最安ポメラを速攻レビュー

スタパ齋藤
1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコ ンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称 衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。


最安ポメラを速攻レビュー

 2010年2月17日に発表された新型ポメラこと「デジタルメモ ポメラ(DM5)」。現在2機種あるポメラシリーズに、新たに“最安のポメラ”が加わった感じですな。

キングジムのポメラ(品番:DM5)

 コレ、発売日が2010年3月9日なんですけど、一足お先に実機に触れる機会を得たので、早速イジってみてのレポートなんぞをヒトツ。まず、この「デジタルメモ ポメラ(DM5)」(以下、DM5)がどのような製品なのか? ということから。

 てか、多くの方がご存知のとおり、ポメラシリーズはテキストを書くためのキーボード/モノクロ液晶搭載のデジタルメモ機器ですな。画面を見つつキーボードから文字入力すると、メモをはじめとするテキストを書ける(テキストファイルを作れる)。しかしソレ以外のこと──通信とか表計算とかアプリ追加といったことは一切できないという割り切った製品だ。

 現在、ポメラシリーズは2機種発売されていて、品番は初代のDM10と上位機種のDM20となる。もうすぐ発売される最新型のDM5は、シリーズ中では最も廉価な機種で、メーカー希望小売価格は2万790円となっている。

2008年11月10日に発売されたポメラDM10。初代ポメラですな。メーカー希望小売価格は2万7300円で、実勢価格は1万4000~1万6000円前後となっている2009年12月11日、初代ポメラの上位機種として発売されたポメラDM20。プロユースも視野に入れたモデルで、メーカー希望小売価格は3万4650円。実勢価格は2万3000~2万5000円前後既存2機種に加え、新たに登場したDM5。メーカー希望小売価格は2万790円で、2010年3月9日に発売される予定だ

 DM5の実勢価格がどうなるかわからないが、DM5はメーカー希望小売価格としては最も安価なポメラということになる。

 拙者的観点でこれら3機種を分けると、最上位機種のDM20は、ほか2機種と機能も使用感もかな~り違う。DM10についてはココに、DM20についてはココにレポートしたが、DM20はさまざまな角度から見て最も機能的かつ汎用的なポメラだと思う。

 で、DM5とDM10だが、これは仕様的に非常に近い機種ですな。DM10をベースに最新型DM5が作られたという印象。両機の液晶解像度や一部の仕様/機能は異なるが、DM10というハードを一部見直しつつ機能もチョイと改良しつつより安価に購入できるポメラとしてDM5が作られた、てなイメージである。

DM5はこんな機種

 独断と偏見でイキナリ書いちゃうと、現在ポメラ最上位機種のDM20を持っているなら、最新型DM5にほとんど魅力を感じないような気がする。DM5の使用感の一部に「DM20よりイイかも」という点はあるが、ま、DM20ユーザーはDM5をスルーしちゃっていいんじゃないかニャ、と。

 しかし、DM10ユーザーにとってはポツポツと見どころの多い最新型DM5。また、ポメラ欲しいんだけど……値段がな~、的に考えていた人にとっても大きな魅力を持つ機種になりそうだ。

 ともかく、以下、DM5がどんな機種か写真で見てみよう。

携帯時(折りたたみ時)のDM5。この状態でのサイズは幅145×奥行き104×高さ31mm。バッテリーを除いた質量は約285gカラーバリエーションはピンクゴールド、スパークリングシルバー、ブラック。キーボード面や裏面の色は同じ(クリームがかったホワイト)手に持ってみた。軽く、携帯性も良好。バッグのなかにスッポリ入る
このように開く。ほかのポメラと違い、液晶画面がキーボードの左側に来ちゃうんですな。そのかわり、キーボードの開閉ギミックはシンプル
こちらは初代ポメラの開閉ギミック(上位機種のDM20も同様)。液晶を開き、キーボードをスライドさせつつ展開する。液晶はキーボードの中心に来る。が、キーボード展開機構が若干複雑
キーボード配列はこのようになっている。横方向のキーピッチは約17mm。フルキーボードより一回り小さいキーボードで、縦方向も少々狭めフツー的な手のサイズの人がタイプしている様子手がデカめの人(拙者)がタイプしている様子
電源は単4形アルカリ乾電池×2本もしくは単4形エネループ×2本。このほか、データのバックアップ用にCR2032リチウム電池を使用するテキストファイルの保存先として本体内メモリのほか、microSD/SDHCカードも利用できる。容量は16GBまで対応PCとUSB接続できる。USB接続すると、PC上からポメラ上のテキストファイルを扱えるようになる

