ラジオを聴ける&録れるICレコーダー
「サンヨー ICR-RS110M」

スタパ齋藤
1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコ ンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称 衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。


サンヨーのラジオ+ICレコーダー製品

 今回は三洋電機のポータブルラジオレコーダーICR-RS110Mについて。2009年2月に発売された“AM/FMラジオを内蔵したICレコーダー”ですな。

三洋電機のポータブルラジオレコーダーICR-RS110M。MP3/WAV(リニアPCM)録音に対応したICレコーダーで、AM/FMラジオも内蔵する。2008年9月現在の実勢価格は1万5000円前後

 このICレコーダー、2008年11月に発売されたICR-RS110MFの“ICレコーダーのみ”の製品となる。詳しくは後述するが、ICR-RS110Mというラジオ付きICレコーダーと、ICR-RS110M専用のマルチクレードルASX-SP500は当初セットで販売されていて、後にレコーダーとクレードルがバラで販売されるようになったんですな。

 さておき、このICレコーダーを入手した理由は、何となくの成り行きであった。そろそろ新しいボイスレコーダー欲しいニャ的に思っていたところ、拙者手持ちの特定小電力トランシーバーとこのICR-RS110Mを物々交換してもいいヨという知人が出現。ラジオものも好きでICレコーダーも欲しい拙者には渡りに船であり商談成立。

 で、ICR-RS110Mを使ってみたところ、なかなかイイ!! つーかヒソカに“オイシイどころ取り”しているICレコーダーかも!! てな良好な使用感を得た。ので、さらにオプションも合わせて使ってみたら、そーとーイケてるかも!! と、一気に拙者の主力ガジェットとなった。

 てなわけで今回は、ICR-RS110Mの使用感を書いてみたい。なお、サンヨーのラジオ付きICレコーダーや上記のクレードルの詳細についてはコチラをご参照いただきたい。



ラジオを聴ける&録れるICレコーダー

 ICR-RS110M(以下、RS110M)は、前述のとおりICレコーダーにAM/FMラジオを内蔵した製品。

 ICレコーダーとしては、ま、録音ボタンをポンと押せば即座に音声を記録できる一般的なタイプですな。録音フォーマットはMP3(16~320kbps)に加えてWAV(リニアPCM・16bit/44.1kHz)が使える。再生はこれらフォーマットに加えてWMA(PDDRM対応)にも対応する。音楽再生用MUSICフォルダや音楽再生のための機能も備えるので、ポータブルオーディオプレーヤー的にも利用できるのだ。

 ちなみに、記録媒体はmicroSDおよびmicroSDHCカードのみで、容量は512MB~8GB。詳しい対応カード情報はこちら。大容量のmicroSD系カードが激安化しているから本体内には音声録音用メモリを搭載しませんヨ、って感じだろうか。

 このテの製品としては今時的な仕様だが、ユニークなのがAM/FMラジオチューナーを内蔵している点。ICレコーダーとして使っていないときはラジオ放送を聴くことができ、また、ラジオ放送の録音/予約録音を本体のみで行える。もちろん録音した番組を再生可能。

本体サイズは約49.5×113.5×18mm。質量は、付属の単3形エネループ充電池を含んで約92g。ちょっと幅広だがスリム&軽量で携帯しやすい使用時に操作するボタンは本体前面に集中している電源は単3形アルカリ電池×1本または単3形エネループ充電池1本(付属)
本体右側面には、電源ボタン、メニューボタン、ステレオマイク用端子(φ3.5mm)、USBコネクタおよびmicroSDカードスロットがある。内蔵マイクは本体上部左右角にある本体左側面にはステレオイヤホン端子(φ3.5mm)がある。録音のモニターも可能本体底面には別売の専用マルチクレードルASX-SP500と接続するためのデジタルI/O端子がある
このようにAM/FMラジオ放送を受信することができる。写真は後述のマルチクレードルに載せている状態だが、もちろんRS110M単体でも受信できる放送中の番組を録音しているところ。タイマー予約録音も可能だ。AM/FM放送録音も、RS110M単体(クレードルなし)でもOK。録音中はバックライトが消灯する録音した番組はMP3ファイルとして残る。ファイル名は“年月日/AMかFMか/周波数”となる。最上段の「090902A1134」なら「2009年09月02日、AM、1134kHz」の番組となる。語学番組などに向く再生機能もある

 ラジオ受信/録音機能は、例えばラジオ放送による語学学習などにわりと向くかも。再生機能として、例えば少し前(5/10/15秒前)に戻って再生できるセンテンス再生機能、一部分の繰り返し再生が可能なA-Bリピート機能、ファイル時間軸の好きな位置にインデックスマークを付けて使えるインデックスサーチ機能、それから再生スピード可変(50~200%)といった機能があるので、語学番組を繰り返しジックリ聞くのに好都合だ。教材CDをMP3化してRS110Mに入れ、通勤/通学中に音声教材を聞く、ってのにも合いそうですな。

