法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

堅実なラインアップを揃えたドコモ2015-2016冬春モデル

 9月30日、NTTドコモは「2015-2016冬春モデル 新商品・新サービス発表会」を開催し、2015年秋冬商戦~2016年春商戦へ向けた13機種と新サービスを発表した。

 iPhone 6s/6s Plusの発表から一週間も経たないタイミングでの発表会となったが、今までにない新しいサービスへの取り組みが明らかにされる一方、端末については多様なニーズに応える堅実なラインアップを取り揃えた。発表会の詳細については、本誌の速報記事(※関連記事)をご覧いただきたいが、ここでは今回の発表内容の捉え方とそれぞれの製品の印象などについて、解説しよう。

完成の域に達したスマートフォンの今後

 ここ1~2年、何度となく、くり返し使ってきたフレーズだが、スマートフォンは一定の完成の域に達したと言われ、市場もかなり成熟しつつある。Androidスマートフォンが国内市場で本格的にラインアップに加わった2010年頃から数えて約5年になるが、この間に端末にはおサイフケータイやワンセグ/フルセグ、赤外線通信、防水防じんといった日本仕様が次々と搭載され、各携帯電話会社が『ケータイ』向けに展開してきたコンテンツやサービスも次々とスマートフォン向けに提供された。

 端末についても当初は多くのユーザーが「いかにハズレを引かないか」という視点でパフォーマンスや安定性などに注目していたが、最近では一部に熱問題が指摘された製品があったものの、パフォーマンスについては一般的な用途の範囲であれば、ほとんどのユーザーが不満を持つことがなくなりつつある。バッテリー駆動時間についても端末の省電力性能が高められる一方、比較的、どこでも充電がしやすいという国内事情に加え、モバイルバッテリーが普及しはじめたこともあり、以前ほど、シビアな要求は見かけられなくなってきている。

 サービスについては「OTT(Over The Top)」とも呼ばれるGoogleをはじめとする企業がプラットフォームの強みを活かしたサービスを展開する一方、各携帯電話会社はケータイ時代のコンテンツサービスを活かしたサービスを提供し、国内のサービスプロバイダも各プラットフォーム向けにいろいろなサービスを展開しつつある。スマートフォンへの移行が始まったばかりの頃は、「日本のケータイのサービスがスマートフォンに移行するのは難しいのでは?」といった考えが多く聞かれたが、今やケータイ向けのサービスを提供する方がコスト高になり、逆に従来型のフィーチャーフォンの存続が危うくなりつつあるくらいだ。

 こうした流れの中で、スマートフォンそのものは市場の半分近くまで普及し、売れ行きも前年比で横ばいから微減を記録するなど、市場としてはかなり落ち着いた状況になってきた。これまで各携帯電話会社は毎年のように契約者を伸ばし、サービス加入者を増やすことで成長してきたが、スマートフォン本体のスペックや機能は限界が見え始め、サービスも既存のものはひと通り展開してしまった感があり、全体的に手詰まり感が漂っているような印象すら受ける。企業としてみれば、次の一手がなかなか見えてこない状況になってきたとも言えるわけだ。

 そこで、NTTドコモは2015年夏モデルの発表会において、“「+d」の協創”という新しいコンセプトを打ち出し、他業種の企業との連携で新しいサービスを開拓していくことを発表した。auも夏モデル発表時に明らかにしていた「au WALLET Market」を8月に正式にスタートさせ、auショップという新しい商圏を活かしたビジネスを展開していこうという構えだ。

ドコモが2015年度に入って打ち出した「+d構想」

 今回、NTTドコモは2015-2016年冬春モデルとして、スマートフォン10機種、タブレット1機種、iモードケータイ1機種、モバイルWi-Fiルーター1機種を発表したが、同時に今までとまったく異なる「すきじかん」というサービスを発表した。月額6000円からという料金設定は、NTTドコモがこれまで提供してきたものと一線を画すものになるが、最近、少しずつ増えてきた体験型サービスをNTTドコモを窓口として申し込めるようにすることで、新しいビジネスを確立しようという目論見だ。

