便利な自転車向けWeb地図サービス「ルートラボ」

スタパ齋藤
1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコ ンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称 衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。


便利な自転車向けWeb地図サービス、ルートラボ

 最近自転車によく乗るようになった俺なんですけど、サイクリングの準備時に非常によく使うWebサービスがある。Yahoo!ラボにあるルートラボだ。

ルートラボはLatLongLabによるWeb地図サービスで、Yahoo!ラボ上で利用できる。ルート探索やルート情報共有に利用でき、主にサイクリストに愛用されているようだ。すでにさまざまなルートが登録済みで、ユーザーはそれらルートを自由に参照できる。もちろん自分で作ったルートを登録して各ユーザーと共有できる。このルートはkeithさんによる富士五湖一周ルート。ルートを容易に描けるのもこのサービスの大きな利点だ。基本は出発点と目的地を指定するだけ。あとはWebサービスが出発点/目的地を結ぶルートを自動生成してくれる。

 ルートラボはALPSLAB routeの後継サービスで、Web地図サービスなんですけど、普通一般にイメージされる地図サイトとはチョイ違う。汎用的な地図を見られるサービスってよりもむしろ、実用的なサイクリング向きのルート情報を蓄積/閲覧するということに重点が置かれている。

 使われ方としては、実際にサイクリストが走った軌跡をGPSログとしてルートラボにアップロードし、通ったルート登録する。あるいはサイクリング向きルートをユーザーが登録する。こうして蓄積されたルートを各人で共有。これによりユーザーは“自転車乗りにとって常識的なルート情報”を入手しやすくなるというわけだ。

 てか単純な話、「多摩湖あたりを自転車走りたいナ」とか思ったら「多摩湖」で検索。多量の多摩湖絡みサイクリングロードとかルートを見つけられる。で、好みのルートを参照し、走る、と。

「多摩湖」をキーワードとして検索したところ。右側のスクロールバーを見るとわかるように、多量のルートがヒットした。joseさん作の多摩湖1周半ルートを見てみた。福生市から出発して多摩湖を巡り、福生市に戻るというルートだ。航空写真の上にルートを重畳させて表示することもできるので、これから走る道周辺の雰囲気も掴みやすい。

 投稿されたルートはファイルとしてダウンロードできる。また、これをアップロードして修正することも可能。なので、実質、誰かが登録したルートを少し修正して自分にピッタリのルートを描いて利用したり投稿したりするのも容易だ。

 このルートラボを使った印象っつーよりもルートラボばっかり使ってる実情における心境を言えば、大変便利であり愉快であり必須。とくに見知らぬ場所へのサイクリングを計画する場合はビシッと役立つし、さらにはこのサービスを使ったから防げるトラブルなんかもあると思われる。

 てなわけで以降、ルートラボの使用法/使用感などについて見ていこう。

ハードルの低さが大きな魅力

 Webの地図サービス上でルートをどうこうして共有云々とか言うと、ヒジョーにカッタルそうな感じだが、ルートラボは非常に楽勝感が高い。こまごまと説明するよりも、実際にルートを作る手順を見てみよう。たとえば、三鷹駅→多摩湖のルートだ。

ルートラボの初期表示。一般的なWebサービスを利用する感覚で独自のルートを作っていける。主発点の「三鷹駅」を検索。三鷹駅の北口を出発地点にしてみましょう!!
次いで「多摩湖」を検索し、村山ダムを目的地にしてみた。直後、ルートが自動生成される。生成されたルートはこんな感じ。ルートを拡大しているところ。ん~、玉川上水駅を通ってみたいナ。
そこで経由するポイントを加えることに。Ctrl+ルート上をクリックで経由点を追加できるのだ。玉川上水駅が通過ポイントになった。同時に、ルートが新たに生成し直された。こんな感じで三鷹駅→多摩湖ルートが完成。

 てな感じ。地名などを検索したり地図表示を拡大/縮小/スクロールさせつつ、地図上をクリックしていく程度で道に沿ったルートを生成できるのだ。また、ルート作成後にGPXまたはKML形式でルートデータをファイルとして保存(エクスポート)できる。これらデータをほかの地図系アプリに持って行ったりGPS機器に転送して利用することが可能だ。

 ちなみに、作成したルートの保存や管理(マイページ利用)にはYahoo! JAPAN IDによるログインが必要になるが、ルートを作ったり閲覧したりするだけならゲスト利用でOK。ルートを作成→データをエクスポートする作業も、やはりログインしないでの利用が可能。

