。

iPhone 6

 iPhone 6とiPhone 6 Plusのボディで特徴的なのは、側面や4つの角が柔らかな曲線で仕上げられ、手にやさしくフィットする形状であることが挙げられる。前面のディスプレイのガラス面もエッジ部分がボディとシームレスにつながるように、曲線で仕上げられた磨きガラスを採用しているため、端末を片手で持ち、親指で操作をしても指や手の当たりが非常になめらかだ。これまでのiPhone 5/5s/5cやiPhone 4/4Sのソリッドな仕上がりの感触とは、対照的な印象と言えるだろう。

 本体右側面には電源ボタン、イジェクトピンで取り出すSIMカードスロット、左側面には着信/サイレントスイッチと音量ボタン、底面にはLightningコネクタを利用した外部接続端子、3.5mm径ヘッドセットコネクタをそれぞれ備える。前面のディスプレイ下には従来モデル同様、Touch ID指紋センサーが内蔵されており、本体のロック解除などに利用できる。

底面

 実際の操作に影響する範囲では、大画面化でボディがやや大きくなったことに伴い、電源ボタンが上部から操作しやすい右側面に移動した。3.5mm径ヘッドホンコネクタが下部にレイアウトされたが、これはiPod touchなどと共通のレイアウトということになる。背面中央にはおなじみのロゴが入り、上部左上にはiSightカメラとTrueToneフラッシュが内蔵されている。上部と下部にはテープのようなものが貼られたよう見えるパーツが使われているが、これは内部にアンテナなどがレイアウトされているためだろう。ちなみに、今回のiPhone 6とiPhone 6 Plusが新たに対応したNFCのアンテナは、上部に内蔵されている。ボディカラーはゴールド、シルバー、スペースグレイが用意され、この部分のカラーはボディカラーによって異なる。

背面にはテープのようなライン。アンテナのレイアウトが影響しているとみられる

 気になるボディの大きさについてだが、iPhone 5sとの比較は次のようになる。

iPhone 6 PlusiPhone 6iPhone 5s
高さ158.1mm138.1mm123.8mm
77.8mm67.0mm58.6mm
厚さ7.1mm6.9mm7.6mm
重量172g129g112g

 この表を見てもわかるように、手に持ったときのサイズ感に大きく影響するボディ幅については、iPhone 5sに比べ、iPhone 6 Plusは19.2mm、iPhone 6は8.4mm、広くなっている。感覚としてはiPhone 6でひと回り、iPhone 6 Plusでもうひと回り大きくなったという印象だ。この数値だけを見てしまうと、かなりワイドになったように捉えられそうだが、実際に手に持ってみると、側面のラウンドした形状に加え、iPhone 5sよりも薄い、7mm前後の仕上がりのおかげで、ストレスなく持つことができ、手にフィットする印象だ。もちろん、人によって、手の大きさも指の長さも違うため、どちらのモデルも誰にとっても持ちやすいとまでは言わないが、少なくとも大きさについては、同じ4.7インチや5.5インチのディスプレイを搭載した他機種と比べても遜色がないか、同等以上の持ちやすさを実現していると言えるだろう。

 ちなみに、美しく仕上げられたボディを保護するため、iPhone 6とiPhone 6 Plus向けに、アップル純正アクセサリとして「Silicon Case」「Leather Case」が販売されている。

4.7インチと5.5インチのRetina HDディスプレイを搭載

 冒頭でも述べたように、世界中で高い人気を得ているiPhoneだが、ここ1~2年、ユーザーからはさまざまな要望が語られることが増えてきている。そのひとつがディスプレイだ。

 iPhoneは初代モデルのGSM版iPhoneからiPhone 3GSまでが320×480ドット表示が可能な3.5インチ、iPhone 4とiPhone 4Sでは640×960ドット表示が可能な3.5インチ、iPhone 5とiPhone 5s/5cでは1136×640ドット表示が可能な4インチのディスプレイをそれぞれ搭載し、着実に進化を遂げてきた。しかし、ここ1~2年、ライバル機種では5インチ以上のディスプレイを搭載するモデルが一気に増え、「iPhoneは使いやすいけど、もう少し大きい画面が欲しい」という声が聞かれるようになってきた。ただ、少し振り返ってみると、初代iPhoneが登場した当時はフィーチャーフォンなどが数多く存在したため、初代iPhoneのディスプレイを見て、「こんなに大きな画面は……」と語られており、ユーザーにとっての「大きな画面」の意味が変わってきたとも言える。