蕎麦打ち体験を熱っぽく語った加藤社長

 発表会のプレゼンテーションでは、加藤薰代表取締役社長自ら「蕎麦打ち」と「ガラス工芸」を体験した様子を映し出し、身振り手振りで蕎麦打ちの楽しさをアピールするという力の入れようだ。すきじかんというサービスは、一見、シニア向けのように捉えられがちだが、発表会のトークセッションでCMに出演する俳優の綾野剛さんが「溶接が体験できるのは面白い」と熱弁していたように、若い世代も含め、非日常を体験するサービスとして、幅広く受け入れられる可能性がありそうだ。今のところ、体験コースが開催される場所が関東甲信越に限られているが、今後、拡充する方針ということなので、他の都市圏でも気軽に楽しめるようになりそうだ。「携帯電話会社なのに、体験サービス?」という声があるかもしれないが、逆に、もっともユーザーに近い存在である携帯電話のサービスを提供する会社が仲介するサービスだからこそ、体験してみたいと考える人もいるわけで、明確な価格差が見えてしまう物販よりもユーザーのお得感や楽しさを演出しやすいと言えそうだ。

 いずれにせよ、au WALLET Marketと同じように、各携帯電話会社は今後、携帯電話サービスとは別の分野でのビジネス展開がひとつのカギを握ることになり、その意味においても今回の「すきじかん」のような取り組みは注目できるだろう。

9月30日の発表会会場には加藤社長が作ったガラスの器も

冬春モデルの気になるスペック

 次に、今回発表された2015-2016冬春モデルのラインアップについて、全体の構成などを見ながら、チェックしてみよう。

 まず、メーカー別で見てみると、Xperiaシリーズを展開するソニーモバイルが3機種、AQUOSシリーズのシャープがディズニー・モバイルを含む3機種、富士通が2機種、サムスンが1機種、GoogleとLGエレクトロニクスによるNexusシリーズが1機種、パナソニックがiモードケータイ1機種、Huaweiがタブレットで1機種、NECブランドのNECプラットフォームズがモバイルWi-Fiルーターで1機種といった分布だ。

 これらの内、ソニーモバイル、シャープ、富士通の3社はレンジの異なる複数のモデルを供給しており、NTTドコモのラインアップの中軸を担う。新鮮なところでは発表会当日の早朝に米国で発表されたばかりの「Nexus 5X」で、NTTドコモが扱うNexusシリーズとしては、2011年発売の「GALAXY Nexus」以来ということになる。

発表されたばかりのNexus 5がドコモからも

 また、事前にある程度、予想されていたとは言え、例年、この商戦期のモデルとして発表されてきたGALAXY Noteシリーズの最新モデル「Galaxy Note 5」は、8月の米国での発表会時に関係者が「今のところ、日本での発売はない」と話していたように、NTTドコモのラインアップには加わらなかった。他機種に比べると、あまり万人受けするタイプの端末ではないものの、ペン操作を好む堅実なユーザー層が居ると言われるGALAXY Noteシリーズの最新モデルの採用を見送ってしまったのは、ちょっと残念な印象だ。特に、昨年の「GALAXY Note Edge」がエッジスクリーンという斬新な形状を採用していたため、機種変更を見送っていた「GALAXY Note 3」以前のユーザーは、行き先がなくなってしまったように見えてしまう。

 次に、スペックでは、やはり、ソニーモバイルの「Xperia Z5 Premium SO-03H」が採用した「4Kディスプレイ」が注目される。IFA 2015で発表され、国内投入が確実視されていたが、国内ではNTTドコモのみが扱うことになる。スマートフォン向けとしては世界初の4Kディスプレイであり、フルHD表示の液晶ディスプレイと比較すると、確かに見た目でもすぐにわかるほどの差がある美しさだが、いくつか疑問点も残る。