 ただ、放送を録音しての語学学習って切り口になると、オリンパスのラジオサーバーVJ-10-JAやサン電子のトークマスターという力強い競合機種があったりする。そういった機種と比べると、RS110Mを語学学習マシンとして捉えると、若干の貧弱さは否めない。具体的には、RS110Mだと予約録音件数が5件までとか、パソコンとの連携はファイルのコピー程度までとか。

 とは言え、ラジオ内蔵のポータブルICレコーダーであり、実勢価格的に安価なRS110M。モデルを重ねる三洋電機DIPLYシリーズとしての使いやすさまで含めると、やはり魅力のある製品だと感じる。



どこが利便/魅力なのか?

 製品の魅力とか言っても十人十色で異なるものなので、俺におけるRS110Mの良さについて書いてみたい。

 結論から言えば、ICレコーダーとして十分使いやすくて、オーディオプレーヤーとしても手軽で、ときにはラジオ聴取/録音ができるという汎用性ですな。これに尽きる。

 拙者の場合、RS110MをICレコーダーとして活用することが多い。日常的には覚え書き的な音声メモだ。さっきかかってきた電話のこの件は早急に進めるとか、駐車場はドコの何番かとか、そんなん。次いで、打合せや取材の記録。サンヨーのDIPLYシリーズは何機種か使ってきたが、拙者にとっては最も“サクッと使える感”が高い。慣れているということもあって、いちばん手っ取り早く活用できるICレコーダーである。

 音素材を拾うためのPCMレコーダーとしても使えるが、あまり日常的には使っていない。RS110M内蔵のマイクはそこそこ高音質で録れるものの、キッチリとサウンド素材を録るためには外部マイクが必須。ゆえに荷物が増えたりする。そーゆーコトまで含めると、音素材を拾うならローランドのR-09をはじめとするポータブルPCMレコーダーが便利だ。

 それから、実はポータブルオーディオプレーヤーとしても良かったりするRS110M。要は、好きな曲をこのICレコーダー(に挿すmicroSDカード)に入れておくわけですな。そうすると、単純に、出先で時間が余ったときに音楽を聴ける。RS110Mを持って出れば、iPodなどのプレーヤーを持っていく必要が減り、つまり仕事で出かけるときに荷物を減らせる。

 ちなみにRS110Mの場合、音楽用フォルダに好きな曲(もしくはアルバムフォルダごと)コピーするだけでポータブルオーディオプレーヤーとして使える。WindowsMediaPlayerを使っての同期も容易だが、ぶっちゃけ、音楽ファイルをコピーして入れるだけでソコソコ高音質で楽しめるポータブルオーディオプレーヤーになるというハードルの低さが好き。

 iPodとかって多量の音楽を自由自在に楽しむための機能が多々あって、ソレはソレでイイんだけれど、iTunes必須だしある意味でツブシが効かない専用機じゃないスか。そういう観点では、なんと言うか身軽&気軽&テキトーな感じで使えるRS110Mのような単純明快なポータブルオーディオプレーヤーは快適だ。

 なお、この件、RS110Mに限らすMP3ファイル再生に対応したICレコーダーもしくはパッと手軽に音声録音できるようなポータブルオーディオプレーヤーがあれば、同様に荷物を減らせて便利だ。が、RS110Mの場合、後述のマルチクレードルASX-SP500が使える点がアドバンテージとなったりする。

 あとはAM/FMラジオとして使える点。結局、ICレコーダーと音楽プレーヤーとラジオの利便を、RS110Mなら1台で持ち歩けるってところを大きな魅力だと感じている拙者なんですな。

 ただ、難点も。

 RS110Mについて、ICレコーダーやポータブルオーディオプレーヤーとしては大きな難点は感じていない。が、ラジオは、まあしょうがないコトではあるが、使う環境によって受信感度に大きな差が出る。AM放送は内蔵のバーアンテナで電波を受信し、FM放送は接続したイヤホンのケーブルがアンテナ代わりになるが、状況によっては受信状況が悪くなる。移動中は刻々と受信状況が変わるし、FM放送だとミニFMが混信したり、AM放送だと時間帯などによって強力な外国語放送電波が入ったりも。

 なので、恐らく、移動中の番組予約録音は現実的ではないように思う。ラジオとしての感度もそーんなには良くないので、あるいはRS110Mを定位置においての予約録音でも、ジックリと聴くための音質では録れないかもしれない。もちろん、使用環境に大きく依存する話だが。