 また、ディスプレイサイズを大きくすると、前述のように、ボディサイズも大きくなってしまううえ、ディスプレイの解像度が高くなれば、アプリの開発やバッテリー消費などにも影響があることも懸念材料だ。

 今回、アップルはiPhone 6に1334×750ドット表示が可能な4.7インチ、iPhone 6 Plusには1920×1080ドット表示が可能な5.5インチのRetina HDディスプレイを搭載することで、大画面を望むユーザーの期待に応えている。ただ、今回の大画面化は単純に要望に応えたというわけではなく、製品としてバランスのいいものが作れる環境になったと判断できたことも関係している。アップルとしては大画面化に伴い、ディスプレイのクオリティが下がってしまったり、かさばるデバイスになることは避けたかったとしており、0.1インチ刻みでさまざまなボディサイズを試作し、それぞれに合う解像度をいくつも試した結果、最終的に今回採用した2つのサイズを導き出しているという。

 また、今回のディスプレイには広角表示が可能な「デュアルドメインピクセル」という技術が採用されている。あまりスマートフォンやケータイでは見かけない用語だが、IPS液晶パネルで実現されている技術のひとつで、視野角を広くできることをメリットとしている。同じサイズの液晶パネルではないため、一概に比較できないが、iPhone 5sと並べても非常に明るく、視野角は確実に広いと言えそうだ。

iPhone 6 PlusiPhone 6iPhone 5s
対角サイズ5.5インチ4.7インチ4インチ
解像度1920×1080ドット1334×750ドット1136×640ドット
画素密度401ppi326ppi326ppi
最大輝度500cd/m2
コントラスト比1300:11400:1800:1

 ディスプレイの仕様について、従来のiPhone 5sと比較したのが上の表だ。対角サイズと解像度、画素密度に注目すると、iPhone 6はHD(1280×720ドット)表示よりも少し高解像度だが、従来のiPhone 5sと同じ画素密度であり、コンテンツやアプリなども同じように楽しめることがわかる。

 これに対し、iPhone 6 PlusはフルHD表示が可能で、現在のハイエンドクラスのスマートフォンとほぼ同等の表示を可能にしている。これまでのiPhone 5s/5cなどは基本的に同じ解像度のディスプレイを搭載し、他のiPadなどともアスペクトレシオを揃えていたが、iPhone 6 Plusはこれに合致しないため、アプリなどの互換性が気になるところだ。しかし、この点についてはクオリティの高いスケーラーを搭載することで、解像度に合わせた表示を可能にしており、既存のアプリやコンテンツも問題なく利用できるとしている。ちなみに、アップルが提供する開発キットを利用すれば、新しいサイズにオートレイアウトすることも可能だという。おそらく、今後はこの手法により、iPadなどにも高解像度のディスプレイが搭載されることになるのかもしれない。

 表示周りについては、もうひとつ気になるのが実際の視認性だ。iPhoneは操作性がシンプルであるため、はじめてスマートフォンを使うユーザーにもわかりやすいという定評があり、40代以上のシニア層にもおすすめできると言われてきたが、iPhone 5s/5cまでは文字が小さく、読みにくいという制約があった。今回のiPhone 6 Plusは5.5インチでフルHD表示という高解像度に対応しているため、小さな文字も見やすく、視認性に優れる。同時に、iPhone 6とiPhone 6 Plusの両機種とも設定画面の[画面表示と明るさ]-[画面表示の拡大]を選ぶと、アイコンや文字を同じデザインのまま、拡大表示する機能も備えている。ちなみに、この拡大表示機能は初期設定時にも設定することができる。設定時にはプレビュー画面で確認し、起動後に切り替えると、本体の再起動後に有効になる。iPhoneは魅力的だが、画面表示で躊躇していた40代以上のユーザーにとって、かなり便利な機能と言えそうだ。

 また、ディスプレイサイズが大きくなり、ボディの長さも伸びたことで、画面上段に表示されているアイコンなどがタップしにくくなりそうだが、Touch IDボタンをダブルタッチ(ボタンの押下ではなく、タッチ)することで、画面表示を下半分に移動する機能も備える。この機能は標準搭載以外のアプリを利用しているときでも動作する。大画面を活用するために、ぜひ覚えておきたいコマンドだ。

 さらに、iPhone 6 Plusについては、画面を横向きに構えたとき、ホーム画面をはじめ、メールやメッセージ画面など、対応アプリを横向きに表示する機能を備えている。