 まず、「Xperia Z5 Premium SO-03H」の4Kディスプレイは、3840×2160ドットが可能としているが、スペックシートなどを見ると、そこには「SID規格に基づく」という注釈が付けられている。このSIDは「The Society for Information Display」と呼ばれる電子ディスプレイ装置の学会のことで、そこの規格に準拠しているという意味を持つ。もう少し具体的に書くと、注釈が付けられているSDI規格とは、「IDMS(International Committee for Display Metrology)」と呼ばれるディスプレイの評価測定をするための規格を指している。同規格で表記されるディスプレイのスペックは、ディスプレイの解像度を表わしているのではなく、そのディスプレイがどれくらいの表示能力を持っているか、つまり、見た目でどれくらいの表示ができるのかを表わしている。

 これに対し、一般的にテレビなどで使われている「4K」という表現は、JEITA(一般社団法人電子情報技術産業協会)で定められた規格を採用しており、ディスプレイの実際の解像度を表わしている。ちなみに、4K対応テレビが登場したとき、シャープが通常、三原色のサブピクセル構造を四原色のサブピクセル構造にして、これを分割駆動することで、フルHDパネルながら「4K相当」の表示を可能にした「クアトロンプロ」という技術を採用したテレビを発売したが、おそらく、今回の「Xperia Z5 Premium SO-03H」も同様の技術によって、「4K相当」を実現していると推察される。もちろん、スマートフォンとテレビでは商品のジャンルが違うため、4Kと表記してもかまわないのだろうが、クアトロンプロを採用したAQUOSは消費者の誤解を招くため、カタログなどで「4K相当」という表現を使っており、販売店などでも4K対応テレビとは区別されて販売されている。こうした状況において、ソニーモバイルとNTTドコモが「世界初の4K対応スマートフォン」を謳って販売するのは、本当に正しい取り組み方なのかどうかは少し気になるところだ。

ディスプレイ、チップセット、カメラのトレンド

 スマートフォンに搭載されるディスプレイについては、ラインアップ全体で見ると、対角サイズは5インチオーバーと5インチ以下の2つのグループで大別される。5インチオーバーでは「Xperia Z5 Premium SO-03H」の約5.5インチがもっとも大きく、これに「arrows NX F-02H」の約5.4インチ、「AQUOS ZETA SH-01H」の約5.3インチなどが続く。ただし、解像度は「Xperia Z5 Premium SO-03H」が4K相当、「arrows NX F-02H」がWQHDで、その他の機種はいずれもフルHDとなっている。プラットフォームやアプリのサポートも関係してくるが、まだ当面はフルHDクラスのディスプレイが主流と言えそうだ。

 5インチ以下のディスプレイを搭載する端末は、これまであまりバリエーションが豊富ではなかったが、コンパクト系端末の売れ行きが好調なことから、今回は5機種がラインアップされた。ただ、ディスプレイの解像度は違い、「AQUOS Compact SH-02H」、「Disney Mobile on docomo DM-01H」が上位機種と同じフルHDであるのに対し、「Xperia Z5 Compact SO-02H」、「arrows Fit F-01H」はHD、「Galaxy Active neo SC-01H」はWVGAとなっている。バッテリー消費などを考慮すると、HD対応でも構わないという見方もできるが、コンテンツのリッチ化が進んできていることを考慮すると、そろそろタイミング的にHD対応で十分なのかどうかを考える時期に来ているのかもしれない。

 搭載されるチップセットも少し興味深い部分がある。今年の夏モデルではハイエンドモデルを中心にSnapdragon 810シリーズのオクタコアプロセッサ「MSM8994」が搭載されていたが、機種によっては十分に熱対策ができていなかったり、実装方法の違いなどにより、パフォーマンスに差があるなど、いろいろと話題になった。今回のラインアップではXperia Z5シリーズ3機種が同じ「MSM8994」を搭載するのに対し、「AQUOS ZETA SH-01H」や「arrows NX F-02H」、「Nexus 5X」などは、ヘキサコアプロセッサのSnapdragon 808シリーズのヘキサコアプロセッサ「MSM8992」を搭載する。コアの数が8から6に減ったことになるが、「MSM8992」はauの2015年夏モデルにラインアップされたLGエレクトロニクス製端末「isai vivid LGV32」に搭載された実績があり、安定したパフォーマンスが期待できる。おそらくベンチマークアプリで計測すれば、オクタコアとヘキサコアの差が出てくるだろうが、実利用で体感できるほどのパフォーマンスの差が出るとは考えにくい。むしろ、MSM8994の熱問題が話題になった状況を鑑みると、敢えてMSM8992を搭載したモデルがラインアップされたというのもうなずける。