 てな感じで、ほかのポメラとだいたい同様、折りたたみできるテキストメモガジェットですな。

 DM5の特徴としては、まず上の写真のようにキーボードの展開スタイルが変わったこと。よりシンプルな機構になった反面、画面が右側に寄っちゃったんですな。また、画面サイズは4インチでDM10のディスプレイと同じサイズになる。ただ、解像度はQVGA(320×240ドット)となり、DM10やDM20の画面解像度であるVGA(640×480ドット)よりも低くなっている。

主な使用感

 DM5を実際に使ってみてまず感じたのは、キーボードの打鍵感。コレ、基本的にはDM10やDM20と同じ打鍵感のキーボードということになっており、見比べても確かに同様の部材が使われているように思う。んだが、なーんかDM5のほーが安定してるっつーか危なげないっつーか、指をしっかり受け止めてくれるという印象。

DM5のキーボードを展開させた状態で、本体を裏面から見たところ。丸いゴム脚が6個あるのが見える。これが安定した打鍵感につながっている!?机上面からキートップまでの高さは15mm程度。ほかのポメラより少しだけ低いちなみに、液晶面はこんな感じでドバッと開いたりもする

 この、廉価機種なのにもしかしたら上位機種よりイイかもしんない打鍵感は、きっとDM5のキーボード展開ギミックから来るもののように思う。

 結局、ほかのポメラと比べると、DM5は本体底面にある6個のゴム脚でキーボードをまんべんなく支えているから、キーボードのガタツキやたわみがより少ないのだろう。ゆえ、けっこー強めに打鍵しても違和感がない。あるいはヘタなノートPCよりもシッカリしている!? とも思える。ともかく、意外な打鍵感の良さなので、一度実機に触れてみて欲しい。

 それから液晶画面。QVGAという低めの解像度はどうなのかな~、と危惧していたが、まずまず使えるという印象となった。解像度が低い分、フォントは若干ギザギザしがち。チープさも漂うが、使用フォントサイズや行間設定を変えれば十分実用的にテキストを書いていける。

表示フォントは12/16/20/24ドットの4種類から選べる。ファンクションキー[F6]でクイックに変更可能12×12ドットフォント(行間[大])での表示例。行間[小]で26文字×17行、行間[大]で26文字×14行の日本語表示が可能。文章を斜め読みするならOKなサイズって感じ16×16ドットフォント(行間[大])での表示例。行間[小]で20文字×12行、行間[大]で20文字×11行の日本語表示が可能。このサイズなら書くのも読むのも現実的
20×20ドットフォント(行間[大])での表示例。行間[小]で16文字×10行、行間[大]で16文字×9行の日本語表示が可能。ゆっくり書くのに適したサイズかも。もっと行間を広げたいですな24×24ドットフォント(行間[大])での表示例。行間[小]で13文字×8行、行間[大]で13文字×7行の日本語表示が可能。書くのも読むのもラクなサイズだが、一度に表示できる情報量がチト少ない拙者的には行間設定を[大]にするのがオススメ。これならまずまず読みやすい/書きやすいと思う

 ただ、液晶パネルの表示自体がネムめ。たとえばDM20と比べると、メリハリがなく緑がかった表示になるという印象だ。また、追従性がイマイチで、たとえばカーソルを速めに移動させたり画面を連続してスクロールさせたりすると、カーソル位置や目的の文字列を見失いがち。視認性に優れた液晶とは言えない。

 表示に関してぶっちゃけた話をすれば、液晶のネムさや追従性のイマイチさ、それから実は狭い視野角なんかは、残念ではあるものの許せるレベル。価格設定を考えれば妥協できる感じ。この部分にさらなる快適さを求めるならDM20という選択肢があるわけだし、的な。

 残念なのは、行間設定の自由度が低いところ。ほかのポメラでも同様だが、行間をもっと広くできる設定があれば、さらに快適に使えると思う。日本語テキストを表示する環境として、フォントサイズやフォント形状、ディスプレイ品位なども重要だが、それ以前に字間と行間のバランスが非常に大切。テキストはこのバランスひとつで読みやすくも読みにくくもなる=ポメラの使用感がガラリと変わると思えてならない。ので、ゼヒ、この点をブラッシュアップして欲しい。

DM5の洗練度

 初代ポメラであるDM10をベースに作られたと思われるDM5。DM10と比べてみると、いくつかプチ気になる追加機能が見られる。いわばDM10よりも洗練されている部分ですな。

