久々のペンタブ、ワコム「Bamboo Fun」

スタパ齋藤
1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコ ンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称 衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。


久々のペンタブ、ワコムBamboo Fun

 ワコムのBamboo Funをポチッ!! としてみた。すなわち購入。かなり久しぶりのペンタブレットである。

ワコムのBamboo Fun CTH-661/W0。専用ペンでも指先でもカーソル操作などを行えるタブレットだ。Amazonで1万7782円で購入

 ワコムのタブレットにはベーシックな機能を備えたBambooシリーズ、高機能なintuosシリーズ、ディスプレイ一体型タブレットのCintiqシリーズがある。拙者が買ったのはBambooシリーズの新モデルで、ペンでも指でも操作できるというのが大きな特徴だ(Bamboo Touchは指のみ)。

専用のペンで絵を描いたり手書きでの文字入力を行える。もちろん筆圧を感知し、それに応じた太さなどで描けるノートPCのタッチパッドのように指でのカーソル操作も行えるいわゆるマルチタッチにも対応。画面スクロールや拡大縮小、画像などの回転を2本指での操作で行える

 新Bambooシリーズの概要はCTH-661/W0というモデルで“Bamboo Fun Midium”とも呼ばれている。

 これを選んだ理由は、シリーズ中で最も読み取り可能範囲が広いから。本体サイズは約336.8×223×8.5mmで、だいたいA4サイズ。そのうち、ペンで描けるエリアは216.48×137mmで、A5より少し大きい面となる。ぶっちゃけ、これ以上狭いと「文字も絵も」という汎用性に欠ける気がしたのでコレを選んだわけですな。

 以降、Bamboo Fun Midiumの使用感などを書いてみたいが、結論から言うと非常に気に入れた。当初は「フリーハンドでサクッと図とか描くときにチョイと使おう」程度の勢いだったが、フォトレタッチなんかにも大役立ち。タッチ操作も予想以上に便利っつーか実用的であった。いい買い物したニャ的な気分である。

巨大タッチパッドとして

 まずは“指でも操作できるペンタブレット”としてだが、拙者的には「すげーでけータッチパッド」として捉えてみた。で、結論から言うと、場所を取るという問題はあるものの、ノートPCのタッチパッドよりも汎用性/実用性がずっと高いと感じた。

 Bamboo Fun Midiumの場合、タッチ入力可能な面は190×130mmある。このかな~り広い面上で指を動かすと、カーソルもそれに追従して動く。ぶっちゃけ、ノートPCのタッチパッドよりも精密にカーソル操作を行えるので、小さなアイコンをビシッとクリックできたりして気分がいい。また、本体端に4つのボタンがあり、これらを必要に応じてカスタマイズできるので、たとえば「ウェブブラウズはBamboo Fun Midiumだけで」という使い方も余裕だ。

本体横に4つのボタンがある。右利きユーザー用デフォルト設定では、上(写真では右)からタッチ機能のオンオフ、戻る、右クリック、左クリックが割り振られているボタンに割り振る機能のカスタマイズも行える。右利き用、左利き用の変更もOK各ボタンにこのような機能を割り振れる。キーストロークの割り当ても可能なので、たとえば[Ctrl+c]などもOK。後述のジェスチャー機能を使えば指先だけでのウェブブラウジングもラクっす

 ペンでカーソルを操作する場合、やはり若干の慣れが必要になるが、タッチパッドとして使う場合は慣れとか全然イラネと思われる。タッチパッドの類は初体験、てな人は別だが、ノートPCのタッチパッドを操作したことがあれば、Bamboo Fun Midiumは多くの人にとって「非常に操作しやすいタッチパッド」になると思う。

 ただ、前述のようにある程度の場所を取る。机上が手狭だと置けませんな。また、カーソル操作とキーボード入力を交互に行う場合も扱いにくいと感じる──指先でカーソル操作して必要に応じてペン&Tablet PC 入力パネルで文字入力すれば……とか言われそうだが、ディスプレイ部に直接書けないスタイルのタブレットだと、やっぱり結局キーボード叩いて書くのが手っ取り早いと思う。