 その他のスペックでは、NTTドコモのLTE-AdvancedによるPREMIUM 4Gの対応が機種ごとに異なる。もっとも高速なのは11月に開始する予定の受信時最大300Mbpsのサービスで、スマートフォンでは「AQUOS ZETA SH-01H」、モバイルWi-Fiルーターでは「Wi-Fi STATION N-01H」が対応し、「Nexus 5X」が受信時最大262.5Mbps対応、その他の機種は受信時最大225Mbpsまでで、「arrows Fit F-01H」や「Galaxy Active neo SC-01H」、「AQUOS Compact SH-02H」などはPREMIUM 4Gに対応せず、受信時最大150Mbpsまでの利用となる。ある程度、端末を長く使うのであれば、できるだけ最新の規格、より多くのバンド(周波数帯)に対応したモデルを選びたいところだが、理論値とは言え、200Mbpsオーバーになると、なかなかメリットを実感できるシーンが限られてくる。むしろ、都市部ではWi-FiとLTE-Advancedの同時接続による高速ダウンロードに対応していることの方がメリットになるケースも多く、なかなか判断の難しいところだ。

 さらに、通信に関わらないところでは、カメラの仕様が少し変わりはじめている。メインカメラの高画素化はある程度、落ち着きを見せつつある一方、自分撮りのニーズが高いことからインカメラの画素数が高くなる傾向にある。ただ、実用的には片手で自分撮りをするとき、何らかの形でシャッターを切らなければならず、この部分で各社の工夫の違いが見られるようだ。同様に、メインカメラのオートフォーカスについては、一般的にこれまで採用されてきたコントラストAFに加え、一眼レフなどでも採用されることが多い位相差AFを組み合わせたハイブリットAFを採用することで、各機種ともピント合わせの高速化を実現している。もっとも高速なのがXperia Z5シリーズだが、他のハイブリッドAFを採用した機種も0.1~0.3秒程度の高速化を実現している。

スマートフォンを中心に13機種をラインアップ

 さて、ここからは冬春モデルとして発表されたスマートフォン10機種、タブレット1機種、フィーチャーフォン1機種、モバイルWi-Fiルーター1機種について、個別に説明しよう。各機種の詳しい内容については本誌の速報記事を参照していただきたいが、これから約半年間をかけて、順次、発売される製品なので、ここでの評価は最終的な製品と差異があるかもしれないことをお断りしておく。

arrows Fit F-01H(富士通)

 約5インチHD対応有機ELディスプレイを搭載したarrowsシリーズでは久しぶりの普及モデル。これまで「ARROWS」と表記していたロゴを「arrows」に変更し、全体的なイメージを先端的なものから幅広いユーザー層に受け入れられやすいものに変えようとしている。

 幅69mmのコンパクトなボディに、背面には富士通製端末でおなじみの指紋センサーを搭載。防水防じんに加え、MIL規格対応の耐衝撃性能を持つ。Gorilla Glass 3のフロントガラスや背面をキズに強いウルトラタフコートにするなど、ユーザーに長く安全に使ってもらうことを強く意識したモデル。機能的にはこれまでの富士通製端末で高い評価を得てきた「スーパーはっきりボイス4」などの音声サポート、日本語入力の「スーパーATOK ULTIAS」などを継承しており、かなり充実したモデル。おサイフケータイには対応するが、ワンセグ/フルセグがないのは少し気になるところだ。

Xperia Z5 SO-01H(ソニーモバイル)