 それを一望すべく、以下にDM5、DM10、そして最上位機種のDM20の主要なスペックをまとめてみた。なお、DM5やDM10に対し、DM20はより多くの機能を持っているので、最上位機種DM20に興味のある方はコチラのレポートをご参照願いたい。

品番DM5DM10DM20
価格2万790円2万7300円3万4650円
LCDサイズ4インチ4インチ5インチ
解像度QVGAVGAVGA
大きさ(折りたたみ時)W145×D104×H31.0W145×D100×H30W145×D100×H33
大きさ(使用時)W250×D104W250×D100W250×D110
重さ(電池含まず)285g340g370g
使用電池単4アルカリ×2本
単4型エネループ×2本
単4アルカリ×2本単4アルカリ×2本
単4型エネループ×2本
バックアップ電池CR2032CR2032CR2032
電池寿命(アルカリ乾電池)25時間20時間20時間
電池寿命(エネループ)20時間15時間
SDスロット
SDHC対応○(16GBまで対応)×○(16GBまで対応)
1ファイル文字数制限(全角)8000800028000
本体メモリサイズ128k128k89M
フォルダ作成機能××
階層115
ソート機能(日付/名前)×
搭載文字サイズ12/16/20/2424/32/4812/20/24/32/40/48/64
ショートカット一覧×
電池設定(アルカリ/エネループ)×
キーロック設定×
メニュー言語切り替え設定×
日付メモ○(※1)×
※1 microSDカード挿入時のみ、日付メモの作成・参照が可能です。

 上の表を「DM5 vs DM10」的に眺めると、DM5のオイシイところが見えてきたりする。

 たとえばエネループ対応とかSDHC対応とかファイルのソート機能、それからキーロックができるようになったとかイロイロある。DM10を使っていて「不便だなぁ」と感じたことの多くが、DM5では解消されていると思う。また拙者的には、日付メモ対応になったのがチョイ大きいかな、と。

 DM5やDM20にはカレンダー機能があり、カレンダーを表示することができる。また、このカレンダー上に、日付に対応したメモ(日付メモ)を残すことができる。単純なところ、手軽に日記を付けられるわけですな。

DM5のカレンダー表示。「●」がある日に日付メモが登録されている。ポメラ起動時にカレンダーを表示させ、その流れで日付メモを登録するという使い方もできる日付メモの表示例。毎日のメモ書きや日記なら、テキストを新たに作るより日付メモ機能を使ったほうが便利かもしれない日付メモは[年月日.txt]の形式でmicroSDカードに保存される。なおこの状態では、[E:]がポメラ内蔵メモリ、[F:]がmicroSD。micro SD内に自動生成される[Pomera_memo]フォルダに日付メモが保存される

 一方で「ここは手つかずなのか~」という残念感も少々。たとえば1ファイルの文字数の上限が8000文字という制限。これはDM10と同様のままだ(DM20は2万8000文字)。これでも十分活用範囲はあると思うが、やはり文字数上限には余裕が欲しいところですな。

 あと、実使用上非常に残念なのが、フォルダ作成に対応していないところ。DM5で作ったファイルや読み込めるファイルを置ける場所は、本体内蔵メモリ内もしくはmicroSDカード上の[POMERA]フォルダ内のみで、それ以外は選択できない。ので、おのずと、多量のファイルを整理/分類しつつ活用するといった用途には向かなくなる。

 DM5は、DM20にあるキーバインド/割付設定やQRコード生成機能も持たない。個人的には、これらの機能がDM5にあったら大きな購買後押し理由になるような気がするのだが……でもまあ、そこまで求めるユーザーはポメラをヘビーに使いたい人だし、そういう人はきっと大きくて高精細で見やすい画面を求めたりするんだろうし、最初からDM20ってコトなんでしょうな。

 DM5はポメラシリーズのうち“フレンドリーモデル”と位置付けられている。ま、入門者にとってハードルが低いモデルってことだろう。安く手に入れられて、細かいコト考えずにペペペッとテキストメモを残せればいいじゃん、という方向性。そういうモデルだと考えれば、フォルダ作成とかキーバインドとかって不要なのかもしれない。

 てな感じで、入門機としては買いやすそうだし、初代ポメラことDM10よりはかな~り洗練されたと感じられる新型ポメラDM5。発売後、どのくらいディスカウントされて売られるかってコトも非常に興味深いですな。たぶん、かなり、値引きが……よくわかんないが、恐らく非常にリーズナブルな価格で手に入るポメラになると思うので、ぜひ一度実機に触れてみて欲しい。

2010/3/1 06:00