タイムラプスも楽しめるカメラ

 ディスプレイサイズやボディサイズが注目されがちなiPhone 6とiPhone 6 Plusだが、ハードウェアについても次の時代へ向け、着実に進化を遂げている。

 CPUは64ビットアーキテクチャの「A8」が採用され、「M8」モーションコプロセッサと組み合わせて搭載される。製造は20nmプロセスを採用し、20億個のトランジスタを集積することで、従来のA7チップと比べ、CPUで25%アップ、GPUで50%アップの性能向上を図ると共に、最大50%のエネルギー効率を向上させている。

 バッテリー容量は数値が公開されていないが、カタログスペックを見る限り、iPhone 5sと比較して、各項目ともiPhone 6で20%前後、iPhone 6 Plusで20~40%前後は結果が向上しており、今まで以上にロングライフで使うことができる。利用環境によって差はあるが、今回試用した短い期間では従来のiPhone 5sよりも長く使える印象が得られた。

 背面にはNFCのアンテナが内蔵されており、米国で10月からサービスが開始される「Apple Pay」で利用する。NFCを利用したソリューションには、Bluetooth対応製品のペアリングやNFC対応端末同士の通信などの機能があるが、アップルでは当面、ApplePayによる決済サービスのみに対応するとしており、日本のユーザーにとってはApplePayの上陸を待つしかなさそうだ。

 本体背面には8MピクセルのiSightカメラが搭載されており、裏面照射型CMOSセンサーとF値2.2の明るいレンズで構成され、レンズ部の隣には自然な色合いでの撮影が可能なTrue Tone Flashを備える。撮影時の機能としては、顔検出、露出コントロールなどが搭載されているが、オートフォーカスについては一般的にスマートフォンで採用される『コントラストAF』ではなく、一眼レフなどで使われている「位相差AF」を採用する。「Focus Pixels」と名付けられた位相差AFは、フォーカスが速く、正確なため、いざというシャッターチャンスを確実に捉えることができる。

 また、短い露出時間に4枚の写真を撮影して、ノイズやぶれの少ない画像を合成する自動手ぶれ補正に対応しており、iPhone 6 Plusについては光学式手ぶれ補正にも対応する。光学式手ぶれ補正はジャイロスコープやM8モーションコプロセッサなどを連動させたもので、暗いところでも被写体のぶれを抑えた撮影が可能だ。動画の撮影については、1080p/60fpsのHDビデオ撮影をはじめ、720p/240fpsのスローモーション撮影にも対応しており、スポーツや乗り物など、動きのある被写体を撮るときに役立つ。動画撮影の手ぶれ補正も対応しており、iPhone 6を持ちながら歩いて撮影をするようなケースでも画面のぶれが抑えられており、全体的にクオリティの高い撮影が可能だ。

 そして、iPhone 6とiPhone 6 Plusのカメラ機能で、ぜひ試して欲しいのが最近人気を集めている「タイムラプス」撮影だ。タイムラプスはインターバル動画とも呼ばれ、風景や植物を連続的に撮影すると、その変化を楽しむことができる。これまでもアプリを利用することで、タイムラプス撮影が可能なものは存在したが、本体のみですぐに撮影できるという点において、iPhone 6のタイムラプスは意外に実用的と言えるかもしれない。

 前面に備えられたFaceTimeカメラはiSightカメラと同じく、F値2.2のレンズを備えており、最大1280×960ドットの撮影が可能にする。世界的に流行する「Selfie(自分撮り)」の画角は光学になっており、自分の顔の前40cm程度の位置に構えて撮影しても幅広いエリアを撮影することが可能だ。

Mac OS X Yosemiteとの連係も面白い

 通信機能については、Category4準拠のLTEに対応しており、FDD-LTEでは受信時最大150Mbps、TDD-LTEでは受信時最大110Mbpsのダウンロードが可能だ。特に、今回はauがUQコミュニケーションズの「WiMAX 2+」、ソフトバンクがWCPの「AXGP」というTDD-LTE方式に対応したサービスを利用できるため、従来のFDD-LTEのネットワークのみを利用していたときよりも通信環境が一段と改善されることになる。

 最大20のLTE対応周波数に対応していることも特筆すべき点で、SIMロックフリー版であれば、世界各国の携帯電話事業者のSIMカードを挿して、LTEネットワークを利用できることになる。海外出張や海外旅行の多いユーザーにとっては、隠れた魅力と言えそうだ。ちなみに、国内の各事業者が販売するモデルについては、いずれもSIMロックが設定されており、他事業者のSIMカードを挿して利用することはできない。