 あと、内蔵スピーカーの音質。小型だということもあり、高音質は望めないという印象だ。てか、ICレコーダー内蔵のスピーカーなので、基本的には“録れたかどうかチェックするため”のスピーカーって感じですな。ちゃんと聞いたり聴いたりするためには、ステレオイヤホンを使うべし。



マルチクレードルASX-SP500

 最後に、マルチクレードルASX-SP500について少々。コレ、RS110M専用オプションで、受信用アンテナを接続可能なステレオスピーカーでありかつ充電器となる製品である。充電については、RS110Mには単3形エネループ充電池が付属しているが、ソレを充電してくれるわけですな。

RS110M専用のマルチクレードルASX-SP500。RS110Mの外部アンテナ+ステレオスピーカー+充電器となるオプション品だ。実勢価格は1万円少々だが、単体での購入は割高になるかも!?電源は付属のACアダプタ。小さくはなく、標準的な大きさだマルチクレードルASX-SP500とRS110Mはこのように合体する。クレードルのサイズは約193×124.5×100mmで、質量は約620g。案外コンパクト

 てゅーか、ぶっちゃけ、RS110M買おうかニャと思ってるなら、RS110M+マルチクレードルのセット品であるICR-RS110MFを買うのがいいと思う。セットで買ったほーがずっと安価だし、何よりもこのマルチクレードルがあると、RS110Mの利用幅がドガンと広がるからだ。

 拙者の場合、RS110Mがけっこーイイ感じだったので、じゃあマルチクレードルも追加購入だッと買ったわけだが、使ってみてまず良かったのが“RS110Mのラジオとしての性能向上”である。

 このマルチクレードルには、RS110Mの外部アンテナ(マルチクレードルに付属)を接続できる。クレードルにアンテナをつなげた接続した状態でRS110Mと合体させると、AMもFMも、受信感度が劇的に上がる(拙宅の場合)。まあ外部アンテナがつながったから当然と言えば当然ではある。

 また、クレードルのスピーカーも、小さいながら案外イイ音。受信感度が上がり、音も良好な感じになるので、RS110Mでラジオ放送を鋭意録音しよっかナという気になる。RS110Mに入れたお気に入りの曲をBGM的に流すのにも向く。

 ただし、受信感度向上については電波のコトなので、状況によってはクレードル&アンテナを使ってもイマイチってことも───もともと電波状況がよろしくなくて鉄筋住宅で窓は鉄線入り、とかだと、まるで効果なしってコトもあるだろう。

本体背面にはAMアンテナとFMアンテナ、それからACアダプタを接続するための端子がある。各種アンテナとACアダプタはマルチクレードルに同梱AMアンテナはループ型、FMアンテナは単なる導線。FMアンテナに関しては、市販のT形や、屋外のアンテナも接続できるだろう。長い導線を窓際まで導いてもFM受信感度向上につながるクレードルは小型だが0.5W+0.5Wのステレオスピーカーを搭載する。ひとりで聴くスピーカーとしては十分高出力で、音質も良好だ。クレードル全体のサイズもコンパクトで使いやすい


 実用上、RS110Mをクレードルに載せると(RS110Mに入れたエネループが)充電されるという点が非常に良い。クレードルは机上に出しっぱなしにしておけるようなサイズ。で、RS110Mを載せれば充電OK。音質もわりと良好なので、ちょっとラジオを、あるいはお気に入りの曲を聴く、というのも現実的だ。

 要するに、RS110Mを単体で使ったときのさまざまな問題を解決してくれるクレードルなのだ──受信感度が一気に高まるので予約録音が現実的になり、ずっと良い音で聞ける/聴けるようになる。常用するハードウェアとして、電池切れの心配もほぼ解消する。

 ちなみに、RS110Mの電池持続時間は(付属エネループ使用時)、ラジオ録音が13~16時間、ラジオ受信が17~20時間、音声録音/再生が43時間程度(MP3)となっている。アルカリ電池を使うともう少し伸びるが、まあ毎日クレードルに載せる習慣をつければ電池切れ心配/憂鬱から完全に解放されるだろう。

 てな感じの、AM/FMチューナー入りICレコーダーのRS110Mと、専用クレードルASX-SP500。今時のICレコーダー製品はどれも高性能・高音質になっていて、わりと実力僅差状態。人から「ICレコーダー買いたいけどドレがいい?」なんて訊かれると、正直「どれでもイイんじゃないスか?」的に答えがちだった。が、現在はICR-RS110MF(←レコーダー+クレードルのセット品)がイチオシ。

 2009年9月現在の実勢価格は2万1000円前後で、ICレコーダーを使うという目的においてはヤケに高いが、完成度の高い音関係複合機としてはコストパフォーマンスが非常に高いと思う。

2009/9/7 10:55