 また、マウスよりも手首や腕を動かす距離が長くなるケースも多いだろう。要はユーザーのカーソル操作アクションがハデになりがち。まあA5サイズのボード内での動きになるので、ハデってホドでもないが、タッチパッドとしてだけ考えると「こんなに手ぇ動かすのはなぁ」と思う方があるかもしれない。

ハマるときはハマるマルチタッチ

 新Bambooシリーズには“ジェスチャー”と呼ばれるタッチ機能がある。指2本対応の、いわゆるマルチタッチ対応のタッチパッドとして使えるんですな。

指を2本使っての操作に対応する。たとえば指を2本タッチして画面をスクロール。上下に動かせばマウスのホイールのように機能する置いた2本の指の間隔を(タッチしたまま)広げれば画像などが拡大される。逆にすれば縮小。ピンチイン/アウト(ピンチオープン/クローズ)の操作ですなこちらは回転操作。2本の指でパッド上のネジを回すようなイメージで動かすと、画像などが回転する
2本の指を左にスッと擦るようにすると[戻る]の操作に2本の指を右にスッと擦れば[進む]の操作になるスクロールなどのスピードを調整すれば、より良いフィーリングでジェスチャーを使えるようになる

 新Bambooのジェスチャー機能を使えば、もしかしたらボクやキミやアノコのWindowsパソコンがiPod TouchみたいにってゅーかMacみたいにスイスイ使えるように? とか。

 大雑把な結論から言えば、Windowsマシンでジェスチャーを使った場合、使用感の善し悪しはアプリによりけりな感じ。たとえばIEやFirefoxならズームも進むも戻るもわりと快適に使える。PhotoshopCS4で使えばスクロールやズームや回転が滑らか&便利に機能する。けど、スクロールしかできないアプリもあるし、アプリによっては動作がぎこちないケースも。

 個人的に嬉しかったのは、常用の画像系ソフトウェア──Photoshop CS4やACDSee Pro 2でのジェスチャー機能の使用感が十分実用レベルだったことだ。Photoshopに関してはペンタブレットとしての使用感がさらにイケてるんだが、ともあれどちらのソフトでジェスチャーを使っても、マウスよりも快適だと感じられる状況が多かったりする。

Adobe Photoshop CS4の画像回転をジェスチャーで行ったところ。ペン操作と平行して指先でのジェスチャーを使えるのは(慣れれば)凄く便利!!ACDSee Pro 2 Photo Managerとも相性が良いジェスチャー機能。画像を指先の操作で拡大縮小~スクロールできる2本指で拡大(ジェスチャー機能)し、ダブルタップ+ドラッグで一部分を確認。これも(慣れれば)非常に快適に操作できる

 たとえばACDSee Pro 2で使った場合、サムネイルの1枚を2度タップし、指2本で拡大し、2度タップで指を離さずドラッグすればスクロールできる。若干の慣れが必要ではあるが、体がその操作を覚えるとマウスよりも「さらにソフトウェアが意のままに動くようになった」と感じられたりする。また、実際に手を動かしたりキーを操作する回数もずっと少なくなる。

 そーゆー感覚だけ求めるなら最初からMac OS……とかいう話もあるが、ともあれ、きっとこれら以外にも“ジェスチャーと相性の良いWindowsアプリ”ってけっこーあるんじゃないかニャと思う。

フォトレタッチ効率大幅UP!!

 Bamboo Fun Midiumを使ってとくにそのメリットを感じたのは、スチル写真の修整をペンで行ったとき。フォトレタッチ作業ですな。これまでマウスでやってきた作業をペンに置き換えて体験すると、最初は「うわっ凄く効率イイ!!」と思う。そして間もなく「そりゃそーだ、ペンでやってるんだし」と納得したりする。

 Photoshopを例に挙げれば、その多くのツールにてペンの良さを実感できる。たとえば単純に範囲選択。矩形や円形でないカタチを素早く囲めるし、自動範囲選択で意図しない部分が範囲に選ばれてもその部分をすぐに選択範囲から分離できる。