 約5.2インチのフルHD液晶ディスプレイを搭載したXperiaシリーズの主力モデル。これまでのXperia Zシリーズのオムニバランスデザインを継承しながら、薄さ6.3mmにまとめ、背面にフロストガラスを採用することで、マットな質感で仕上げている。

 側面の電源キーを楕円形に変更し、指紋センサーを内蔵したことで、操作性を向上させつつ、これまでのXperia Zシリーズと比べ、わずかながら印象を変更している。ただ、薄型ボディに背面のフロストガラスはかなり滑りやすくなった印象もあり、取り扱いには少し注意が必要と言えるかもしれない。注目は2300万画素の新設計のセンサーを採用したカメラで、ハイブリットAFを採用することで、わずか0.3秒のオートフォーカスを実現する。新設計のイメージセンサーはIFA 2015の記事(※関連記事)でも触れているように、ソニーのαシリーズを手がけるチームのノウハウを活かしながら開発されたもので、画像処理エンジンのBIONZを組み合わせることで、美しい写真を撮影できるようにしている。

AQUOS ZETA SH-01H(シャープ)

 AQUOSシリーズの最高峰に位置付けられるZETAは、今回発表されたスマートフォンの中では唯一、NTTドコモが11月から提供を開始する受信時最大300MbpsのPREMIUM 4Gに対応する。

 液晶ディスプレイはシャープ製端末でおなじみのIGZOだが、従来よりも2倍の120Hzで駆動するハイスピードIGZOを採用することで、極めてなめらかな表示を可能にする。特に、動画再生や画面のスクロールなどではちらつきが抑えられ、かなり視認性を高めている。かつて液晶テレビでもいわゆる倍速駆動などが話題になったが、これをスマートフォンのディスプレイでも実現した格好だ。ちなみに、動きのある表示のときは120Hzで駆動するが、IGZOの特性上、静止時は書き換えが1Hz(毎秒一回)になるため、優れた省電力性能は維持されている。背面に指紋センサーを内蔵し、カメラも従来モデルから高評価を得ているリコーGRシリーズの開発チームが認めたGR Certifiedを取得し、インカメラも800万画素のセンサーを搭載する。側面のグリップマジックは近接センサーに変更され、エモパーはメモ機能を追加した「エモパー3.0」に進化を遂げている。内容的にもっとも充実した実力派の一台と言えそうだ。

Galaxy Active neo SC-01H(サムスン電子)

 昨年発売され、好評を得たGALAXY S5 Activeの路線を継承するタフネス系スマートフォン。サムスンが米国向けなどに販売するGalaxy Xcover3をベースに、おサイフケータイやワンセグなどの日本仕様を搭載したモデル。

 防水防じんはもちろん、MIL-STD-810準拠の耐衝撃性能などに加え、独自に4項目の試験を課し、あらゆるシーンでの耐久性や堅牢性を実現する。カメラの撮影機能もユニークで、撮影時の位置情報だけでなく、温度や湿度、天気情報などをタグ付けできる機能も備える。ボディカラーも標準的なSolid Blackに加え、スキーやスノーボードなどのウィンタースポーツのシーンにも映えそうなCamo Whiteと呼ばれる白色系迷彩グラフィックのモデルがラインアップされる。ディスプレイが約4.5インチのFWVGAと、あまり高スペックではないが、GALAXY S5 Activeも端末を破損したユーザーからの買替え需要が多かったと言われており、堅牢性を重視するユーザーに支持されそうだ。

Xperia Z5 Compact SO-02H(ソニーモバイル)

 約4.6インチのHD対応液晶ディスプレイを搭載したXperia Z5シリーズのコンパクトモデル。安定した人気を保ち続けているXperiaシリーズのコンパクトモデルだが、Xperia Z5シリーズの世代になったことで、カメラは上位機種と同じ新開発の2300万画素CMOSイメージセンサーを採用し、美しい写真の撮影を可能にする。