 作業としては出発地/目的地をクリックする程度。思い立ったらすぐに「なるほどね~こんなふうな道で行けるのか」と走行計画の“下地”を作れるわけですな。そして、その叩き台的なルートをさらに細かくブラッシュアップしたり、あるいは検証していけるのが、ルートラボの良さだったりする。

ルートラボなら坂がよーくわかる

 サイクリングに行こう!! 走行計画を立てよう!! てなとき、やっぱりどーしても知りたいのが、坂。道の勾配である。ルートラボだと、これがサクッとわかる。

 たとえば、先ほど作成した三鷹駅→多摩湖ルート。このルートのどこがどういう勾配になっているのかが即わかるのだ。

ルート全体の標高がグラフで示される。下のグラフの左がスタート地点(三鷹駅)、右がゴール(多摩湖)となる。徐々に上っていくコースなんですな。スタート地点からの距離やその地点の標高も表示される。区間の平均勾配もわかる。この表示だと、交差点から多摩湖付近までの道が平均勾配4.8%の上り坂である。

 ルート探索を行えるWeb地図サービスは少なくなく、フツーに出発地から目的地までの距離がわかる。んだが、サイクリング(やランニングや徒歩などの人体がエンジンになる移動方法)の場合、距離情報だけじゃ不足。道中どの程度の勾配なのかという情報がきっと必要になる。

 上の三鷹駅→多摩湖ルートの場合、総距離17.1kmで、その間の標高差は54m。なだらか~な上り坂っていうかほぼ平坦な道なので、まあ、この場合の勾配情報は要らないかもしれない。でも多摩湖手前ちょっと上りだなってコトがわかってプチ役立ちますな。

 しかし、下のようなコースの場合、勾配情報があればナニカと役立つし、痛い目にも遭いにくい。

ritsuwさんによる加治丘陵旧サイクリングロードのルート。一見、丘陵に上って下る程度の楽しげなコースに見える。しかし勾配を詳細に見ていくと、スタート直後に10%以上の勾配が400mくらい続くことがわかる。コース中盤の折り返しくらいのところ。この部分の勾配は16.2%で約250m続く。

 このコース、全長6kmくらい。住宅地にある小高い丘のなかの旧サイクリングコースなんだが、じつはこの話(http://k-tai.impress.co.jp/docs/column/stapablog/20100514_366553.html)のコースである。

 フツーのWeb地図上では確認しにくいが、実際は自転車にとって激坂が多かったりしつつ、その勾配のキツさが落車を招くとさえ思われる。そういう非常識なコースゆえ、現在はサイクリングコースではなくて“旧サイクリングコース”となっているっぽいが、ともかく、ルートラボならこういう細かな情報まで得られるのだ。

 まあこの旧サイクリングコースは極端な例としても、少し標高がありそーな目的地へのサイクリングだと、たいてい役立つルートラボ。たとえば先日奥多摩湖へ行ったときに、ルートラボを使って事前に勾配などを調べた。

青梅駅から奥多摩湖へのルートを探索したところ。青梅駅から古里駅までは多摩川の南側にある吉野街道を通るようにしてみた。じつは吉野街道を通るのは初めて。なんか青梅駅のすぐ先に気持ち良さそうな下り坂が!! わーい!! ……でも下った分、上るんだよな。青梅駅から御嶽駅までは、なだらかな上りというイメージ。距離的にも一気に行けそうだ。
御嶽駅あたりから鳩ノ巣あたりにかけて勾配がキツメに。途中、古里駅あたりで休憩かしら?細かく見ていったら、奥多摩湖直前がナニゲに急な上り坂であることが判明。これは重要!! 覚えておくニャ!!グラフのなかにとんでもなく尖った勾配があるが、これはトンネル部分。この部分の勾配は49.2%となっているが、そんなんクルマも自転車も上んの不可能。トンネル上の山の標高がグラフに適用されてしまうらしい。

 奥多摩湖へサイクリングに行くゼ~という感じで、ルートラボを見ながらアレコレ考えたわけですな。初めて通る吉野街道、どんなんだろ? とか、基本上り坂だし、どーゆーペース配分にしようか、とか。

 普通一般のWeb地図サービスだと、読み慣れない等高線からどうにかイメージして、まあ大雑把に休憩地点なんかを考えることになる。が、ルートラボの場合は比較的に詳細な勾配&距離情報が出る。これをもとにしたので、たとえば休憩/補給の予定地点を決めやすかった。

 具体的には、青梅駅から御嶽駅まで一気に行って一休み。次の休憩は鳩ノ巣駅。その先は現場で体と相談しつつ休憩するが、奥多摩湖直前は激坂っぽいのでその手前で休むってコトにした。

