サイクリングに向くハンディGPSマップ

スタパ齋藤
1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコ ンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称 衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。


 

サイクリングに向くハンディGPSマップ

 ちょいと前、ユピテルのハンディGPSマップことATLAS ASG-CM11)を買った。興味本位の衝動買いであったが、徒歩で使ってみたらナカナカ快適。次いで自転車で使ってみたら……コレが予想以上に便利!! 以降そ~と~愛用中である。

ユピテルのハンディGPSマップATLAS ASG-CM11。手のひらサイズのGPSマップで、徒歩~自転車での使用に向く。2010年5月現在の実勢価格は3万9900円程度。

 ASG-CM11はハンディGPSマップ。GPS=現在位置がわかる装置であり、かつ、日本全国を網羅した電子地図を搭載する。ので、コレを持ってれば、今現在自分が日本のドコにいるのか即座にわかる。GPS内蔵ケータイで地図サイト/アプリを使うと自分の現在位置がわかったり周囲に何があるか調べられたりするが、これと同様のコトをパケ代とか一切使わずに行えるガジェットなんである。

 さておき、拙者、コレをですね、自転車で愛用中。で、結論から言えば、ASG-CM11は日本国内で使う自転車向けのGPSマップとしては、かな~りコストパフォーマンスが高いと感じられた。また、サイクル(サイクロ)コンピュータとしても充実した機能を持っているので、スポーツ自転車を楽しまれる方々にとってはヒキの強い製品になると思う。

 てなわけで今回は、このASG-CM11の“自転車での使用感”など中心にアレコレと書いてみたい。

 

電子地図はどんな感じ?

 ASG-CM11の機能をザッと見て、やはり特徴的なのは日本全国の電子地図を搭載しているところ。地図データは昭文社のMAPPLEデジタルデータを採用し、詳細めのスケールで表示させるとサイクリングロードなどもシッカリ表示される。なお、スケールは10m~200kmで、14段階に切り替え可能だ。

ASG-CM11の本体サイズは幅58×高さ105×厚み23mmで、バッテリーを含む質量は124g。手のひらサイズですな電池はリチウムイオン二次電池。使用時間は約16時間(バックライトを使わないエコモードをオンにした場合)。microSD/microSDHCカードを使用でき、そこにログデータなどを記録できる
USB端子があり、PCとUSB接続すればログデータをPC上にコピーできる。また、ATLASTOURやGoogleマップ上に、通ったルート(軌跡)を表示できたりもする画面はワイド3V型で直射日光下でも視認性を確保できる半透過型TFT液晶を採用している。ソコにこんな電子地図を表示できる。これは10mスケール。入間川サイクリングロードと荒川サイクリングロードの接続点だが、こういった細い道の形状や接続までちゃんと載ってますな
25mスケールにしたところ50mスケールにしたところ100mスケールにしたところ
500mスケールにしたところ1kmスケールにしたところ。地図上に地名などが表示されるのはこの縮尺まで。2.5kmスケール以上だと文字は表示されなくなる。

 ハンディGPSなので、もちろん、自分が居る位置を中心とした地図が自動的に表示される。徒歩や自転車で使用してみたが、地図表示の追従性は十分実用的だ。また上の写真のように細い道までシッカリ載っているので、ウォーキング/ランニング/サイクリング時に参照する地図としても役立つ。

 実際、拙者、古く寂れた旧サイクリングコースへASG-CM11を持って行ったんだが、タイヘン役立った。てか、助けられた。現在はサイクリングコース跡って感じなので、サイクリストに対する親切な道しるべなどはなく、地元の人じゃないとコースを外れちゃう的な道である。

 で、案の定、分岐路にさしかかって「ありゃ? どっちかな!?」てな状態。そこでASG-CM11で道を確認。正しいルートを通ることができた。ちなみに、もう一方の道へ入っちゃうと、サイクリングコースをいきなり外れて街中に出てしまってサイクリング終了ルートになるようだった。

 ほか、ウォーキング時にASG-CM11を使い、川沿いの土手から道路に出て橋を渡るルートを確認することもできた。土手ウォーキングにおいて「あの橋を渡りたいけど、橋につながる道路へ出る道順がわかんない~」的な迷子は案外アリガチであるが、GPSマップがあればそういうプチ迷子も防げますな。

 てな感じで、ポツポツと役立つシーンがある。んだが、カーナビのように常時地図を表示させるような使い方は、フツーしないと思われる。初めての道をイキナリ歩く/走る場合は役立つかもしれないが、歩いたり走ったりする人は、あらかじめルートを下調べするケースが多いと思う。