 Xperia Z5やXperia Z5 PremiumがXperiaシリーズらしいカラーを採用しているのに対し、Xperia Z5 CompactはYellowやCoralなど、ポップなカラーを採用する。ボディ側面に備えられた楕円形の電源キー、指紋センサーなども共通仕様で、側面に刻まれた「XPERIA」のロゴも共通だ。今回発表されたコンパクト系端末では唯一、MSM8994を搭載するが、関係者によれば、Xperia Z4の世代で指摘された熱問題はクリアしており、安心して利用できるとのことだ。カメラの他にもハイレゾオーディオ対応など、上位モデルと比べても遜色のないスペックだが、ディスプレイだけがHD対応と、他機種よりも一段、落ちるのが気になるところだ。

Xperia Z5 Premium SO-03H(ソニーモバイル)

 スマートフォンとしては世界初となる4K(相当)の約5.5インチディスプレイを搭載したXperia Z5シリーズのフラッグシップモデル。4K相当の表示はAndroidプラットフォームのAPIを監視することで、映像と写真を表示した場合のみで、その他のアプリなどでは既存の解像度で表示される。フルHD対応ディスプレイのXperia Z5などと同じ映像を表示したときの比較では、明確にその差がわかるほどの差があるが、本稿でも触れたように、「4K相当」の表示であり、液晶テレビなどの4Kとは別のものと考えた方が良さそうだ。

 ボディはXperia Z5などと比較してもひと回り以上、大きく、ボディ幅で約76mm、重量で約181gと、ややヘビー級。ボディはXperia Z5シリーズ共通の新しいデザインを採用し、側面に指紋センサーを内蔵した楕円形の電源キーを備える。デザインでもうひとつ目を引くのがChromeと名付けられたカラーバリエーションで、背面側がほぼ完全な鏡面になっており、かなり見た目にもインパクトがある。ただ、ユーザーが端末を手にしたとき、外向きに鏡を向けることになるため、公共交通機関や公衆の場では少し気を遣う必要があるかもしれない。ちなみに、グローバル向けにラインアップされているGoldは採用が見送られている。関係者によれば、Goldは特定の国と地域を意識したもので、あまり日本などには向かないだろうという判断とのことだ。しかし、これだけハイスペックの象徴的なモデルであれば、敢えてGoldもラインアップしても良かったような気もする。

arrows NX F-02H(富士通)

 2015年夏モデルのARROWS NX F-04Gに引き続き、虹彩認証「Iris Passportを搭載したarrowsシリーズのフラッグシップモデル。従来モデルに比べ、虹彩認証をするためのセンサーを中央寄りにレイアウトすることで、虹彩認証の速度を格段に向上させている。ボディ上部にはハードアルマイトのパーツを備える一方、背面に最先端素材のナノテクファイバーを採用し、織り目のグラフィックを活かしつつクリアコートを掛け、奥行き感のある美しく印象的なデザインに仕上げている。

 防水防じんに加え、MIL-STD-810規格の14項目をクリアしており、耐衝撃や太陽光照射、塩水噴霧、高温などの試験もクリアしている。ディスプレイは約5.4インチのWQHD対応液晶を搭載しており、Xperia Z5 Premiumに次ぐ高解像度を実現した。PREMIUM 4G対応は受信時最大225Mbpsまでとなるが、Wi-Fi/LTEの同時ダウンロードによる高速通信に対応するなど、実用面では十分な仕様となっている。富士通製端末らしく、セキュリティを含めた『全部入り』を追求したモデルだ。

AQUOS Compact SH-02H(シャープ)

 約4.7インチのフルHD対応液晶ディスプレイを搭載したコンパクトモデル。他のコンパクトモデルと違い、ディスプレイがフルHD対応となっており、上位モデルのAQUOS ZETA SH-01Hと同じハイスピードIGZO搭載によるなめらかな表示を可能にする。ボディ幅も約66mmとコンパクトで非常に持ちやすい。