 そして実際は、御嶽駅までは予定どおりだったが、その後に激汗モードとなって古里駅で休憩&補給。さらに鳩ノ巣駅でも休んだ。奥多摩駅を過ぎた後は、予想以上に疲れつつトンネルではクルマにビビりつつ疲労も激しく何度か休憩。奥多摩湖直前の坂がキツいことがわかっていたので、その手前でもシッカリと休憩した。

 結果、なんつーか精神的な余裕を持って走れて、サイクリングを楽しめた。事前に距離や坂の度合いを知ることができたので、無理したりしないですな───この先がどーなってんのか知らないでいたら、たとえば奥多摩湖直前で「あ、奥多摩湖もうスグだ!!」とか思って一気に上っ……てる途中で力尽きて自転車押してたと思われる。

 って、なんか話が横道状態だが、ルートラボで下調べをすると、事前に距離や勾配がわかるので、自分に合ったマトモな走行計画になると思う。場合によっては「この目的地は無理っぽいからヤメよう」とイチから考え直せる。知らずに地獄を見るより、地獄を知って行き先を天国に変えるほーが楽しいサイクリングだ(と思う人が多い)と思う。とにかく、このような勾配などの情報を手軽かつわかりやすく得られるWeb地図サービスは、現在、ルートラボだけだ。

 ただ、ルートラボ、トンネルに弱いみたいですな(※この問題については、6月24日に対応されました。詳しくはスタパブログのこちらの記事を参照してください)。トンネルを通過するルートだと、その道路上の標高をトンネル上の山の標高として計算してしまうようだ。上記の奥多摩湖ルートでは30~50%もの勾配が5~6箇所も表示される(グラフ上の尖ったところ)。たとえば上の写真の中山トンネルの勾配は49.2%となっているが、そんな道はアリエませんから!!

 道路勾配を示すパーセンテージは、水平100mに対して垂直に何メートル高くなるかで示される。100m進んで1m標高が高くなったら1%の勾配ですな。1m進んで1cmでも同様に1%。勾配49.2%というと、100m進んで約50m上るのであり、そんなんは道じゃなくて少し斜めった壁であり上から見たら絶壁と言えよう。

 ともあれ、ルートラボを使用する場合、トンネルがあるルートの局所的な急勾配表示には要注意。この部分、改善してもらえると有り難いですな。

蛇足───橋探せる~♪

 ここからは蛇足なんですけど、ルートラボには、自転車野郎にも、ハイキングな人にも、釣り人にもオススメできるポイントがある。それは、橋の名前で橋を検索できる点。これはYahoo! 地図でもほぼ同様だが、ほかのWeb地図サービスとかが案外苦手とするトコロだ。

ルートラボで「入間大橋」を検索した結果。ビシッとヒット。Yahoo! 地図で「入間大橋」を検索した結果。こちらも問題なし。Googleマップbetaで「入間大橋」を検索した結果。惜しい!! 橋付近の緑地がヒット。
ルートラボで「羽根倉橋」を検索した結果。ジャストミート。Yahoo! 地図で「羽根倉橋」を検索した結果。同じくガシッとヒット。Googleマップbetaで「羽根倉橋」を検索した結果。一応ヒット。
ルートラボで「大芦橋」を検索した結果。バッチグー。Yahoo! 地図で「大芦橋」を検索した結果。チョベリグ。Googleマップbetaで「大芦橋」を検索した結果。使えねー結果に。

 拙者とかGoogleマップbeta大好きでマジ毎日使う感じなんですけど、こと、橋の名前になるとほぼ全滅な感じ。一方、ルートラボやYahoo! 地図ならしっかりヒットすることが多い。

 試しに地元の地味な橋名を入れて検索してみて欲しい。ルートラボやYahoo! 地図だと意外なほどの高確率でヒットする。橋名と県名あたりまでキーワードを入れれば、さらに、みたいな。

 橋の名前がナゼ大切かと言うと、自転車/ハイク/徒歩/ランニング/釣りあたりのヒトたちは、ひとつの道しるべとして橋名を使うことが少なくない。自転車乗りの人の間では特に多いんじゃないだろうか? 「初雁橋の手前左岸の土手の上の道、行き止まりだから」的な。「落合橋の川越側にきれいなサイクリングロードできるっぽいよ」みたいな。釣りの場合も橋を中心として場所的な話が展開することが多々ある。

 要は、橋の名前で場所を検索できないと困るコトが多いのだ。でも、ルートラボならイケる、と。ま、前述のようにYahoo! 地図でもOKなんですけどね。



2010/6/14 08:48