 また、ASG-CM11の場合、地図表示ベースで使おうとすると、何かと力不足感がある。たとえばスケール変更や地図スクロールは遅め。目的地へのナビゲーションも、どこをどちらへ曲がれ的な情報は皆無で、目的地への方角(地図上に直線で示される)と距離しか表示されない。カーナビ感覚で使おう……と思って操作するとフラストレーションたまりまくりであろー。

 ぶっちゃけた話、GPSケータイとかiPhoneとかのほーが、ずっと地図表示しつつモバイルで使う電子地図~ナビとしては実用性も汎用性も高い。カーナビやケータイのGPSマップイメージでASG-CM11を買うと、けっこー痛い気持ちになっちゃうかもしれない。

 しかし「サイクルコンピュータのなかにGPSマップが内蔵されている」と考えると、ASG-CM11が優れた製品だと感じられる。てのは、かなり使えるんですよサイクルコンピュータとして!! また、詳細な日本全国地図を内蔵した高機能サイクルコンピュータとして考えても破格。てなわけで以降、ASG-CM11のサイクルコンピュータ機能を見ていこう。

 

見やすいサイクルコンピュータ

 ASG-CM11は自転車にサクッと取り付けることができる。自転車用マウントブラケット一式が付属するので、これらをハンドルやステムに取り付ければ、そこにASG-CM11をセットできるようになる。

付属の自転車用マウントブラケット一式。RAMマウントが採用されているので、ほかのRAMマウントパーツと組み合わせて使うこともできるハンドル(実際はハンドル近くの樹脂パイプ)にマウントブラケットを取り付けたところ。ここにASG-CM11をスコッと挿してセットできるブラケットにASG-CM11をセットしたところ
この部分を軽く押し下げるとロックが外れ、ASG-CM11を取り外せるASG-CM11をガッチリと取り付けたい場合は、裏面のネジを締める。不意の落下防止のために常時締めておくのが良さそうだ直射日光下での画面の視認性はこんな感じ。昼間、画面上の情報が見にくいと感じられることは少ない。ただし、暗めの林道とか暗めの曇り、それから日暮れ前とかだとバックライトを点灯させたくなる

 前述のように、画面は3V型ワイドで半透過型TFT液晶(バックライト内蔵)。上の写真のような視認性となるが、ま、フツーにちゃんと見える感じっス。ただ、モノクロ液晶のサイクロコンピュータや、あるいはガーミンedge705のようにクリアな表示ではない。ちょっと曇った表示、みたいな。でもちゃんと見えますけどね。

 表示できる情報は、タイム、ラップタイム、距離、ラップ距離、速度、平均速度、最高速度、気圧、高度、消費カロリー、目的地方位など21種類。さすがに心拍数やケイデンスなどは(そのためのオプション機器もないし)計測できないが、サイクルコンピュータとしては十二分に豊富な情報項目数ですな。

 なお、ASG-CM11の表示は、地図画面とメーター画面に表示モードが分かれているが、地図画面では上記項目を2つまで、メーター画面では4~10項目まで表示できる。また、表示させる項目は自由に選択できる。

地図画面での情報表示例。2つまでの表示項目を地図の上に表示できるメーター画面での情報表示例。表示項目を4~10項目まで自由に選択できる表示する項目数や項目位置をカスタマイズできる

 拙者の場合、表示項目としては移動した距離、現在速度、走行した時間(タイム)、平均速度や最高速度などを表示しておくことが多い。各表示項目の正確さだが、たとえばASG-CM11が表示する速度を、ほかのサイクロコンピュータが表示する速度と比べてみると、だいたい合致している。趣味のウォーキング/ランニング/サイクリングに使うなら十分な精度だと感じられる。

 それと、ちょいと愉快なのがカロリー表示。ウォーキング/ランニング/サイクリングでどの程度のカロリーを消費したかがわかる。ASG-CM11の設定(プロフィール設定)に性別/年齢/身長/体重を入力するので、まあまあ信頼できる数値が表示されると思うが、ユーザーによって細かな条件で変わってくるので、基本、目安ですな。とは言っても、ダイエット目的のウォーキング/ランニング/サイクリングにおいてはモチベーションUPにつながったりして楽しい。

 