 2015年夏モデルで好評を得たイルミネーションを「ヒカリエモーション」として進化させ、本体底部に内蔵されたLEDが着信やエモパーの会話などに合わせて光る。意外に面白そうなのが同梱される「ニュアンスシート」と呼ばれるグラフィカルなシートで、背面に貼ることで端末のイメージを変えることができる。再利用はできないが、2枚、同梱されているので、キズがついたときはもう1枚のシートに貼り替えることができる。コンパクトながらもハイスペックで個性を主張したいユーザーにはオススメできるモデルだ。

Disney Mobile DM-01H(ディズニー/シャープ)

 女性を中心に安定した人気を保つDisney mobile on docomoの新端末。2015年夏モデルではLGエレクトロニクスが製造を担当していたが、今回はシャープが担当し、AQUOS Compact SH-02Hをベースに開発されている。

 ディズニーパークの4つのテーマランドの世界観が描かれており、背面にはおなじみのキャッスルが描かれ、パッケージにはミッキーマウス型のスマホピアスも同梱される。底面のイルミネーションも受け継がれており、ライブ壁紙などとともに、楽しいディズニーの世界観を演出する。スペックは「AQUOS Compact SH-02H」と同等なので、グリップマジックやハイスピードIGZOによる省電力性能もそのまま活かされている。

Nexus 5X(Google/LGエレクトロニクス)

 発表会当日の早朝に米国で発表されたばかりのモデル。プラットフォームにAndroidの最新版「Android 6.0(marshmallow)」を搭載する。Googleが直接、販売するものと違い、SIMロックが設定されているが、NTTドコモでは、前回のSIMロック解除の実績から180日間以上経っていれば、ロック解除に対応してくれる(※関連記事)ため、条件を満たしていれば、購入後、即日でSIMロックを解除することも可能だ。

 アプリはAndroid標準のものがプリインストールされており、NTTドコモのアプリなどはプリインストールされていない。本体は約5.2インチのフルHD対応液晶ディスプレイを搭載し、背面には指紋センサーを備える。ただし、指紋センサーは他のNTTドコモの端末のように、NTTドコモの認証に対応していないため、基本的には画面ロックの解除などに利用することになる。もうひとつ注意が必要なのが底面に備えられた外部接続端子で、一般的なmicroUSBではなく、今後、主流になると見られるUSB-C端子を採用している。そのため、街中に増えてきた充電サービスなどでは変換アダプタなどを利用しなければ、充電できないケースが出てくると予想される。Androidプラットフォームの最先端を楽しみたいユーザー向けのモデルと言えそうだ。

dtab D-01H(Huawei)

 約10.1インチのWUXGA対応液晶ディスプレイを搭載したdtabシリーズの第三弾モデル。本体の上下に合計4つのスピーカーを内蔵しており、音楽や映像などを迫力ある環境で楽しむことができる。音響技術にはharman/kardonのClari-Fiを搭載しており、圧縮音源なども自然な音響で再生することが可能だ。Huaweiがグローバル向けに販売しているMediaPad 10をベースに開発されており、CPUも傘下のHiSilicon製「Kirin930」を搭載する。NTTドコモの3G/LTEネットワークに対応するが、国際ローミングに対応していないので、基本的には国内のみでの利用が想定されている。タブレットは海外旅行などにも持って行かれるケースが多いので、ちょっと残念な点とも言えそうだ。

P-01H(パナソニック)

 2014-2015冬春モデルとして発売されたP-01G以来、1年ぶりのiモード端末。約3.4インチのディスプレイやワンプッシュオープンによる折りたたみデザインなど、従来モデルの仕様をそのまま継承しているが、メールなど以外に、電話帳も80ドットの「超大」文字対応になり、視認性を向上させている。

 防水防じん、おサイフケータイに対応し、ワンセグも搭載するが、GPSには非対応となっており、内側カメラも備えられていない。今後、iモード端末はソフトウェアのメインテナンスや部品の調達が難しくなるため、あと何回、iモード端末が開発されるのかはわからないが、実質的にはパナソニックしか製造できる状況にないため、現在、使っているiモード端末の利用が長いときはこれを機に機種変更して置いた方が堅実という見方もできる。

Wi-Fi STATION N-01H(NEC)