 Wi-Fiについては、従来のIEEE802.11a/b/g/nに加え、IEEE802.11acにも対応しており、理論値ながら、最大866Mbpsの通信が可能だ。市販のIEEE802.11ac対応無線LANアクセスポイントもリーズナブルな価格帯の製品が数多く出荷されており、自宅のブローバンド回線をフルに活かしたいときには有用だ。

 また、アップルが今秋、リリースを予定しているMac OS X Yosemiteとの連係も注目される機能のひとつだ。これまでスマートフォンやタブレットは、基本的に端末のみで利用されることが多かったが、iPhone 6とiPhone 6 Plusに搭載されるiOS 8では、Mac OS X Yosemiteと連係することが可能で、同じiCloudアカウントを設定し、同じWi-Fi環境に接続していれば、iPhoneにかかってきた電話や送られてきたメッセージをMac OS X Yosemiteが動作するMacBook Airなどで応答することができる。実際に、OS X Beta Programで公開されているMac OS X Yosemiteをダウンロードし、筆者宅で試してみたが、作業に集中しているときや外出先でカバンにiPhoneが入っているときなどに、MacBook Airなどで着信に気付くのはなかなか実用的だという印象だ。ちなみに、着信の応答はMac OS X Yosemiteが動作するMacだけでなく、iPadなども含まれるため、自宅などでiPhoneが充電中でもiPadで着信に応答するといった使い方が可能になる。

 さらに、「Handoff」(ハンドオフ)という機能を使えば、iPhoneで入力中のメールの作成画面をiPadやMacに引き継いで仕上げることもできる。メール作成以外にもiPhoneで閲覧中のWebページのリンクをMacで表示したり、MacのSafariで表示中のマップの画面をiPhoneで引き継いで表示することも可能だ。Handoffを利用するにはそれぞれに機器に同じiCloudアカウントを設定するだけで、それ以上は面倒な操作をすることなく、自動的に動作する。現在、利用できるのはメールやマップ、メッセージなど、Mac OS X YosemiteとiOS 8の標準アプリに限られるが、今後、サードパーティのアプリがHandoffをサポートすることにより、iPhoneとMac、iPadを組み合わせた新しい活用術が生まれてくることが期待される。

 この他にもInstant HotspotではMacからiPhoneのインターネット共有(テザリング)を簡単に利用できるようにしたり、iPhoneのメッセージアプリのメッセージをMacから送信できるようにするなど、Macを組み合わせることで、一段とiPhone 6とiPhone 6 Plusを快適に活用できる環境を整えている。iPhone一台でいろいろなことに活用できるのも便利だが、複数の端末を上手に組み合わせて利用できるスタイルは、ビジネスでもプライベートでも活用されることになりそうだ。

美しく、薄く、大きく生まれ変わったiPhone 6とiPhone 6 Plusは「買い」!

 スマートフォンに限った話ではないが、市場で高い支持を得た製品は、往々にして、定番の地位を固めるべく、保守的な傾向が強くなってしまい、新しい変革を起こすことが難しいと言われている。国内市場において、半数近いシェアを持つiPhoneもそういったジレンマを陥りそうな状況だったが、今回のiPhone 6とiPhone 6 Plusはそんな不安を見事に吹き飛ばしてくれたモデルだ。

 これまでのiPhoneで培われてきたユーザビリティの良さやユーザー体験はきちんと継承しながら、ユーザーのニーズに応えた2つのディスプレイサイズをラインアップし、従来モデルから一新したテイストのデザインに仕上げている。しかも単純にディスプレイサイズを大きくするだけでなく、しっかりとユーザー体験の追求にこだわり、これまでのiPhoneから移行するユーザーはもちろん、他製品からの乗り換えユーザー、はじめてスマートフォンを持つユーザーにも応えられるように作り込まれている。

 カメラなどの個々の機能やスペックの追求もさることながら、MacやiPadとの連係が考えられているなど、新しいユーザビリティの追求に踏み出しているところもユーザーとしては興味をひかれるところだ。ぜひ、美しく、薄く、大きく生まれ変わったiPhone 6とiPhone 6 Plusを店頭で手に取り、今までのiPhoneを超えた新しいiPhone 6の世界を一人でも多くのユーザーに体験していただきたい。

法林岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows 8.1」「できるポケット docomo AQUOS PHONE ZETA SH-06E スマートに使いこなす基本&活用ワザ 150」「できるポケット+ GALAXY Note 3 SC-01F」「できるポケット docomo iPhone 5s/5c 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるポケット au iPhone 5s/5c 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるポケット+ G2 L-01F」(インプレスジャパン)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。