 実質上の“レタッチ作業”ならさらに効率がいい。これまでマウスでポチリ、ポチリ、ズズズッ、とかやってきた作業が、ペンでスイッスイッと進む。何しろまず、そのときのスピードが違う。文字をマウスで書くのとペンで書くときの差そのものって感じ。

たとえば風景写真。船が邪魔だなぁ……というときに便利なのがPhotoshopのコピースタンプツールですな。ペンタブレットでこのツールを使い、船を消してみよう描くようにペンを動かせば、滑らかにスタンプツールの痕跡が描かれ船を消せる。マウスより的確に描けるのでスピーディーに作業が進むサクッと消せた。もう少しディテイルをスタンプすればより自然な仕上がりに。こういう作業をスムーズにこなせるのがペンタブレットだ
今度は修復ブラシツールを使用。肌のシミやシワなんかもスギャッと消せる驚異的なスタンプ系ツールですな。モデルは百瀬みのりさんてゅーかみのり先生ややや!! お肌に小さなナニカが。これを消して萌え度をUPさせてみたいマウスではポイントを狙いにくかったり面を描きにくかったりするが、ペンで行うとスススッと完了。ラクだしキレイに仕上がりますな

 それから筆圧。マウスだと均一な濃さなどでレタッチされるので、設定を何度も変えてレタッチしないと不自然な仕上がりになる。が、ペンの場合、タブレットに押し当てる強さでレタッチの強弱をコントロールできる。ので、結果としてスピーディーに仕上がるし、仕上がりもずっとキレイになる。

スタパビジョン収録時のスナップ。被写体は百瀬みのりさんというよりもみのり先生とくにライティングをしていないので、顔がやや暗く陰も少々目立つ。こんなときは覆い焼きツールで明るさを上げつつコントラストを下げるのダ顔にレフを当てたような効果が得られた(けどプチやり過ぎ!?)。マウスだと平坦な効果になりがちだが、筆圧対応のペンタブレットなら自然な調子で仕上げるのが容易だ
覆い焼きツールや焼き込みツール(色やコントラストを強めたりするもの)は風景写真などにも効果的。この風景はもっとダイナミックな印象だったので、そのように処理してみる左の山や空や雲を焼き込みツールで、右の緑を覆い焼きツールで処理した。筆圧対応ペンで処理すると、一部が極端な処理結果になるようなことも少ない
一見フツーに適正露出な写真だが、現場での印象としてはもう少し上からの光が強かったように思う。ので、覆い焼きツールで髪や肌のハイライトを強調していきたい!! モデルは百瀬みのりさんことみのり先生こんな結果に。光を描くように処理するのが基本と言われているが、マウスだとそういうふうには描きにくい。筆圧が使えるペンタブレットの場合、たとえば髪の部分なら髪をとかすように描けば自然に仕上がる

 そういう効率/効力を持つPhotoshop+Bamboo Fun Midiumを知ると、これまで「ん~、コレは撮影がイマイチだったニャ」的な残念写真をガシガシとレタッチしてキレイにしたくなる。し、これまで発揮させられなかったレタッチソフトなどの実力を容易にグイグイ引き出せるようにもなる。

 そんなフィーリングで使えるBamboo Fun Midium。前述の巨大タッチパッドとしての利便やジェスチャーの実用性もあるんだが、やはり結局は“より表現力の豊かな入力インターフェース”という点が強力な魅力だ。フォトショッパーっていうかレタッチャーならゼヒ!! 的な使い勝手&パフォーマンスですな。

 蛇足だが、このサイズのペンタブレットでも十分仕事に使えるのには少々驚いた。以前の経験では「レタッチとかに使うならA4じゃ小さい」という印象があったが、タッチ機能をオンオフしつつBamboo Fun Midium&Photoshopを使うと、このサイズでも十分だと感じられる。

 ただ、上位機種のintuos4あたりにはカスタマイズ可能なボタンがさらに多く、丸いタッチパッドで画像を回転させられたりもして、な~んか便利そう──Photoshopではキーボードとマウスを同時に使うショートカットが多かったりするので、intuosシリーズを使えば実質キーボード無しでもレタッチ作業をどんどん進められるんじゃないかニャ~と思いつつ、早速intuos4の値段を調べ始める俺なのであった。

2009/10/26 06:00