ログで遊べる/追求できる

 ASG-CM11を購入後間もなく、良い意味でハマったのが過去データの履歴機能やログ機能。ASG-CM11をサイクルコンピュータとして使った場合に利用できる機能だが、これは役立つし楽しい!! てな感じで、日々の自分の走行データを参照しまくりの拙者である。

 まず本体上で見られる過去データ。履歴閲覧カレンダーという表示で、わりと多角的に過去の走行データを見られる。たとえば特定の日に何km、何時間で走ったのか? 平均速度や最大速度は何km/hか? 消費カロリーはどの程度だったかを見られる。特定の1日のデータだけでなく、週間や月間のトータルのデータを見ることもできる。そのほか、ラップを記録すればラップ毎のデータも見られる。

本体右上側面のメニューボタンを押すと、走行履歴データにアクセスできる履歴ボタンを押すと履歴閲覧カレンダーが表示される。日、週、月の走行データを参照できるのだ1日のデータを表示したところ。その日の消費カロリーや走行時間、走行距離の合計を見られる。平均速度や最大速度も表示される
その日に走ったルート(軌跡)を地図画面上に表示することもできる。友達にASG-CM11見せて「このルートが良かったんだよ~」みたいな話ができますな1週間のデータを表示したところ。選べる7日間はカレンダーの並びで決まる(任意には選べない)1カ月間のデータを表示したところ

 てな感じでデータを見られるのだが、ダイエットの観点からは運動時間や消費カロリーが興味深いし、トレーニング的な観点からは平均速度や走行距離/時間、あるいは各ラップが参考になる。筋トレ的視点なら、「カレンダー表示で筋肉の超回復に必要な時間ちゃんと休んでいるかを確認」といった使い方もできるだろう。

 ちなみに、ログの自動ポーズ機能もあり、停止時には速度計測や経過時間記録などログ記録を止めることもできる。信号待ちや小休止の状況は考慮しない履歴も記録できるというわけだ。

 もうひとつ楽しいし役立つのが、ASG-CM11で記録した走行ログをPC上で閲覧できるという機能。ATLASTOURという無料ソフトにより、走行ルートなどのデータをGoogleマップ上に重畳表示させられる。また特定の位置での速度などデータや、速度/高度に関するグラフを表示させることもできる。

ATLASTOURの表示例。ASG-CM11で記録したログデータを読み込み、通ったルートやそれに関する詳細情報を閲覧できる地図表示はGoogleマップを使用しているので、地図のほかに航空写真や地形、GoogleEarthでの表示にルートなど情報を重畳できるGoogleマップで詳細な航空写真が表示可能なエリアを走行後、ATLASTOUR上で走行軌跡を表示させると、走ったときのことがリアルに思い出されて楽しい
ルートにマウスカーソルを合わせると、その地点での各情報が表示されるルートを通過する様子をアニメーション表示させることも可能。緑色の点の動きは実際の走行速度に合わせて速くなったり遅くなったり止まったり。なんかカワイイ感じっス速度や高度、距離(もしくは時間)の関係をグラフ化することもできる

 ATLASTOURの利用、いろいろな側面でオモシロいっス。たとえば単純にGoogleマップ上に走行軌跡を重ね合わせつつ眺められるのが愉快。「あーそうだった、この道は気持ち良かった~」みたいな。地図を眺めていると、新たなルートを発見できることも。「あれ!? いつも通る国道の裏に舗装されてるっぽい農道が。次回はこっちを通ろう」的な。

 ASG-CM11本体上で見られる履歴もPC上(ATLASTOUR上)で見られるログも、どちらもサイクリングの楽しさやモチベーションを高めてくれるように思う。総じて走行後の楽しみ───実際に走った道を後から正確に振り返れて非常に愉快だ。また、そうしていると「このときはこういう結果だったから、次回は改善してみよう」てな発想のきっかけも得られる。各種データを見てると楽しいし、やる気もUPするってわけですな。

 てな感じのASG-CM11。日本の詳細地図を表示可能なハンディGPSマップとしては低価格であり、サイクルコンピュータとして特化した機能群も実用的。価格相応の残念感もポツポツ見え隠れしたりはするものの、4万円弱で買える自転車向けハンディGPSマップとしてはオンリーワンであり十二分に実用的だと感じられる。

 ので、ぜひ一度、実物に触れてみて欲しい。できればバイクにセットして試走を。ガーミンとかに(まだ)手を出していないサイクリストの人とかだと、恐らくフツーに超欲しくなっちゃうと思われる。


2010/5/17 06:00