 3波を束ねるキャリアアグリゲーション「3CA」による受信時最大300MbpsのPREMIUM 4Gに対応したモバイルWi-Fiルーター。NECブランドが冠せられているが、スマートフォンなどを製造してきたNECモバイルではなく、無線LAN製品やSIMロックフリーのモバイルWi-FiルーターなどをAtermブランドで展開するNECプラットフォームズ(旧NECアクセステクニカ)が開発を担当する。

 ユニークなのは同梱されるクレードルに800MHz対応のLTEアンテナが搭載されており、背面に備えられたEthernetポートを利用することにより、ひとり暮らしの宅内用無線LANアクセスポイントとしても活用しやすいことが挙げられる。テザリングは一般的なWi-FiやUSBに加え、省電力性能に優れたBluetooth接続にも対応する。ちなみに、無線LAN部分は2.4/5GHzに両対応しており、規格はIEEE802.11a/b/g/n/acに対応する。

堅実なラインアップとスマートフォンのこれから

 冒頭でも触れたように、各携帯電話事業者はここ数年、スマートフォンの普及と共に市場を成長させてきた。しかし、スマートフォンがある程度、完成の域に達し、スマートフォンへの移行もほぼ落ち着いてきた状況において、各携帯電話事業者はいくつかのことに取り組まなければならない時期に来ている。たとえば、なかなかスマートフォンに移行しないユーザーに対し、よりわかりやすいユーザーインターフェイスやサポート体制を整える必要があるだろうし、今後、開発が難しくなってくるフィーチャーフォンのユーザーに対し、継続できるiモード端末と新しい環境を提案できるAndroidフィーチャーフォンを提供していくことも考えなければならない。同時に、コンテンツも映像のNetflixや音楽のApple Musicのような定額制を前提とするサービスが登場し、コンテンツビジネスで対抗しつつ、安定したネットワーク構築と運用も求められることになる。

 そして、何よりもこれまでスマートフォンの普及で成長してきた会社のビジネスについて、新しい価値、新しいビジネスを創造していかなければならない。その意味において、夏モデルで発表されたローソンとの共創、今回の「すきじかん」など、NTTドコモは新しいチャレンジをしようとしている。くり返しになるが、「携帯電話会社なのに……」という考え方もあるだろうが、今の時代、携帯電話会社としての本質を疎かにしないのであれば、むしろ、消費者との接点を持ちやすい携帯電話会社の顧客基盤はどの業界にとっても魅力的なものであり、当然、各業界が連携を求めてくるはずだ。言い方は悪いが、そこを取捨選択していきながら、自らのビジネスをも進化させていくことがNTTドコモの次なるステップにつながっていくはずだ。

 一方、端末については、成熟期を迎えたことで、なかなか個性を打ち出しにくくなっているのも事実だ。ただ、かつてのパソコンのように、ベンチマークテストですべてを数値化して、商品を比較するような状況はユーザーからも望まれておらず、デザインや機能性、ユーザビリティなどで各社がより一層、磨きをかけていって欲しいところ。ただ、同時に今回、NTTドコモがGalaxy Note 5の採用を見送ったように(あくまでも現時点での話だが……)、グローバル向けに展開されるモデルが日本市場にマッチしなくなり、供給されなくなるシナリオも起こり得るため、その部分はユーザーとしても理解していかなければならなくなりそうだ。

 今回発表された端末はすでに一部のモデルの販売が開始されており、その他のモデルも順次、ドコモショップの店頭やドコモスマートフォンラウンジなどにデモ機が展示される予定だ。本誌では今後、各機種の開発者インタビューやレビュー記事が掲載される予定なので、こちらも参照いただきつつ、自分ならではの一台を見つけていただきたい。

法林岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows 8.1」「できるポケット docomo AQUOS PHONE ZETA SH-06E スマートに使いこなす基本&活用ワザ 150」「できるポケット+ GALAXY Note 3 SC-01F」「できるポケット docomo iPhone 5s/5c 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるポケット au iPhone 5s/5c 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるポケット+ G2 L-01F」(インプレスジャパン)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。